「設定」が大事なのか
グッバイ
君の運命のヒトは僕じゃない
辛いけど否めない でも離れ難いのさ
その髪に触れただけで 痛いや いやでも
甘いな いやいや
グッバイ
それじゃ僕にとって君は何?
答えは分からない 分かりたくもないのさ
たったひとつ確かなことがあるとするのならば
「君は綺麗だ」
出典: Pretender/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡
君と釣り合わないという諦めの境地から僕は別れを告げます。
固定された身分制の中で超えられなかった限界を前に仕方ないかと肩を落とすのです。
運命というものは運ばれる生命ですから運び方を変えれば変えることはできます。
運命への挑戦というものを若い世代がしないとこの先の難題をどう乗り越えるのでしょうか。
僕もそれなりの苦さや辛さを噛み締めています。
しかしどこまで切迫している覚悟なのかは不明です。
君は黙って退く僕をどう思うでしょうか。
その点について判断するのは君であるはずなのですが、僕は打ち明ける前に諦めてしまうようです。
これは愛の歌なのかと疑うほどに愛だ恋だへの執着を早々と捨てる僕がいます。
そして君の美しさだけを称揚するのです。
引き下がるのがふたりのためだという僕の決意の中で君は何の関与もしていません。
藤原聡が描きたかったのは何だったのでしょうか。
この奇妙なラブソングには身悶えするほどの愛の悦びなどがありません。
違う運命があったなら僕と君の関係性は違っていただろうという「設定」だけに視線を注ぎます。
あらすじをひっくり返すような真似はしないのです。
藤原聡の恋愛観
誰かが偉そうに
語る恋愛の論理
何ひとつとしてピンとこなくて
飛行機の窓から見下ろした
知らない街の夜景みたいだ
出典: Pretender/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡
僕は知らない街の夜景も自分とどこかで関わりがあることを想像しません。
とにかく僕は自分のこれまでの蓄積に信頼を置いています。
この若さのうちにある自信過剰な側面と恋愛のカースト制度に逆らわない性格が共存するのです。
これは矛盾しているようですが実際の世界にはよくあることでしょう。
カースト制度を支えているのはカーストの下の方にいる人の無抵抗のおかげです。
自分に変化を呼び込む他者の理論は僕には必要ないと思っています。
実感としてしっくりこない思いを抱えているのです。
それでは僕の恋愛のセオリーとは何でしょうか。
「設定」という元からある関係性に頼ったものです。
アニメのキャラならば「設定」を超えた暴走が許されません。
藤原聡はアニメから歌詞の着想を得たために「設定」の大切さを知り尽くしているのです。
旧くから現代に至るまでの様々な愛の論理。
そこでは「そもそも愛とは」ということばかりが重要視されます。
この愛の論理には現実にあるスペックの違いのようなものは考慮の対象にしません。
誰もが同じ男、同じ女であるという大前提に立っているようなフシさえあるのです。
その点で藤原聡は現実のスペックに自信のない僕を登場させます。
現実の恋愛偏差値が違う僕と君のすれ違いを描いてみせるのです。
世に蔓延る恋愛理論と藤原聡の恋愛観のどちらがより実際の恋愛を反映しているものでしょうか。
2010年代後半にリアルさを持って迎えられたのはOfficial髭男dismの「Pretender」の方でした。
1と「0.52519」
「STEINS;GATE」に感化され
もっと違う設定で もっと違う関係で
出会える世界線 選べたらよかった
いたって純な心で 叶った恋を抱きしめて
「好きだ」とか無責任に言えたらいいな
そう願っても虚しいのさ
グッバイ
繋いだ手の向こうにエンドライン
引き伸ばすたびに 疼きだす未来には
君はいない その事実に Cry...
そりゃ苦しいよな
出典: Pretender/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡
そろそろ肝心の「052519」というジャケットにある数字の謎に迫りましょう。
藤原聡はこの「Pretender」の歌詞をあるアニメからインスピレーションを得たといいます。
「STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)」というアニメです。
アニメのあらすじについてこちらに転載することは叶いません。
肝心な点は「STEINS;GATE」という作品の中では「世界線」というものを超えて世界を変えること。
物語の基軸がこの「世界線」の超越という点に置かれています。
「世界線」は1という値を超えると変化するのです。
つまり1に遠く満たない「0.52519」が「Pretender」の歌詞の僕の現状を示しています。
「世界線」を超えるには半分を少しだけ超えているに過ぎない状態にいるのが僕です。
藤原聡は実際に歌詞の中で「世界線」という言葉を引用しています。
さらにビジュアル的にもこのアニメへのオマージュを捧げるのです。
「STEINS;GATE」で「世界線」の数値を示す「ダイバーエージェンスメーター」を模しました。
それがOfficial髭男dismの「Pretender」のジャケット写真の由来です。
一方でまだ多くのファンの方がこの数字の意味に挑んでいます。
1にまだまだ遠い数字「0.52519」。
これでは「世界線」は超えられないよという「設定」は分かりました。
ただ、なぜ実際にこの数値を指しているのかの答えはファンの多くの方が今も探し続けているのです。
2019年5月25日と読むこともできますが、「Pretender」の発表は2019年5月15日です。
10日後という意味かもしれませんが、僕は君との未来をすでに諦めてしまっています。
謎はこの記事でも「0.52519」、つまり正解である1には遠い程度までしか解けませんでした。
10日後の僕を想像すると
2019年5月25日、「Pretender」の10日後の様子を唯一想像させるのはこのラインです。
僕は君からあっさり引き下がります。
しかし繋いだ手を離すのはやはり辛いことなのです。
関係を終わらせてしまうと訪れるはずだろう未来に君はいません。
その君のいない10日後の世界を思うと僕の胸は悲しみに沈むだろうと落ち込みます。
失恋は通例1ヶ月以上、当事者を苦しませるでしょう。
僕は自分から引き下がっておいて、その結末に勝手に胸を痛めるのです。
しかしそもそも今回の恋愛は「世界線」が違っていたと思っています。
「設定」からして問題があったのではないかと最初に直感していました。
「0.52519」
1までは相当な努力が必要でしょう。
今はそのときではないと感じた苦い恋の始末に僕は煩悶するのでした。
「052519」の謎は少しだけ解けたでしょうか。
あとはクライマックスを残すだけです。
せっかくですから僕の運命を最後まで見届けてください。
「Pretender」が報われる未来
Official髭男dismの真骨頂
グッバイ
君の運命のヒトは僕じゃない
辛いけど否めない でも離れ難いのさ
その髪に触れただけで 痛いや いやでも 甘いな いやいや
グッバイ
それじゃ僕にとって君は何?
答えは分からない 分かりたくもないのさ
たったひとつ確かなことがあるとするのならば
「君は綺麗だ」
それもこれもロマンスの定めなら 悪くないよな
永遠も約束もないけれど
「とても綺麗だ」
出典: Pretender/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