毛皮のマリーズのメジャーデビューを飾る曲
「ボニーとクライドは今夜も夢中」は2010年4月発売のメジャーデビューアルバム「毛皮のマリーズ」収録曲です。
ボーカルおよび作詞作曲を担当された志磨遼平さんといえば、2011年にバンド「毛皮のマリーズ」解散。
2012年に結成したバンド「ドレスコーズ」も2014年にはソロプロジェクトになりました。
ドレスコーズのアルバム「平凡」リリース時の2017年3月には、長髪をばっさりカットして心機一転。
さらに2020年1月にはドレスコーズ「ピーター・アイヴァース」をリリースして、音楽愛を極めています。
ロックが好きすぎて、造詣が深い。
そんな志磨遼平さんがメジャーデビュー1曲目に選んだこの曲には、どんな想いが込められているのでしょうか。
短い歌詞をたっぷりと深読みします。
MVも併せてご覧いただくと、より理解が深まるでしょう。
「ボニーとクライドは今夜も夢中」歌詞解釈
一体どうしたの?
いっそこのまま
消えていなくなっちまえば
どんなにラクだろー?
出典: ボニーとクライドは今夜も夢中/作詞:志磨遼平 作曲:志磨遼平
越川和磨さんのギター、富士山富士夫さんのドラム、栗本ヒロコさんのベースが豪快に鳴り響くイントロ。
そこへ重なるのが志磨遼平さんのウィスパーボイスのようなボーカルです。
しかも何かつらい悩み事でも抱えているかのような、投げやりな心情を吐露しています。
バンドマンの失踪がニュースになることもありますが、その寸前で何とか持ちこたえている状況かもしれません。
しかしメジャーデビューアルバムの最初の曲としては、何とも後ろ向きな言葉から始まったものです。
この歌物語の主人公の身には一体何が起きているのでしょうか。
MVを見ると、上半身むき出しの富士山富士夫さんを含め、4人ともいかにもロックスターらしい格好です。
とくに長髪の志磨遼平さんは胸をはだけ、首に巻いたスカーフをなびかせ、ばっちりメイクもしています。
これほど派手な出で立ちでは、どこに隠れてもすぐに見つかりそう。
要するに、ゴージャスなサウンドやファッションとは対照的な内容の歌詞になっているという話です。
なぜ退廃的なムードなの?
(yeah)
こ、この世の全てがバカみたい
ホントどーなったっていーよ
出典: ボニーとクライドは今夜も夢中/作詞:志磨遼平 作曲:志磨遼平
さらに退廃的なムードが強まります。
主人公の身に何が起きたのかについては、さっぱりわかりません。
あるいはとんでもなく困った出来事に遭遇したのではなく、些細な不満が積もりに積もったとも考えられます。
とにかく今にも爆発しそうな状態。
身のまわりや世間で起きている何もかもが空虚に感じられ、自分を大切にすることもできなくなっています。
反抗期の若者にありがちな鬱屈とした気分を表しているのかもしれません。
ところがネガティブな歌詞に反して、音楽も服装もノリノリということは、そこに何か意味があるわけです。
既にお気づきの方もいるはずですが、これはグラムロックの踏襲。
デヴィッド・ボウイやT.レックスらがヒットを飛ばした1970年代前半のイギリスは、パンク誕生の前夜でした。
1973年のオイルショックにより、世界的な経済不況に陥っていたわけです。
こうした世相に反発するかたちで、派手な格好で騒ぐ音楽が流行りました。
そんなグラムロックの中でも、この曲の志磨遼平さんの歌い方はT.レックスのマーク・ボランを彷彿とさせます。
そう考えると、歌詞の投げやりな姿にも納得がいくのではないでしょうか。
神様に許しを請う理由
愛を知る
一千回のキス
アウォンチュベビアラーヴュー
どうか神様お願い二人を許して
出典: ボニーとクライドは今夜も夢中/作詞:志磨遼平 作曲:志磨遼平
空虚で退廃的な歌詞は、グラムロックの世界観をオマージュしたもの。
そうわかったところで、歌物語には次の展開が訪れます。
これまでは主人公の男性が一人で孤独感に苛まれているかのようでした。
世界中の出来事に違和感を覚え、無関心な態度を示していたわけですが、どうやら誰かと出会った模様です。
つまり愛を知ったということ。
それも熱烈に愛し合っています。
ネガティブな感情を抱えて一人で悶々とするより、女性と一緒にポジティブな時間を過ごすほうがいいでしょう。
しかし主人公は自分たち二人について、神様に許しを請うわけです。
その理由は何なのでしょうか。
二人は悪いことをしたけれども、責めないでほしいと願っている状態。
そこまではわかりますが「何がいけないことなのか?」はわかりません。
愛し合うことがダメなのでしょうか。
口づけの回数が多すぎるという話?
疑問を残したまま、先に進みます。
俺たちに明日はない
なんて素敵な気分魔法みたい
ずっとこのままじゃれてたい
出典: ボニーとクライドは今夜も夢中/作詞:志磨遼平 作曲:志磨遼平