ソロプロジェクト第一弾はドラマの主題歌
往年の名車が疾走する「冬の花」MV
少しハスキーで力強い歌声が魅力的な”エレカシ”の宮本浩次が「冬の花」でソロデビューを果たしました。
ドラマ「後妻業」の主題歌として主人公を思い浮かべながら書いたというこの曲は、MVも必見です。
彼自らが運転する格好いいスポーツカーは、日本が誇る往年の名車フェアレディZ。
ロングノーズにショートデッキ、そしてフェンダーミラーというクラシカルなスタイルが特徴的です。
愛称240(ニーヨンマル)Zと呼ばれるこの車は海外でも大人気で、映像で左ハンドルなのが確認できます。
お馴染みの黒っぽいジャケットの上にコートを羽織った宮本浩次と白の240Zは、登場するだけで絵になりますね。
粋な演出が施されたMVについて、順を追って解説してみたいと思います。
シフトゲートに沿って進む物語
PROLOGUE~MVのオープニング
大きな風力発電の風車が並んだ夜明けの海岸にゆっくりと停車する白のフェアレディZ。
まだ薄暗い風景の中に光るテールランプが印象的なオープニングです。
最初にインサートされる「PROLOGUE」という文字の上にはアルファベットのRと数字の書かれたデザインが。
見慣れない方も多いかと思いますが、これはマニュアル車のシフトレバーを操作するためのシフトゲートです。
1速、2速、3速という具合に手動でゲートに沿ってシフトアップして車が加速していくわけですね。
それぞれのギアに物語の第1章(CHAPTER 1)、第2章、第3章と振り分けたところにもセンスを感じます。
ギアを変えるたびに車のスピードも上がり、MV上で物語も進んでいくという演出になっているのです。
車から降りたコート姿の宮本浩次が髪を少し掻きむしるシーンがあって、ここは如何にも彼らしいなと思います。
ボサボサの髪をいじるのは彼の癖みたいなもので、整った短髪の姿など想像もつきません。
冷たい冬の風に吹かれて乱れた長髪は、主人公の乱れる心の中を表しているようです。
俯きながら車へ戻る彼の右手には花束が握られていますが、この花は誰に捧げるものなのでしょうか。
悲しげなピアノとストリングスをバックに静かに歌い出した宮本浩次の声は相変わらず素敵です。
シンクロする心と車の動き
CHAPTER 1~走り出すフェアレディZ
左側のドアを開けて車に乗り込んだ彼は、また髪を掻きむしって走り出します。
笑顔はもちろん嬉しいからではなく、笑い飛ばさなければ辛い何かがあったのかもしれません。
曲のサビに向けて盛り上げるように車もスピードを上げ、少し乱暴な運転をしているようにも見えます。
早朝の誰もいないところでスピードを出して何かを振り切りたいという気持ちもあるのでしょうか。
安全運転は当然として、マニュアル車のギアを入れるという行為には気持ちが高揚するところがあります。
アクセルを踏めばスピードが上がっていくオートマチック車と違って、人と機械がシンクロするような感覚です。
この章では主人公の乱れた心の動きが車の動きとシンクロしているように感じられます。
心を揺さぶるサビのメロディー
CHAPTER 2~激しく感情を吐き出す宮本浩次
サビの部分を歌うところは宮本浩次のキャラクターを活かしたMVならではの演出です。
花束を誰かに捧げるのに相応しい服装でネクタイも締めているのですが、結び目はだらしなく緩んだまま。
顔には無精髭が生えていて、根は優しいのにワイルドなところもあるのが映像からも伝わってきます。
繊細さと荒っぽさが同居しているのが彼の魅力で、ここはソロになっても変わることはありません。
感情を吐き出すように歌うスタイルはこの曲でも健在で、激しく髪を振り乱す姿に心を揺さぶられます。
切なく盛り上がるメロディーは相変わらず優れたソングライターであることを証明する出来映えです。
ここでMVは我慢できずに激情が迸るシーンから夜のガソリンスタンドへ転じます。
あの大きな風車が回る海岸に行く途中で心を鎮めるように立ち寄ったのでしょうか。
ほんの一瞬だけカメラの方を向く宮本浩次の表情は今にも壊れそうな感じに見えてしまいます。
色々なことを考え、苦しみながら誰もいない夜明けの海岸に向かったのでしょう。
真っ赤な色は心の叫び?
CHAPTER 3・4・5~窓から散る薔薇の花びら
場面はもう一度海岸を走るシーンに戻り、彼は感情をむき出しにフェアレディZを運転します。
車のギアをテンポよくシフトアップするのに合わせてMVはCHAPTER3・4・5と畳み込むように流れていくのです。
静かな導入部から心を掴むサビのメロディーまで、鮮やかに音と映像の世界に引き込む素晴らしさ。