この曲の主人公であるゆうちゃんはお酒も飲まず、貯金ばかりしているつまらない奴だとバカにされている所からはじまります。
それでも、彼はおだやかに笑って許しています。ただ、それには秘密があるようです。
僕だけが知っているのだ 彼はここへ来る前にたった一度だけ
たった一度だけ哀しい誤ちを犯してしまったのだ
配達帰りの雨の夜 横断歩道の人影に
ブレーキが間にあわなかった 彼はその日とても疲れてた
出典: https://twitter.com/aokijuntarou/status/887378290851184640
ゆうちゃんは、トラックの運転手などをやっていたのでしょう。そして、たった一度だけ、仕事でとても疲れていた時に事故を起こしてしまったのです。
雨が降っていて、視界の悪い夜だったのかもしれません。人影に気付いた時には、ブレーキは間に合いませんでした。
償いきれるはずはないけれど
人殺しあんたを許さないと彼をののしった
被害者の奥さんの涙の足元で
彼はひたすら大声で泣き乍ら
ただ頭を床にこすりつけるだけだった
出典: https://twitter.com/goronzoku_bot/status/922748129245462528
その事故で被害者の男性は亡くなってしまいます。残された妻は当たり前の日常を奪われたことで、ゆうちゃんを激しくののしります。
ゆうちゃんには取り返しのつかない誤ちを後悔しながら、泣いて頭を床にこすりつけることしかできませんでした。
もし、「あの時スピードを出していなかったら」「もっと注意して走っていれば」と、同じような考えが頭の中を巡り、自分を責め続けていたのだと思います。
それから彼は人が変わった何もかも
忘れて働いて働いて
償いきれるはずもないがせめてもと
毎月あの人に仕送りをしている
出典: https://twitter.com/goronzoku_bot/status/922748129245462528
その事件があってから、彼はひたすら働き続けます。何か償う方法はないかと考えたのでしょう。
当然、犯した罪を償う方法は見つかりません。しかし、せめて何かの役に立てればと思い、残された女性に仕送りをするようになったのです。
ゆうちゃんは、貯金をしていたのではありませんでした。「薄い給料袋の封も切らずに」とありますから、稼いだお金のほぼ全てを送っていたのだと思います。
一通の手紙とやさしさ
今日ゆうちゃんが僕の部屋へ 泣き乍ら走り込んで来た
しゃくりあげ乍ら 彼は一通の手紙を抱きしめていた
それは事件から数えてようやく七年目に初めて
あの奥さんから初めて彼宛に届いた便り
出典: https://twitter.com/goronzoku_bot/status/922748129245462528
ゆうちゃんは、それからずっと仕送りを続けたのでしょう。
相手が求めているわけではなく、義務でもない仕送りを続けるというのは誠実な謝る気持ちがなければできることではありません。
そして、7年目で「人殺し」とゆうちゃんをののしった、被害者の妻から手紙が届きます。
「ありがとうあなたの優しい気持ちはとてもよくわかりました
だからどうぞ送金はやめて下さいあなたの文字を見る度に
主人を思い出して辛いのですあなたの気持ちはわかるけど
それよりどうかもうあなたご自身の人生をもとに戻してあげて欲しい」
出典: https://twitter.com/goronzoku_bot/status/922748129245462528
自分の夫を殺した相手に対して、「ありがとう」と言えるでしょうか。たとえ、それが手紙であっても、とても難しいことだと思います。
そして、お金を送るのをやめて欲しいと言います。なぜなら、そのお金を見るたびに、夫を失った悲しみを思い出してしまうからです。
事故によってすべてが変わってしまったのは、被害者だけでなく加害者であるゆうちゃんも同じです。
彼女は苦しい気持ちを抱え続けて、それでも仕送りを途切れることなく続けたゆうちゃんのやさしさに気付いたのではないでしょうか。そして、心からの償いに気付いたのではないでしょうか。
その気持ちから、「あなた」の変わってしまった人生を戻してあげて欲しいと頼んでいるのだと思います。
取り返せなくても許すことはできる
手紙の中身はどうでもよかった それよりも
償いきれるはずもない あの人から
返事が来たのが ありがたくて ありがたくて
ありがたくて ありがたくて ありがたくて
出典: https://twitter.com/mimi3463677ssdt/status/626753772971102208
ゆうちゃんは手紙の内容よりも、連絡が来たことを喜んでいます。
見たくも考えたくもないはずの自分に、手紙をくれたということが嬉しかったのでしょう。
償いきれるものでないことがわかっているからこそ、「わずかでも償いになったのでは」と考えたのだと思います。
「ありがたくて」と繰り返されることで、言葉にならないゆうちゃんの気持ちが伝わってくるようです。
神様って 思わず僕は叫んでいた
彼は許されたと思っていいのですか
来月も郵便局へ通うはずの
やさしい人を許してくれて ありがとう
人間って哀しいね
だってみんなやさしい
それが傷つけあって
かばいあって
何だかもらい泣きの涙が
とまらなくて とまらなくて
出典: https://twitter.com/siteki_meigen/status/914736496321503232
ゆうちゃんの罪は償いきれるものではありません。しかし、被害者の妻は彼がこの罪にとらわれずに生きることを望んでいます。
ゆうちゃんのように心から謝り続けることで、相手に気持ちが伝わることもあるのです。誤ちを取り返すことはできませんが、それを許すことはできるのではないでしょうか。
それによって、ゆうちゃんだけでなく、被害者の妻もこの事故の悲しみから前に進むことができるのだと思います。