「HOTEL PACIFIC」ってどんな曲?
サザンが初めてダンスを取り入れた曲
サザンオールスターズ(以下サザン)の曲の中でもダンスが際立つという異色のナンバー「HOTEL PACIFIC」。
サビのダンスでは、ダチョウ俱楽部の「ヤー」を模した振り付けがあったり、ビートたけしさんの「コマネチ」ポーズが盛り込まれていたり。
わざとダサく見えるように作られた振り付けですが、フェスやライブではみんなで踊って盛り上がれる1曲です。
サザンが本格的にダンスを導入したのは、2000年7月にリリースされた本曲が初めて。
タイアップとなったWOWOW「サマーキャンペーン」のCMでは「オー・モーレツ」の台詞で有名な丸善石油のCMをパロディ。
1969年当時小川ローザさんが着ていた、白いヘルメットに白いミニスカ姿のCM衣装を再現しました。
ファンにも人気のある本曲のPVは映像作品集『ベストヒットUSAS (Ultra Southern All Stars)』で見ることができます。
「HOTEL PACIFIC」は実在した?!
曲名の「HOTEL PACIFIC」は、実在したホテルがモデルとなっているのを知っていますか?
そのホテルの名前は「パシフィックホテル茅ヶ崎」。
それで、なぜ写真が加山雄三さんなの?と疑問に思った人も多いはず。
実は、パシフィックホテル茅ケ崎も含むリゾート施設「パシフィックパーク茅ヶ崎」は、加山雄三さんとその父・上原謙さんら数名が共同で経営していた施設なんです。
この施設は1960年代から1980年代にかけて営業していましたが1988年に廃業。
現在は取り壊され、跡地には高級マンションが建てられているそうです。
桑田さんも馴染みの「パシフィックホテル茅ヶ崎」
そこで「なぜサザンがパシフィックホテルを曲にしたの?」という点も気になりますよね。
それは「HOTEL PACIFIC」を作詞したサザンのボーカル・桑田佳祐さんがパシフィックホテル茅ヶ崎に思い入れがあったと考えられるからなんです。
最近、WOWWOWでも特集が組まれたので知っている人も多いかもしれませんが、桑田さんは大のボウリング好き。
中高生時代、桑田さんはパシフィックホテル茅ヶ崎にあったボウリング場でジュニアボウラ―として名を馳せていたそうです。
さらにメジャーデビュー前の学生時代には、ホテルのプールサイドでバンド演奏のアルバイトも経験。
桑田さんはパシフィックホテル茅ヶ崎の全盛期を見て育ったと言っても過言ではありません。
1982年のアルバム『NUDE MAN』収録曲「夏をあきらめて」の歌詞にもパシフィックホテルが登場するのは有名な話ですね。
「HOTEL PACIFIC」の歌詞を解釈
それでは「HOTEL PACIFIC」の歌詞を解釈していきましょう。
歌詞の表面を撫でるように見ていくと、この曲は夏の名残と恋の終わりが重ねて描かれた定番の失恋ソングと言えるかもしれません。
もちろん"失恋"というのもテーマの1つなのでしょう。
しかし"失恋"が目に見えるテーマだとしたら、裏テーマに"時代への懐古"、さらに言えば"HOTEL PACIFICへの懐古"がある。
筆者はそう考えています。
時代とともに沈む<太陽>
ギラギラ輝く太陽が
時代の片隅へ堕ちてゆく
錆びれた海辺の国道には
現在もセピアの幻影が揺れてる
出典: HOTEL PACIFIC/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
ギラギラ輝くのは昼真っ盛り・夏真っ盛りの<太陽>。
しかし、時間が経てば太陽は西に沈んでいきます。
同じように、活気づいていた時代も時間の経過とともに錆びれ、鮮やかな景色は思い出の中でセピア色の<幻影>になっていく……。
八月の濡れた誘惑が
水着の奥まで沁みた時
江の島に架かる桟橋で
恋の花火が浮かんで消えた
風に燃える陽炎みたい
空と海の偶像
出典: HOTEL PACIFIC/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
桑田節定番のセクシーフレーズ来ました!
しかし一夜の情事も、パッと咲いて散る<花火>にかけているのが郷愁を誘う所。
<陽炎>とか<偶像>(読み:アイドル)だって、時の流れや時代とともに消えていく運命を背負っています。
灼けたSun-Tannedの肌に
胸がJin-Jinと響く
夏の太陽が嗚呼燃え上がるTo me
愛…渚に今日も
寄せては返すでしょうか?
砂の上で口づけした
真夏のPacific Hotel
出典: HOTEL PACIFIC/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
<Sun-Tanned>は「日焼けした」という意味。
小麦色に焼けた女性の水着姿に胸が疼くのは、若かりし日……自分自身の全盛期とも言える時代を思い出すからでしょうか。
今は人気の無い<Pacific Hotel>も、愛と口づけを交わす恋人たちで賑わっていた時代があったのかもしれません。
昔と同じように砂浜へ寄せては返す波に、時代の流れを感じます。