ヘミングウェイなんて読んだこともなかった
活字嫌いの僕なのに
なぜかここに座っている
いつだったか君が手にしていたのを見て
どんなことが書いてあるか気になって
ページめくり始めた
出典: 図書室の君へ/作詞:秋元康 作曲:杉山勝彦
「君」はヘミングウェイを読む文学少女のようです。
ここで、ヘミングウェイという作家について見てみましょう。
アーネスト・ミラー・ヘミングウェイは、アメリカ合衆国出身の小説家・詩人。ヘミングウェイによって創作された独特で、シンプルな文体は、冒険的な生活や一般的なイメージとともに、20世紀の文学界と人々のライフスタイルに多大な影響を与えた。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/アーネスト・ヘミングウェイ
「誰が為に鐘は鳴る」や「日はまた昇る」の作者だといえば、ピンとくるかもしれません。
すでにこの世を去っている作家の作品を選ぶなんて、相当文学に通じています。
文豪と呼ばれる古き時代の作家たちが描く作品は、内容の理解に少しコツがいるものです。
それは当時の世界を舞台にしているから。
戦時中の状況や、昔のアメリカで使われていた生活道具などが登場することもあります。
一応、親切な本には注釈がありますが、それでも完全に理解することは難しいのです。
そこから「難しそう」「とっつきにくそう」というイメージも生まれるのでしょう。
またこの場面から、「君」がヘミングウェイ好きではないかという考察も可能です。
主人公があえてヘミングウェイを選んで読み始めていることが根拠になります。
恋をすると、好きな人のことを自然と目で追ってしまうことも。
そうして見ているうちに、主人公は気づいたのかもしれません。
「君」は同じ作家の本ばかり読んでいるな。
その作家こそ、ヘミングウェイだったのではないでしょうか。
だからこそ、数ある本の中からそれを選び、自分も読んでみることにした。
特に今の主人公には「君」のことを知るという目的があります。
「君」がよく読む作家の本を読めば、「君」のことが分かるかもしれない。
そう考えたのではないか……と考察できます。
ちいさな繋がり
言葉はないけれど
図書室の別々のテーブルで
僕たちはただじっと本を読む
チラチラと横顔を盗み見て
君が何を考えてるか知りたかった
出典: 図書室の君へ/作詞:秋元康 作曲:杉山勝彦
主人公は、座って本を開きました。
内容を読んではいるようですが、完全に集中している様子ではありません。
やはり「君」のことが気になっています。
今、「君」はまた別の本を読んでいるところなのでしょう。
主人公にできるのは、「君」が前に借りた本を追いかけて借りることだけです。
現在進行形で「君」の心が読めるわけではありません。
暗くなる図書室
「いつの間にか 陽は沈んでしまった。
それでも本を読んでいる君のために
僕は図書室の灯りを点けてあげた」
出典: 図書室の君へ/作詞:秋元康 作曲:杉山勝彦
ここで、小さな繋がりとでも呼べる出来事が起きます。
電気をつけるというささやかな行動です。
放課後は意外と短いもの。
すぐに日が沈んでしまったのでしょうか。
「君」は本に集中しているのか、部屋が暗くなっても気にしない様子。
しかし、主人公はそれを気遣っています。
暗所で本を読むと、目にも悪いものです。
主人公は「君」のために立ち上がり、図書室の電気をつけました。
まだ会話はないようですが、これは大きな進展です。
一方的に「君」を見ているだけだった主人公が、「君」のために行動を起こしたのですから。
「君」の新たな魅力
過ぎて行く時間さえ気づかない夢中さっていい
出典: 図書室の君へ/作詞:秋元康 作曲:杉山勝彦
主人公は、「君」の新たな魅力を見つけました。
日が暮れたのにも気づかないほど、集中して読書する姿勢です。
前の歌詞で、主人公は活字が苦手だと書いてありました。
「君」を知りたいと思っていても、すぐに苦手を克服できるわけではありません。
やはり、あまり集中できていなかったのでしょうか。
自分にはない集中力を発揮できるところが魅力として感じられています。
決定的な相違
ヘミングウェイ読んでほんの少しわかった
君と僕の性格は
そう全く違うってこと
教室ではきっと気づかなかっただろう
でもどうして君のことをこんなにも
好きになってしまったか?
出典: 図書室の君へ/作詞:秋元康 作曲:杉山勝彦