コブクロ「風」
2002年2月14日リリース
「風」はコブクロの4枚目のシングルであり、2002年2月14日にリリースされました。
作詞・作曲は小渕健太郎が担当しました。昔の恋人を想って制作されたこの楽曲は切ないメロディーに合わせ、過去を慈しみ思い返すような歌詞が乗っていて、心がぎゅっと締めつけられるような感覚に囚われます。
アルバム「grapefruits」に収録
アルバム「grapefruits」は、「風」のリリース後である2002年8月28日にリリースされたコブクロとして通算2枚目のアルバムです。
「風」はこのアルバムの12曲目に収録されました。
他の収録曲としては前シングルの「YOU」や、「風」の後に発売された「願いの詩」など初期のコブクロを支える素晴らしい楽曲が詰まっています。
テレビドラマ「一生忘れない物語」の脚本に起用
歌詞を紐解く
それでは「風」の歌詞を紐解いていきましょう。
思い出と五感がリンクする
薄手のシャツじゃまだ 少し寒い春の
朝の匂いが切ないのは あなたを想い出すから
出典: 風/作詞:小渕健太郎 作曲:小渕健太郎
季節を感じ取れる冒頭部分から始まっていきます。
どの季節かというとそのまま描かれているように春の初めで、まだ冬の名残を感じるような肌寒い気候が描かれています。
また昔の恋人を想って作った楽曲というだけあって、その春の初めの朝の匂いから君のことを思い出しています。
ここから君と別れたのが春の初めであることが分かります。
例えば、昔の恋人が使っていた香水の匂いが街でふっと香って、そこにはいないのにその恋人のことを思い出したり、テレビに思い出の場所が映って記憶がフラッシュバックしたりした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
このように思い出というのは、匂いなど人間の五感ともリンクしているのです。
足早な人波 立ち止まり見上げれば
春のぬくもりが恋しくて 強い風 待ちわびる
出典: 風/作詞:小渕健太郎 作曲:小渕健太郎
そんな季節を感じたのは足早な人波の中。つまり朝の通勤時間帯でしょうか。忙しない日々の中で置き去りにしていた思い出が、さらにぐっと蘇ってきます。
そして、過去を思い出すことで、自分の中の時間がそこで戻ります。本来ならば過ぎていくはずの時間を人波に例え、立ち止まり空を見上げることで昔を思い返している様子を表現しています。
しかし、そんな風に思い返せば思い返すほど、過去を引きずる今の自分の寂しさを強く感じてしまいます。
春は始まりの季節です。新しい恋に進みたい、そのための後押しが欲しいという気持ちを「風」を待ちわびることで言い表しています。
本格的な春を告げる春一番に希望を見出だしたい気持ちが感じ取れます。
舞い上がる花びらに吹かれて あなたと見た春を想う
うつむくまで気付きもしなかった どうしてだろう? 泣いてた…
出典: 風/作詞:小渕健太郎 作曲:小渕健太郎
しかし、待っていたはずの風が吹いてもあなたのことは思い出してしまいます。それだけ昔の恋人であるあなたと季節を重ねてきたことが窺えます。
どんな季節でも、何気ない瞬間やシーンでも、ひとつひとつが大切な思い出なのです。
そんなことを考えていると気付かないうちに涙が溢れ、思い出を振り払うように下を向いたことでそれに気付きます。
自然に涙が溢れるほど、あなたへの想いが強かったことが感じ取れます。