一つの詩のような歌詞

秋田ひろむさんの作る歌詞一つの詩のように感じることがあります。

秋田ひろむさんは読書家で、沢山の本を読んできたのも今の作詞に活きていることでしょう。

普段は少しずつ歌詞を説明していますが、詩のように味わってもらいたいので一気に歌詞を掲載させて頂きます。

木造アパートの一階で 彼は夢中で絵を描いていた
描きたかったのは自分のこと 自分を取り巻く世界のこと
小さな頃から絵が好きだった 理由は皆が褒めてくれるから
でも今じゃ褒めてくれるのは 一緒に暮らしている彼女だけ
でも彼はそれで幸せだった すれ違いの毎日だけど
彼女はいつもの置き手紙 桜模様の便せんが愛しい
気づいたら夜が明けていた 気づいたら日が暮れていた
気づいたら冬が終わってた その日初めて絵が売れた

出典: 無題/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ

状況はすでに変わり始めてた 次の月には彼の絵は全て売れた
変わってくのは いつも風景
誰もが彼の絵を称えてくれた 彼女は嬉しそうに彼にこう言った
「信じてた事 正しかった」

出典: 無題/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ

絵を買ってくれた人達から 時々感謝の手紙を貰った
感謝される覚えもないが 嫌な気がするわけもない
小さな部屋に少しずつ増える 宝物が彼は嬉しかった
いつまでもこんな状況が 続いてくれたら良いと思った
彼はますます絵が好きになった もっと素晴らしい絵を描きたい
描きたいのは自分のこと もっと深い本当の事
最高傑作が出来た 彼女も素敵ねと笑った
誰もが目を背けるような 人のあさましい本性の絵

出典: 無題/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ

誰もが彼の絵に眉をひそめた まるで潮が引くように人々は去った
変わってくのは いつも風景
人々は彼を無能だと嘲る 喧嘩が増えた二人もやがて別れた
信じてた事 間違ってたかな

出典: 無題/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ

木造アパートの一階で 彼は今でも絵を描い手いる
描きたかったのは自分の事 結局空っぽな僕の事
小さな頃から絵が好きだった 理由は今じゃもう分からないよ
褒めてくれる人はもう居ない
増える絵にもう名前などない

気づけばどれくらい月日が過ぎたろう その日久々に一枚の絵が売れた
変わってくのは いつも風景
その買主から手紙が届いた 桜模様の便せんにただ一言
「信じてた事 正しかった」

出典: 無題/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ

秋田ひろむさん自身のこと

筆者はこの楽曲を聴いて、秋田ひろむさんが自分自分のことを歌詞にしたのではないかと思っています。

これまで沢山の絶望を経験して、その絶望を歌詞にしてきました。

なので同じように自分の経験を一人の絵描きに例えて歌っているのでしょう。

秋田ひろむさんとライブハウスのマスター

秋田ひろむさんの人生と、この楽曲に出てくる絵描きを照らし合わせても、全てが一致するわけではありません。

ですが、この絵描きと彼女の関係が、秋田ひろむさんとライブハウスでお世話になっていたマスターの関係に近い気がしました。

秋田ひろむさんはメディアへの出演がほとんど無いので、情報はとても少ないです。

青森にいた頃、ライブハウスでお世話になっていたマスターの元を離れ、上京したものの、結局青森に戻り、マスターの元でお世話になったようです。

この楽曲では、桜模様の便箋に書かれた手紙が出てきて、途中で途切れてしまうものの、同じ便箋で書かれた手紙が返ってくるのです。

筆者にはこの2つの物語がボンヤリと重なっているように見えます。

変わってくのは いつも風景

変わってくのはいつも風景、という歌詞が引っかかりました。自分も変わっていったのでは?と考えてしまいました。

恐らくここでは、秋田ひろむさんの活動拠点が変わったことが歌われているのでしょう。

青森のライブハウスはみんな仲間のようだったそうですが、東京のライブハウスは殺伐としており、みんな敵という感覚だったそうです。それが青森に戻るきっかけの一つにもなったようです。

場所が変われば求められることも変わります。その街に適応しないといけないし、染まらなければ自分が苦しい思いをしてしまいます。

東京に染まらず、変わらずにここまでやってきて、今のような結果を手にしたのかもしれません。

東京でバンドを組んでいた頃の楽曲は、今でもライブで歌われています。強い芯があったからこそブレずに音楽活動を続けてきて、風景を変えることができたのかもしれません。

「無題」

最後にどうしても気になったのが「無題」というタイトルです。ここからは更に深読みになるので、完全に筆者独自の考えです。

普通ならもっとちゃんとしたタイトルをつけるはずです。

歌詞から引用すれば、「宝物」「風景」「最高傑作」などにすると、曲の途中で視聴者の耳を歌詞に引き寄せることが出来るかもしれません。

一番それっぽいものだと「桜模様の便箋」だと思います。最初から最後まで出てくる、この楽曲を理解するためのキーワードになっているはずです。

ですが、この楽曲のタイトルは「無題」です。これは、桜模様の便箋に書かれたタイトルが無かったからではないか、と考えます。

恋人同士だと「〇〇君へ」という1行があったり、感謝の手紙なら「〇〇さんへ」という言葉があってもいいと思います。

ですが、置き手紙でやり取りをしていた関係だったので、毎回それを書くのも煩わしいので何も書いていなかったのでしょう。

最後に主人公の元に届いた手紙は、桜模様の便箋で且つ「無題」だったから、当時の彼女からの手紙だったと理解したのかもしれません。

終わりに


いかがだったでしょうか。amazarashiの「無題」を解説させて頂きました。

歌詞自体は非常に分かりやすいようで、解釈は難しい文学的といえる楽曲でしょう。

YouTubeのコメント欄では様々な解釈が語られています。音楽の解釈は人それぞれですが、他の人の解釈を見てみるもの面白いかもしれませんよ。

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