珍しいところではアニメ『エヴァンゲリオン新劇場版:破』の挿入歌として知られています。
荒廃した人類社会を描く社会現象まで起こしたアニメーション。
友情や希望を歌う真っ直ぐな歌詞が、この物語の悲しみを一層際立たせていました。
今日の日にさよならするのは
第一章
いつまでも 絶えることなく
友達でいよう
明日の日を 夢みて
希望の道を
出典: 今日の日はさようなら/作詞:金子詔一 作曲:金子詔一
希望に満ち溢れた第一章ですね。
この歌のすべてを物語るパートといっても過言ではないかもしれません。
人生において友達の存在は大きいと思います。
親でも兄弟でも親戚でもない。
けれど時には血縁以上の存在になることも。
地球は何億もの人で溢れています。
そんな中ひとりの人に出会う。
偶然か必然か。
そんなことはどうでもいいのです。
まずは出会ったということ自体が奇蹟なのではないでしょうか。
やがてその出会いは月日とさまざまな出来事を重ね友情へと変わっていく。
歌ではその関係を絶やさずに未来永劫友達でいようねと誓い合います。
そしてまたやってくる明日という日に夢を抱く。
それは目の前に広がる道となって希望をつないでくれるのです。
第二章
空を飛ぶ 鳥のように
自由に生きる
今日の日は さようなら
またあう日まで
出典: 今日の日はさようなら/作詞:金子詔一 作曲:金子詔一
さてここで興味深いフレーズの第二章となります。
鳥は太古の昔から人間にとって空を自由に飛び回る憧れの生き物。
私にも羽があったら大空から地上を眺めてみたい。
誰しも一度はそんな風に思ったことがあるに違いありません。
鳥はすなわち自由を象徴するもの。
いつまでもそういう生き方をしたいものだと思っているのでしょう。
そんな歌の主人公が今日に別れを告げます。
ただそれは悲しいさようならでも投げやりなさようならでもありません。
今日にさようならではなく今日の日はさようならだからです。
今日にさようならでは、とにかく今日起こった出来事を早く忘れ去りたいと言っているようにも聞こえます。
しかし今日の日はさようならだと、今日は一日分の単位でしかありません。
今日という一日分の時間を毎日精一杯生きている。
その積み重ねの日々なのです。
なので夜になり今日という日はもう終わる、だからさよならだね。
でも明日という日はすぐにまたやってくるから思う存分生きていこうね。
そんな風に言っているように聞こえます。
第三章
信じあう よろこびを
大切にしよう
今日の日は さようなら
またあう日まで
またあう日まで
出典: 今日の日はさようなら/作詞:金子詔一 作曲:金子詔一
第三章では視点が第一章で登場した友達に戻されます。
信じあうことは喜びである。
あまりに当然のことかもしれません。
が、実行するのはなかなか簡単なことではないのではありませんか?
口で言うのはたやすいけれど、他人を心から信じるというのは覚悟がいることかとも思います。
なのであえてこの短いフレーズに凝縮して思いを伝えようとしたのでしょう。
時に言葉は飾らないほうがストレートに届きます。
友達との間で大切にすべきことは何でしょうか。
それは信じ合うこと。
何物にも代えがたい喜びをもたらすものだよ。
そんなことを教えてくれているように感じます。
ある人にとっては今日はお別れだけどまた明日会えるからそれまでねということかもしれません。
長い旅に出る友達に向って、今度帰ってくるときまでのさよならだよと言っているのかもしれません。
はたまた次にいつ会えるかも、ましてやまた会えるかもわからない、そんな人に向けての言葉かもしれません。
それぞれの状況はどうであれ、別れ際に人はまたあう日までと言葉をかけるのです。
それはまた会えることを心から楽しみにしているからでしょう。
森山良子をめぐる人々
普通の日常のひとこまも森山良子さんの歌にかかると特別なものに変ってしまう。
どこまでも澄み渡る歌声と慈悲溢れる優しい眼差しに吸い込まれ、安心で暖かな気持ちにさせてくれる。
そんな彼女の魅力は彼女を取り巻く人々によって作られたものかもしれません。
1960年代後半にグループ・サウンズが大流行しました。
その波に乗ったのがザ・スパイダース。
グループの一員に印象的なヘアスタイルのギタリストがいました。
ムッシュかまやつことかまやつひろしさんです。
かまやつさんは森山良子さんの従兄にあたり、度々彼女のエピソードトークに登場します。
高校で森山さんは成城学園に進学します。
学園在学中には厚生労働大臣を務めた小宮山洋子さんが同級生に。
また先輩には映画プロデューサーの黒澤久雄さんがいました。
やがて黒澤さんが紹介した音楽がきっかけで歌手になりレコードデビューを果たします。
後に一男一女をもうけますが、息子である森山直太朗さんも歌手として、母に負けない美声のヒットメーカーに。
色んな人との出会いや別れが、森山良子という人物とその歌に大きな影響を与えたことは間違いないでしょう。