暗い 幽い 森の中
取り残された感覚 思い出した
きみ無しじゃ 生きていけないって
依存しそう で厄介さ

出典: Dear Mr 「F」/作詞:ACAね 作曲:ACAね

この曲が醸し出すのは、絶望的なまでに世界から断絶された空気感

周りから、世界から取り残された感覚を暗い森の中と例えています。

先ほどまでの曲と異なり、「依存する」という感情を客観的に扱う視点がみうけられますね。

もう駄目だ もし触れたら
消えてなくなるんでしょ 真っ白に
だめだ もう僕をさ
見つけないでくれよ お願いだよ

出典: Dear Mr 「F」/作詞:ACAね 作曲:ACAね

触れることへのためらいと、喪失への恐怖

その不安への対処方法として自己の喪失という行動をとっています。

この楽曲を覆うのは、悲しみのあまり自己の存在が希薄になった世界観です。

そもそも 住む世界が違うな
冗談だよ 口癖の
間違えた ふりして笑おう
どうにもならない

出典: Dear Mr 「F」/作詞:ACAね 作曲:ACAね

そんな君は住む世界が違う人間なのでしょう。

曲中には、目の前からいなくなってしまった…といった雰囲気があります。

しかし、目の前から消してしまったというのが正しいのでないでしょうか。

醒めた もう僕をさ
突き放してくれよ お願いだよ

出典: Dear Mr 「F」/作詞:ACAね 作曲:ACAね

「会いたい」と歌われながらも、同時に、拒絶を思わせる詩がたくさん出てきます。

「嫌いだ」と述べるのではなく、「嫌いになって」と相手の感情をうながす拒絶

自己卑下と、そんな自分自身への拒絶です。

そして、同時に、そんな自分に好意をもってくれる「君」の拒絶でもあります。

ひとりで平気だけど 太陽はあかるいけど
きみの足跡は 消えないよ

出典: Dear Mr 「F」/作詞:ACAね 作曲:ACAね

そうして作りあげた居心地のよい世界は、きっとこんな景色なのでしょう。

こんなこと騒動

空虚な離人感に苛まれるように浸れるバラードが終わると、これまたけだるげなスキャットがはじまります。

私はこの曲を【潜潜話】イチのキャッチ―なナンバーだと思っています。

変化自在な曲調

ころころと変わる曲調のもつニュアンスや、感情を盛り上げる秀逸な楽器隊がすごく多彩です。

楽器隊に耳を澄まして聴いてみてください。

ピアノが歌詞を乗せたメロディとユニゾンしていく箇所が気持ちイイんです。

そして、サビのメロディを奮い立てる、戦隊モノみたいなフレーズがたまりません。

チープに聞こえかねないフレーズがカッコよく引き立つのは、緩急のある曲調のおかげでしょう。

なりたい自分

さて、自己の喪失をこころみた前曲と対をなすように、この曲で繰り返し描かれているテーマは自分の確立です。

嫌われたくない会話から
ほっとけない疑問の全部 どうしても
痛く見えてるほど なりたい自分で強がれるんだ

出典: こんなこと騒動/作詞:ACAね作曲:ACAね

強がると称しながらも、感じる芯の強さアルバム随一です。

「なりたい自分」というフレーズは、脳裏上のクラッカーのBメロを彷彿させます。

あの曲の、このアルバムがもつ「問い」に対する「答え」を、導き出そうとしているのではないでしょうか。

眩しいDNAだけ