胸に響くバラードの秘密
それは痛いほどに切ない
スキマスイッチのバラードはなぜこんなにも感情を大きく揺さぶるのでしょう?
繊細な言葉の一つ一つが心の深層にまで降りてきて、鮮やかな像を結びます。
それはまるで映画を見ているかのようです。
記憶の奥底にしまい込んでいたシーンを見ているような既視感にも似た感覚。
ささやかな、そして最高の幸福の時間
まず情景をわかりやすく伝える
窓の外に月が浮かぶ 深夜の映画と なんだか寝付けない夜
僕の隣 優しい吐息 愛しさが募る 確かなこのぬくもり
出典: ラストシーン/作詞:スキマスイッチ 作曲:スキマスイッチ
眠れない夜というのは大抵、喉が渇いて水を飲みに起きたりするものです。
真っ暗な部屋の中、窓の明るさに気がつき見上げると月が美しく輝いています。
しんと静まった部屋の空気の気配。
所在なげにテレビを点けると放送しているのは深夜映画くらい。
テレビを消して寝床に戻ります。
僕の隣では、子供が小さな寝息を立てて寝ています。
いつもと変わらぬ夜であることに安堵し、子供への愛情で胸が一杯になります。
子供を連想させる単語を連ねて膨らむイメージが結ばれる語は「ぬくもり」。
命あるものを抱いた時のリアルな皮膚感覚に、無償の愛情が込められています。
今、ここに息づく小さないのち
偶然への感謝
「運命」って言葉 信じてないけど
それなら君と 出会った偶然は どんなふうに呼べばいいのだろう
出典: ラストシーン/作詞:スキマスイッチ 作曲:スキマスイッチ
今、ここに寝息を立てているのは僕の子供。
僕と彼女の間に生まれたかけがえのない存在。
僕と彼女の遺伝子を受け継いだ生命。
幾千万の偶然同士を掛け合わせたような奇跡に、ただただ感謝するばかりです。
女性は出産という命を落とすことさえある機会と痛みを通過して母になります。
しかし男性の場合は、ふと訪れた真空のような時間に父であることをゆっくりと実感していきます。
父親としての想い
小さな手のひらを見つめながら
柔らかくてすぐに 壊れそうな手のひらを
ありったけの愛を込めてそっと包み込んだ
ろくに自分のことも ままならない僕だけど
僕の両手で 君の世界を ずっと守っていたい
出典: ラストシーン/作詞:スキマスイッチ 作曲:スキマスイッチ
赤ん坊の手のひらというのは驚くくらい小さなものです。
でも5本の指は間違いなくヒトと同じで、その精巧な造作に感嘆するばかり。
生まれたての皮膚は柔らかくてとても温かいものです。
小さな手のひらをそっと包み込む父親の大きな手。
自信があるわけではありません。
しかし、子供を守り育てていくという決意は揺るぎないものです。