SUPER BEAVERの「らしさ」とは?

「らしさ」は、2014年9月24日に発売されたSUPER BEAVERの6枚目のシングル「らしさ/わたくしごと」に収録された楽曲です。

ヨシノサツキの大ヒットコミックスのアニメ化作品、「ばらかもん」のOP曲としても話題になりました。

「らしさ」でリンクする「ばらかもん」とSUPER BEAVERの意志

らしさ/SUPER BEAVERはアニメ「ばらかもん」OPで話題!心を揺さぶる歌詞の意味を徹底解釈!の画像

この曲にも関わるので、まずは「ばらかもん」という作品についてざっと説明します。

書道家の半田清舟は、ある受賞パーティーで書道展示館の館長に自分の書いた字を「まだ若いのに型にはまった字」、「手本のような字というべきか賞のために書いた字というべきか」、「君は平凡という壁を乗り越えようとしたか?実につまらん字だ」と酷評されてしまいます。

自分の努力を踏みにじられた気持ちになり館長を殴りつけてしまう清舟。

そんな息子を見かねた父・半田清明は「人間として欠けている部分」を見つけさせるため、清舟を五島へ行かせたのでした。

最初は手本通りの字が悪いとも思わず、自分に何が足りていないのかもわかっていなかった清舟が五島で小学生の琴石なるを始めとする人々とふれあう中で変わっていき、心の変化が字にも表れていく様子は見所の一つ。

特に、崖下に一人転落・遭難してしまい、心細さに怯えていた清舟が、闇の中から見上げた星空にインスピレーションを得て書いた「星」という字は、1話で字を酷評した館長にも「見違える程面白い字」と評され、「小学校の課題のような字に夜空の星が見える」「暗闇に取り残されたような心細さ」と「闇の中でしか見えない光」が表現されていると賞賛されたのでした。

そして、自分に自由な字を書かせてくれる、そして、大切な人たちがいる五島で清舟は生活していくことを決めるというのがアニメのざっくりとしたあらすじです。

SUPER BEAVERも「ばらかもん」主人公のように、自分「らしさ」に苦労した!

らしさ/SUPER BEAVERはアニメ「ばらかもん」OPで話題!心を揺さぶる歌詞の意味を徹底解釈!の画像

そんな「ばらかもん」のストーリーと共鳴するのが、SUPER BEAVERのストーリーです。

ヤマハの「TEENS MUSIC FESTIVAL」の2年連続で応募、1年目は全国大会まで進出しながらも優勝できなかったものの、2年目にして見事優勝を果たします。

その実績とインディーズでのライブパフォーマンスが評価され2009年メジャーデビュー決定とともにデビュー曲「深呼吸」はNARUTO主題歌となり、その翌年にも映画「ソラニン」の挿入歌に抜擢されるなど、順風満帆に見えていた彼ら。

しかし、実際には2009年のアルバム『幸福軌道』のレコーディングの際にボーカルの渋谷さんが倒れ、その時期にはメンバー同士もギスギスしており、一時は音楽をやめようとまで思っていたそうです。

その原因はメジャーデビューをきっかけに自分たちに携わる大人たちの声に従うことが正しいことだと思って従い続けた結果、自分たちらしさを見失ってしまったこと。

その後メジャーを退いて「I×L×P×RECORDS(アイ・ラブ・ポップミュージック)」という自主レーベルを立ち上げ、活発にライブ活動を続ける中で「361°」という自信作とも呼べるアルバムも完成させ、SUPER BEAVERは再び息を吹き返していくのでした。

そんな中「ばらかもん」の主題歌として作り上げた「らしさ」には、紆余曲折の中で自分らしさを獲得しようともがく、主人公であり、SUPER BEAVERの意志が表れています。

作詞を担当したギター兼コーラスの柳沢さんも原作を読んで作詞したそうですが、渋谷さん曰く、今の自分たちの言いたいことを歌っていると以前のインタビューで語っていました。

つまり、自分たちの言いたいことと作品のメッセージが自然とリンクしたということなのですね。

「ばらかもん」とSUPER BEAVERの出会いは必然だったのではないかと思わずにはいられないエピソードでした。

SUPER BEAVER「らしさ」の歌詞を徹底解釈!

