「ピースサイン」の歌詞を紐解く
いつか僕らの上をスレスレに
通りすぎていったあの飛行機を
不思議なくらいに憶えてる
意味もないのに 何故か
出典: ピースサイン/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
飛行機には幼い頃、誰もが憧れをいだいたことがあるのではないでしょうか。
筆者はあります。
もちろんその憧れは大人になるにつれて薄れていってはいますが、確かに心の中に刻まれています。
不甲斐なくて泣いた日の夜に
ただ強くなりたいと願ってた
そのために必要な勇気を
探し求めていた
出典: ピースサイン/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
人間の心はそんなに強いものではなく、たくさんの挫折や苦しみを経験し、強くなりたいと願います。
そんな時にこそ思い出すのが憧れの存在で、そこに意味は見出せなくても本能的に心が求めるのではないでしょうか。
だからこそ、深く心には刻まれていて、憧れに近づくために、強くなるためにはどうしたらいいのかいつだって模索しているのです。
残酷な運命が定まってるとして
それがいつの日か僕の前に現れるとして
ただ一瞬 この一瞬 息ができるなら
どうでもいいと思えた
その心を
出典: ピースサイン/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
人生は自分で作っていくものですが、運命は決まっているかもしれません。
決まった運命の中で抗えない何かに直面した時、どんな対応ができるでしょうか。
逃げるも一手、攻めるも一手です。
しかし、強くなりたいと願うのであれば、そこに立ち向かう勇気が必要です。
人生も運命も結局は一瞬一瞬が積み重なってできています。
その一瞬をどれだけ大切にできるかが分かれ目になるのです。
もう一度 遠くへ行け 遠くへ行けと
僕の中で誰かが歌う
どうしようもないほど熱烈に
いつだって目を腫らした君が二度と
悲しまないように笑える
そんなヒーローになるための歌
さらば掲げろ ピースサイン
転がっていくストーリーを
出典: ピースサイン/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
自分を鼓舞できるのは自分自身の他なりません。
心の声の赴くままに悲しい運命にも立ち向かっていかなければならないのです。
それが強さであり、自分だけの物語を作り上げていくことなります。
守りたいだなんて言えるほど
君が弱くはないのわかってた
それ以上に僕は弱くてさ
君が大事だったんだ
「独りで生きていくんだ」なんてさ
口をついて叫んだあの日から
変わっていく僕を笑えばいい
独りが怖い僕を
出典: ピースサイン/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
守りたいだなんて言えるほど、自分は強くないし、守られるほど君は弱くありません。
勇気を出して1人で生きていくと言っても、やはり1人で生きてくのが怖いと心変わりしていく様は人に笑われるというより自分で自分を嘲笑いたい気持ちに駆られています。
そのどちらも強がりであり、本当の強さではありません。
蹴飛ばして噛み付いて
息もできなくて騒ぐ頭と腹の奥が
ぐしゃぐしゃになったって
衒いも外連も
消えてしまうくらいに
今は触っていたいんだ
君の心に
出典: ピースサイン/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
強がって、思うような強さを手に入れられなくて乱れた心でも、強くなりたいと願う心を持っているうちはまだ大丈夫です。
しかし、その心から大切なものを守りたい気持ちや、自分の人間らしい部分も消えてしまうほど何も感じなくなってしまったら、全てが終わってしまいます。
その前に確かな感触や感情を感じ取るためにも、守るべき君の心に触れていたいと願っています。
僕たちは
きっといつか遠く離れた
太陽にすら手が届いて
夜明け前を手に入れて笑おう
そうやって
青く燃える色に染まり
おぼろげな街の向こうへ
手をつないで走っていけるはずだ
君と未来を盗み描く
捻りのないストーリーを
出典: ピースサイン/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
ここでいう太陽とは理想の自分と考えることができます。
その自分に届くことで自分も、守りたい誰かも笑顔にすることができます。
夜明け前の澄んだ空気を纏う街がこれから昇る太陽を待ち蒼く萌えている様子は、静かに活躍の時を待つヒーローの準備期間の心持ちを表しているのではないでしょうか。
朧気なのは未来も同じことで、その未来に向かって進んでいけるヒーローとしてのお馴染みのサクセスストーリーを想像させます。
カサブタだらけ 荒くれた日々が
削り削られ擦り切れた今が
君の言葉で蘇る
鮮やかにも 現れていく
蛹のままで眠る魂を
食べかけのまま捨てたあの夢を
もう一度取り戻せ
出典: ピースサイン/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師