力の源は……

くず【全てが僕の力になる!】歌詞の意味を徹底解説!僕が変わったのはなぜ?どんなときでも大切な事とはの画像

2004年にリリースされた楽曲「全てが僕の力になる!」。

情熱的なこの曲がオリコン1位と評価されたことには、もちろん理由があるはずです。

理由のうちの1つは、まっすぐな歌詞にあるのではないでしょうか。

人間が持てる力を出し切る瞬間には、様々な理由や状況があります。

「火事場の馬鹿力」「背水の陣」など、窮地に大きな力が出ることのことわざは有名です。

「くず」の2人が歌う物語の主人公の、力の源はなんでしょう?

歌詞を紐解いていきます。

本気を引き出す方法論

1つ目のきっかけ

君の声が力になる!
君の笑顔が力になる!

出典: 全てが僕の力になる!/作詞:ANIKI 作曲:ANIKI

まず、曲に登場したのは「君」です。

曲を通して、「君」と主人公(僕)との関係性は語られることがありません。

「くず」は不良少年がモチーフになっています。

曲の主人公も、歌い手と同じような個性を持っているかもしれません。

ならば、主人公は学生のはず。

そんな主人公の力を引き出す「君」は、恋人でしょうか?

それとも、仲の良い友達かもしれません。

あるいは、家族や親戚などの身近な人間の可能性もあります。

あえて具体的に語られない「君」は、実際誰でもいいのかもしれません。

「君」の正体はさして重要ではないのですから。

最大の注目は、主人公にとっての「君」がいる意味です。

「君」がいるからこそ、主人公は力を出せる。

最初はわずかだった力が、どんどん大きく広がっていく。

曲の主題はそこにあります。

無力な「僕」

今までの僕は いつも
ひとりで生きてると 思ってた

出典: 全てが僕の力になる!/作詞:ANIKI 作曲:ANIKI

多感な思春期は、大きな孤独を感じる期間でもあります。

物理的には周りに友人や家族がいるのに、分かり合えない感じがしてしまったり。

それをきっかけにして、精神的な孤独を抱くこともあるでしょう。

自分はこれまでずっと1人ぼっちだった。

そんな錯覚を起こす時さえあるかもしれません。

ある意味で、それは間違いです。

なぜなら身近に必ず、面倒を見た人物がいると思われるのですから。

それは両親に限りません。

ささいな会話を交わしたお店の人。

毎日挨拶をする近所のおじさん、おばさん。

公園で会う犬。

10代の少年がこれまでに出会ってきた、すべての要素です。

今まで見聞きしたものが、感性や個性を磨くきっかけになります。

同時に、半生を覆う孤独は半分事実です。

人の成長と共に、価値観や世界の見方が多様化していきます。

語彙力もついていくでしょう。

自分の感情や考えを明確に表現できるようになると、ある変化が生じます。

友達と微妙なすれ違いが生まれるようになるのです。

それまでは「共通点が多い」「話が合う」と感じていた相手と、感覚がズレていきます。

同じ映画を観た時を例に挙げましょう。

小さい頃は「面白かった」と言えば話が通じたかもしれません。

ですが感性が広がるに従って、どこが面白かったのかに違いが生まれていきます。

結果、結論の「面白かった」は同じでも、小さな違いが残ることになってしまうのです。

これはポジティブな変化です。

互いの感性の違いから、新たな気づきを得ることができます。

交友関係を広げて、もっと趣味の合う友達を見つけるきっかけをつかめるかもしれません。

しかし悲しいのも事実です。

すぐに新しい友達が見つからない場合、この感性の違いをしばらく引きずることになります。

これまでの友達と話すたび、価値観の違いが浮き彫りになるのです。

違和感が増えていき、「誰も自分を理解してくれない」と感じるかもしれません。

それが孤独感を生む原因になりえます。

小さな声は届かない?

大きな声で叫んでみても
誰も振り向いてくれないと思ってたんだ

出典: 全てが僕の力になる!/作詞:ANIKI 作曲:ANIKI

孤独感が進むと、やがて無気力になることがあります。

共感してくれる人がいなければ、物事に取り組む価値が無いように思えてしまうのでしょう。

大多数の国は民主主義です。

多数決で物事が決まります。

大勢を味方につけた人が、行動を起こせるように見えてしまうのです。

そんな原則から我が身を振り返った時、孤独な少年は虚しくなります。

誰にも分かってもらえない自分は、どうせ賛成もしてもらえないだろう。

何かを始める前から「どうせ上手くいかない」と考えることほど寂しいことはありません。

やる気の芽を自分で摘んでしまうことになります。

進もうとした道を、自分で塞いでしまうのです。

とはいえ、「自分には無理だ」と半ば本気で信じているのですから、無理もありません。

孤独な少年、つまり主人公が変わるためには、きっかけが必要なようです。

逆転の発想

許せない事があっても
テレビのニュースに怒っても
やりきれない心のモヤモヤも
全部ひっくるめて力にすればいい

出典: 全てが僕の力になる!/作詞:ANIKI 作曲:ANIKI

主人公の中で、思考の転換が起きました。

執着、怒り、不満は、ネガティブな感情として見られがちです。

しかし、それらの感情にもエネルギーがこもっています。

イライラしやすい人にとっては、幸せよりも強いエネルギーがこもっているかもしれません。

エネルギーは、行動を起こすのに不可欠な動力源です。

何かをやり続けるには、心のエネルギーが補給され続けなければなりません。

主人公は、自分が持つ感情のエネルギーに気づいたのです。

イライラし続けることは簡単です。

1度腹を立てると、示し合わせたように「イライラしそうなこと」が集まってきます。

増幅した苛立ちを、別の方向に活かすことができるのではないか。

負の感情が集約されて、別の強いエネルギーに変わるかもしれない。

気づいた瞬間こそ、転換の第一歩です。

主人公は腐っているだけの態度を切り上げて、新たな生き方を見つけました。

負の感情を集めてエンジンを動かそうとすると、驚くべきことが起きます。

何の役にも立たないと思っていた気持ちが、ポジティブなエネルギーに変わるのです。