「Baby I」と恋愛哲学

若きアリアナ・グランデの挑戦

アリアナ・グランデ【Baby I】歌詞を和訳して徹底解釈!結局アリアナが言いたいことは何だったの?の画像

2013年7月22日にシングルとして配信リリースされたアリアナ・グランデの「Baby I」。

タイトルの通りにベイビーを何十回も連呼する不思議な歌詞の曲になっています。

全米ビルボード・シングル・チャートで最高21位を獲得するスマッシュ・ヒットになりました。

日本では葉加瀬太郎のバイオリン演奏をフューチャーしたバージョンも有名です。

アリアナ・グランデの等身大の恋模様に合わせたかのようで実にのびのびとして若々しい楽曲

エレクトロニクスを多用したサウンドも先進的です。

主人公の若い女子の恋の悩みは何なのでしょう。

不思議な歌詞和訳して背景にある恋愛哲学を解説いたします。

アリアナ・グランデの初期の代表曲といっていいでしょう。

それでは実際の歌詞を見ていきます。

言葉がしっくりしない

愛しているのに伝えられない

アリアナ・グランデ【Baby I】歌詞を和訳して徹底解釈!結局アリアナが言いたいことは何だったの?の画像

Baby I got love for thee
So deep inside of me I don't know where to start
I love you more than anything
But the words can’t even touch what's in my heart

出典: Baby I/作詞:DIXON ANTONIO LAMAR,EDMONDS KENNY BABYFACE,SMITH PATRICK MICHAEL 作曲:DIXON ANTONIO LAMAR,EDMONDS KENNY BABYFACE,SMITH PATRICK MICHAEL

歌い出しの歌詞です。

出だしにすでにベイビーが登場します。

歌詞を和訳して解説いたしましょう。

「ベイビー、私はあなたのことを心の底から深く愛しているの

どこから始めていいのか分からないけれど

私は何よりもあなたを愛しているわ

でも言葉では私の心の中の気持ちを表現できないの」

語り手は恋に溺れている私です。

おそらくアリアナ・グランデに宛書きした歌詞なのでしょう。

この語り手の私も彼女と同じくらいの若い女子です。

私はあなたに首ったけでノロケまくります。

「Baby I」の歌詞はずっとこうしたノロケが続きますのでご注意ください。

誰かを好きになってしまうと相手のことをずっと考え続けてしまうのは若い恋にありがちなことです。

淡い想いが募るのですがいざ相手に向かって愛の言葉を投げかけようとするとどう表現するのか迷います。

愛というものは言葉ではないのですから、言葉で表現するのが難しいのは当たり前かもしれません。

シニフィアンとシニフィエなどという述語を使わなくてもこうした事例は身の回りにたくさんあります。

相手への愛情をどんな言葉で表現したらいいかという問題はパートナーのあるなしに関わらず大事なこと。

このことで思い悩んでいる若いリスナーも多いことでしょう。

愛というものは本当に言葉に置き換えが可能なものなのでしょうか。

「Baby I」はこうした深い事柄に関わる歌詞なのです。

あの人のことが好き過ぎる。

でも、その気持ちを表現する言葉が見当たらない。

愛にピッタリの言葉ってなんだろう。

「Baby I」を巡って、そうした大事なことを考えていきましょう。

愛は言葉にできない

言葉に昇華できない様々な思い

アリアナ・グランデ【Baby I】歌詞を和訳して徹底解釈!結局アリアナが言いたいことは何だったの?の画像

When I try to explain it I be sounding insane
The words don't ever come out right
I get all tongue tied (and twisted)
I can't explain what I'm feeling

出典: Baby I/作詞:DIXON ANTONIO LAMAR,EDMONDS KENNY BABYFACE,SMITH PATRICK MICHAEL 作曲:DIXON ANTONIO LAMAR,EDMONDS KENNY BABYFACE,SMITH PATRICK MICHAEL

