描かれている状況
ここで一度これまでを整理してみます。
季節は冬です。
彼女は多分カフェのような場所で彼を待っていました。でも周囲にはそんな素振りを見せないようにしています。
ふたりは待ち合わせの約束をしていたのでしょうか。
約束をしていたのなら、グループトークで彼の行動を確認する必要はないでしょう。
店に来た彼の行動も不可解です。
それでも約束していたか、してなかったのかはわかりません。
そもそも二人はつきあっているのでしょうか。
本当はすごく甘えたいし、わがままもいいたいし、抱きしめて欲しいと思っています。
つまり彼との間にそういう経験がまだないということです。
ならばつきあっているとしても、まだ日が浅いだけかもしれません。
周囲に隠れてつきあっている可能性もあります。
もしくは友達以上恋人未満の関係なのかもしれません。彼女の片思いかもしれません。
とにかく彼女は彼がとても好きですが、その想いを拗らしているのは確かです。
自分がどう見られたいかをすごく気にしています。それは彼に対してだけではなく、周囲にもです。
だから本心を悟られないように隠しています。
隠そうとすればするほど想いは強くなって、溢れそうになり、一方で不安もましていきます。
彼女はそうしたジレンマで身動きがとれない。だから彼に積極的に来て欲しいのでしょう。
溢れる想い
待ち人来たる
したいことと してほしいこと
多すぎないよう捨ててみても
きみの前だと溢れちゃって
もう強がる必要もないくらい
あぁ 抱きしめられてみたい
人前をふたりきり
変える魔法をください
出典: 出典: 抱きしめられてみたい/作詞:児玉雨子 作曲:大橋莉子
彼が目の前にいるだけでテンションがすごく上がっています。
でもやっぱり自分の気持ちに対して素直に行動に移せないようです。
人目を気にしているのは確かです。虚勢を張っているのも確かです。
自分から飛び込めないのは、恋愛の駆け引きではないでしょう。
自分が好きな人に対して積極的な女の子と思われたくないからでしょうか。
それともただ恥ずかしいからという可能性もあります。
前に進めない
その胸 飛びこんで
きみに抱きしめられてみたい
ほんのあと一歩 踏み出せない今
壊してしまえたら
境目がなくなるまで ぎゅって
あぁ 抱きしめられてみたい
“そこらへんの女の子”って
呆れないでね お願い
出典: 出典: 抱きしめられてみたい/作詞:児玉雨子 作曲:大橋莉子
彼はやっぱり積極的な女の子が苦手なのでしょう。だから大人びた振りをして虚勢を張って。
自分の本当の気持ちを隠しているうちに、気持ちだけが大きくなっていきます。
ヤマアラシのジレンマに捕らわれて、前に進む勇気がありません。
ラストの一行
不安の正体
絡まった感情ごと
きみに抱きしめられてみたい
そうすればきっと 見せないで済むのよ
疑いの瞳も
ねえ あの子だれなの
出典: 出典: 抱きしめられてみたい/作詞:児玉雨子 作曲:大橋莉子
この詩の最後の一行に驚いた人は多いのではないでしょうか。
最後の最後に彼には、別に付き合っている女性がいるのではと匂わせてます。
しかもそれが、彼女の勘違いなのかどうかはわからないままです。
この詩で描かれているのは恋すればこその不安と、だからこそ募る相手への想い。
そして、その想いが大きくなればなるほど不安も大きくなります。
不安の正体は別の女の子の存在もあるでしょう。でもそれだけではないはずです。
もっと密接な関係になりたい自分と距離をおこうとする自分。
ジレンマで身動きがとれない状態の彼女を救うことができるのは彼だけなのです。