ここからはSUPER BEAVERの「らしさ」の歌詞を解釈します。

「自分らしさって何だ?」と問いかけてくる歌詞の答えを探しながら、歌詞に込められた意味を考えていきましょう。

「自分らしさ」とは人と差をつけるための道具?

自分らしさってなんだ? 人とは違うで差をつけろ
コンビニの雑誌コーナー 表紙に太字で書いてあった
自分らしさってなんだ?こどもの頃は気にもせず
気に入らなければ怒って好きなものを好きだと言って

出典: https://twitter.com/SUPERBEAVER_bot/status/931689575386198016

「自分らしさってなんだ?」と問いかけた後入るブレイクが印象的な冒頭。

その後に続くので一見答えかと思ってしまう「人とは違うで差をつけろ」という言葉は、ただコンビニの雑誌のコーナーに置いてあった表示に太字で書いてあったというだけです。

そして、もっともらしい答えではなく、本当の「自分らしさ」を考えた時に浮かんだのは「こどもの頃」の自分。

人の顔色や自分の立場など「気にもせず」「気に入らなければ怒って好きなものを好きだと言って」いた頃のことでした。

派遣やバイトの人はわかるかもしれませんが、自分が思ったことを言えば簡単に職を失ってしまうような、取り換え可能な部品として扱われる昨今。

また、学校の授業や部活でも、おかしいと思っても、先生や先輩に従うのが正しいと思い、言いたいこともいえないということも多いと思います。

そうして、だんだんと子供の頃はあった自分の意思や感情は抜け落ちていき、挙句アピールしなければならない場面で、自分「らしさ」がないと言われてしまうのですね。

「ばらかもん」の半田清舟も島の人々との触れ合いの中で子供の頃のような新鮮な感情を取り戻していく様子が描かれていましたね。

ですが、子供の頃のままで生きられるような場所は現実の中にはあまりないものです。

続きの歌詞も見ていきましょう。

子供の頃に持っていた感情が「自分らしさ」?

僕らは変わっていく守りたいものが変わっていく
理解されない宝物から 理解されるための建前へ
おとなになるほど 後悔する生き物になる
でもね それでもね 見えるものがあるんだよ

出典: https://twitter.com/SUPERBEAVER_bot/status/931689575386198016

大人になっていく中で、変わっていくのは、「守りたいもの」だという歌詞。

子供の頃の「守りたいもの」といえば、例えば川辺で拾った石など「理解されない宝物」で、別に他の人に評価されなくても、自分がいいと思っていればそれでよかったといっているのです。

一方で、大人になると「守りたいもの」は、「理解されるための建前」になっていくといっているのです。

自分が人から理解されるために、地位や名誉、収入などを守っていると言っているのですね。

一見「守りたいもの」は理解されるためのものではないという意見もあるかもしれませんが、誰からも理解されなければ、賃金ももらえず、家に住むこともできず、友人や恋人を作ることもできません。

つまり誰からも理解されなければ生きていくことさえできない人間は、「理解されるための建前」として、自分の守りたいもの、そして、自分を守っているというのはあながち間違いではないのでしょう。

子供の頃は理解されなくてもよかったのに、大きな変化ですよね。

しかし、そうやって生きれば生きるほど「後悔する」ことも増えるといっているのです。

では、それで終わりなのか?というと、この曲の歌詞はそれで終わりではなく、そうやってしがらみに足を取られ公開し続ける大人にも「見えるもの」はあるといっている歌詞。

そして続くのはサビの歌詞なのですが、サビの解釈は最後にとっておき、2番に進みます。

人から理解されやすい「個性」を表に出すために「無個性」になっていく