いよいよ本論が始まります。

「私が頑張って恋心を説明しようとしても 狂った調子にしか聞こえないかも

言葉では正しく伝えられないわ

私は舌全体が硬直したり(捻れたり)しちゃうの

私が何を感じているのかを上手く説明できないわ」

熟年カップルはあうんの呼吸というもので会話します。

あえて会話に変える必要もなく愛を交歓できるのです。

しかしお互いの考えていることが違っていると哀しいと感じる感性の人などもいます。

そうした方々は言葉でのコミュケーションなどを求めるものです。

やはり人間というものは言葉を介してしか相互理解できない生き物なのでしょうか。

言葉を持たない動物は匂いや身振りなどをコミュニケーションの媒介にします。

こうしたものは理性の産物ではなくてもやはり言葉の替わりになるものでしょう。

ところが理性を持つために人間は言葉に悩んでしまいます。

「Baby I」の語り手の私も幼いながら言葉にすごくこだわり続けるのです。

あなたとはまだ付き合いたてなのかもしれません。

苦心して説明するごとに愛の言葉が滑稽な感じになってしまう。

本当は真剣な想いを抱えているのに言葉にできない苦しさ。

愛しさで温まった心なのに言葉にすると冷めた料理のように味気なくなってしまう。

私の想いはこんなものじゃないのにどうしてだろう。

説明しようとしても舌がもつれるもどかしさ。

この語り手の私の想いは多くの人に共有・共感されることでしょう。

愛の問題に関わらず普段から口下手な人にとってこの悩みは相当に根深いものです。

歌詞にして歌うことはできても日常生活の言葉のコミュニケーションを苦手とする人もいます。

様々な人たちが自分の気持ちを素直な言葉で表現することに問題を抱えているはずです。

語り手の私は感情自体をまだ言葉に昇華できません。

私はこの問題を解決できるのでしょうか。

ベイビーで画面がいっぱい

万能な言葉、ベイビー

アリアナ・グランデ【Baby I】歌詞を和訳して徹底解釈!結局アリアナが言いたいことは何だったの?の画像

And I say baby, baby
Baby (baby I)
Oh baby, oh baby, my baby (baby I)
Oh baby, baby I (baby I)
All I'm tryna say is you're my everything baby
But every time I try to say it words they only complicate it

Baby,baby(ooh oh)

出典: Baby I/作詞:DIXON ANTONIO LAMAR,EDMONDS KENNY BABYFACE,SMITH PATRICK MICHAEL 作曲:DIXON ANTONIO LAMAR,EDMONDS KENNY BABYFACE,SMITH PATRICK MICHAEL

私の解決策は意外なものです。

「それで私は『ベイビー』ばかり連呼するの

ねえ私ね、おおベイビー、おおベイビー、私のベイビー

ねえ私ね、おおベイビー、ねえ私は

あなたは私のすべてだってことを頑張って伝えているの

そのことを言葉で表現しようとする度に まったく分かりにくくなるの

ベイビー、あのね」

言葉にならない心の破片のようなものはベイビーという単語で代用しようと考えます。

そのために「Baby I」の歌詞はベイビーだらけです。

こうした意味があまりない単語には様々な想いを乗せることができます。

あのね、そのねみたいな曖昧な日本語表現を思い出してください。

相手に語りかける際に必死さを感じる言葉でもあります。

伝えたいことは分からないけれども、伝えたいという気持ちは十分に伝わってくる魔法の言葉、ベイビー

歌の世界ではメロディと歌詞の調整やビートに言葉を乗せきるために使われます。

まず大切なことは伝えたいという気持ちを相手に分かってもらうことかもしれません。

あのねやベイビーという言葉の万能性は自在に使って頼った方がいいです。

会話の途中に沈黙を横たわらせることが怖い時期もあります。

そうした空白を埋めるためにもベイビーという言葉は便利です。

ただしエレガンスな印象からは遠くなるでしょう。

あくまでも成長途上の女子にしか使うことが許されない言葉かもしれません。

私が愛情を説明しようとするとどうしても複雑になってしまう。

本当はもっとシンプルに愛しているという気持ちなのだけれども「愛している」という言葉も何か違う。

だから私はあなたにベイビーと呼びかけます。

意味が消失する臨界