阿部真央【ここにいて】
4枚目のアルバム「戦いは終わらない」収録曲
2019年、デビュー10周年を迎えた阿部真央。
若者から絶大な支持を受ける彼女は、ストレートだからこそ心に迫る歌詞に定評があります。
シングル曲はもちろん、アルバム曲にも名曲が多く目が離せません。
今回はその中でも「隠れた名曲」と名高い【ここにいて】という楽曲をご紹介します。
この楽曲は彼女の4枚目のアルバム「戦いは終わらない」に収録されている作品です。
「君」と主人公の1年
それでは早速、歌詞を考察していきましょう。
まず最初にご紹介するのは、シンセサイザーの切ない音色で始まる1番のAメロとBメロ。
歌詞に登場する主人公と恋人の「君」は付き合い始めて丸1年です。
長いようで短い時間に2人はどんな絆を深めてきたのでしょう。
疲れた「君」
傷つけてばかりの1年が終わる
横には出会ったあの日より年を取った君がいる
出典: ここにいて/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
普通、カップルにとっての1年間はたくさんの幸せが詰まっているもの。
まだすべての感情を互いにぶつけることはできず、初々しさも残っているカップルが多いでしょう。
しかし、この歌詞に登場する主人公と「君」の関係性は少し違っている様子。
ストレートに描かれている1文目からわかるように、最初から2人は互いに感情をぶつけ合いすぎてしまったようです。
そのせいか主人公から見た「君」は疲れた様子で、たった1年なのに老けこんでしまいました。
どちらかといえば主人公の方が感情的になって「君」を傷つけてしまっているのかもしれません。
歌詞の始まりから、なんだか不穏な雰囲気です。
関係性の変化
いつまでも変わらないものなんて
幻想なんだって 君の顔の皺数えて思う
出典: ここにいて/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
自分のせいで前よりも老けこんでしまった「君」。
その姿を見て主人公は冷静になり、心に切なさが迫ってきます。
それは見た目が変化するのと同じく、関係性も変わっていくものなのだと実感してしまったから。
どんなに盛り上がって始まった恋もいつかは冷めてしまいます。
主人公と「君」にも最初は傷つけ合うことなく、愛し合っていた頃があったのです。
それなのにたった1年で2人は傷つけ合い、一緒にいても互いを疲れさせるだけの関係になってしまいました。
2人の恋はこのまま終わりを迎えてしまうのでしょうか?
変わったもの
次に、1番のCメロとサビをご紹介します。
すっかり冷え切ってしまった主人公と「君」の関係性。
それを1年経ってようやく実感した主人公は、あることを願います。
そのあることとは一体なんでしょうか?
またこの1年で変わった主人公の気持ちにも注目です。
主人公の願い
君の泣き顔蘇る その度僕は死にたくなる
今なら分かる 君の尊さ 今更な頼み事、聞いてほしい
来年もこれからもここにいて 繋いだ手を今握り返して
変わらないものなんて嘘だよ だって
あの日よりこんなに君が好きだ
出典: ここにいて/作詞:阿部真央 作曲:阿部真央
疲れた様子の「君」を見て、主人公はこれまで「君」を傷つけてきた自分の罪を思い出します。
その時は感情的になっているから気づかなくても、冷静になったらどれほど酷い言葉だったかがわかるのです。
そして、その言葉を受け止めてくれていた「君」の優しさも…。
主人公が願ったのは、そんな優しい「君」とこれからも一緒にいたいということ。
たくさん傷つけてしまったのだから「君」がそれに答えてくれるどうかはわかりません。
それでも主人公は必死に「君」に対する想いを伝えます。
それは1年前よりも「君」が好きだという想いです。
誰かとの関係性が変わってしまうのは悲しいことでしょう。
けれど傷つけ合った分、絆も深まっているはずなのです。
むしろ疲れるほどに傷つけ合っても、離れること選ばなかった絆を大切にしたい…。
そんな主人公の気持ちが伝わってきます。