アルバムのセルフタイトルを冠した楽曲に迫る
当時の女王蜂の「虎の子」とされた1曲
2017年4月、女王蜂にとって5枚目のフルアルバムとなる「Q」がリリース。
彼女たちはこの作品について、リリース当時に「最高傑作ができた」と語っています。
そんな本アルバムの中でも特にキーとなったのが、今回ご紹介する楽曲【Q】だったんだそう。
当初このアルバムが出るタイミングには、全てにおいて全く違うものが用意されていたのだとか。
ボーカル・アヴちゃんの中にこの【Q】が降りてきた為、アルバムをほぼ一から作り直したそうです。
彼女曰く、この楽曲は「いつか書かなければいけないと思っていた」曲なのだそう。
ボーカル・アヴちゃんの少年性を引き出したMVも注目!

楽曲の中身を解説する前に、ぜひこちらのMVも併せて見て頂きたい映像となっています。
この曲のテーマとなったのは「少年性」。
MVの中では、まるで少年のような風貌のボーカル・アヴちゃんが壁にもたれかかり淡々と歌を紡いでいます。
元々男とも女とも付かないような自身の風貌を、パフォーマンスやバンドのアイコンとして生かしてきた彼女。
インタビューの中で、この【Q】は彼女の中の核となる「少年性」を顕在化させた歌だと語っています。
その為、映像として彼女が自身の「少年性」を表現した結果、このようなMVが生まれたのですね。
それではこの【Q】という曲には、アヴちゃんのどのような「少年性」が表現されているのでしょうか?
歌詞の内容を紐解いていきたいと思います。
早速歌詞を見ていこう
荒んだ水場が表す、「Q」の劣悪な環境
台所からは饐えた匂い 換えられなかった水が濁る
洗面所からは自殺未遂 自分勝手な独りよがり
ガードレールの側に落ちた 赤く濁ったビニール袋の中身は
上手に愛されなかった心だったもの
出典: Q/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ
アヴちゃんはインタビュー等で、この楽曲の冒頭のフレーズについてよく触れています。
一時期彼女は周囲の、特に男性ボーカリストのバンドのライブを見ている時。
このフレーズが浮かんできて頭から離れなかった、と語っていました。
彼女ほどのアーティストであれば、様々なハイレベルのパフォーマンスを間近で見ることも多いでしょう。
その時の鮮烈な光景が、彼女の中の「少年性」を呼び覚ましたのかもしれません。
歌詞の具体的な言葉や情景についても、少しずつ触れていきたいと思います。
長い年月を経て薄汚れた、鼻を覆いたくなるような匂いの充満する台所。
この情景だけで、家の中の荒んだ生活を容易に連想することができますね。
洗面所や道端のガードレールに転がっているのは、お世辞にも幸せな思い出の欠片とは言い難いものばかり。
これらのフレーズから、アヴちゃんの中にある「少年性」の恵まれていない環境が想像できます。
仮にここでは、その「少年性」については「Q」と呼ぶことにしましょう。
せめて、この小さな世界だけでも
ぶたないで 父さん
ぶたないで 父さん
世界はいまにも大変なのだから
仲良く 仲良くしようよ
出典: Q/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ
Qの父親は、暴力を振るう日々を過ごしているようです。
その相手はQなのか、あるいは他の存在なのか。
声を荒げ拳を掲げる自分の父を、か細い声で必死に宥め止めようとするQ。
地球上に争いが絶えないことを、まだ幼い少年であるQですら知っています。
せめて自分の家族というこの小さな世界の中だけでも、平和で仲良く暮らしていたい。
彼のそんな儚い願いが、痛いほどに伝わってくるような光景です。
少年Qが思うこととは
父親の暴力の代わりに…
病院帰りの疲れた顔 黄ばんだ壁には拳の跡
軋むベッド 出来ることならこれくらい
いいよ 声を殺すから
出典: Q/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