松任谷由実のトリビュート・アルバムから

「14番目の月」松任谷由実の名曲をスピッツがカヴァー!?歌詞に込められた本当の意味が深い!の画像

ビッグネームが目白押し

スピッツによる松任谷由実の「14番目の月」のカバーは、「Queen's Fellows:yuming 30th anniversary cover album」に収録されています。

このアルバムはいわゆる松任谷由実に対するトリビュート・アルバム

憧れのアーティストに敬意を表して作られたアルバムなんですね。

スピッツの他には、aiko鬼束ちひろ槇原敬之などもの有名アーティストが参加、彼女の曲を歌い上げています。

この「14番目の月」はシングルとしてリリースはされていませんが、独身最後の通算4枚目のアルバム、1976年リリースの「The 14th Moon(14番目の月)」に収められ、アルバムタイトルとなっています。

このアルバムから、1975年に結婚した夫の松任谷正隆がプロデュースを担当。

結婚直後でもあり、ユーミンは実はこのアルバムでの引退を考えていたと言います。

もしこのアルバムを最後にユーミンが引退していたとしたら、数々の名曲は生まれなかったことになるわけで、そんなことを想像するとちょっとゾッとしてしまいますね。

このアルバムでは、それまでのピアノ主体のサウンドから、バンドサウンド中心のサウンドに以降、コーラスには山下達郎も参加しています。

後に数々のミュージシャンによってカバーされる名曲「中央フリーウエイ」もこのアルバムに収められているんです。 

今井美樹のカバーです。ロンドンレコーディングでバックはアシッド・ジャズバンドのインコグニートです。ハイハットに注目!!

天才というにふさわしいデビュー

メロディーメイカーとして稀有な才能

「14番目の月」松任谷由実の名曲をスピッツがカヴァー!?歌詞に込められた本当の意味が深い!の画像

松任谷由実(荒井由実)の音楽シーンへのデビューはまずは作曲家としてでした。

1971年、17歳の時に元ザ・タイガース(阪神...ではなく、グループサウンズのタイガースです(笑)。沢田研二がいました。)の加橋かつみへ書いた曲「愛は突然に...」がその作家デビュー作。

しかもこれは14歳の時の作品というから驚きです。

翌年に、シングル返事はいらない」でシンガーとしてもデビュー。

この曲は商業的には売れませんでしたが、その音楽性の高さが徐々に評価されはじめ、1973年ファーストアルバム「ひこうき雲」で大ブレイク。

ここからシンガーソングライターとしての大活躍が始まります。

彼女の作るポップで都会的なナンバーは、後に夫となる松任谷正隆のハイセンスなアレンジとマッチして、人気を得ます。

知的な言葉を散りばめ、女性の繊細な気持ちを綴った歌詞は彼女ならではの感性。本当に数えきれないくらいの名曲を生み出しています。

あのDREAMS COME TRUEもデビューの時に、彼女をいつか超える存在になりたいと思っていたというのは有名な話ですね。

「14番目の月」松任谷由実の名曲をスピッツがカヴァー!?歌詞に込められた本当の意味が深い!の画像

14番目の月の意味は?

満月の1日前

では、「14番目の月」の歌詞を紐解いてみましょう。

「14番目」というのは、「月齢」を表しています。

月齢とは新月から何日経過したかを表す数字です。

0を新月として、順に付けていきます。

ですから「三日月」は「新月から3日目の月」を表します。

現在では、月齢はその日の正午の時点の月を表すとされているので、新月から数えると小数点が付くのが普通。

だいたい13.8から15.5の間が満月となります。

一方、江戸時代より前、日本では月の動きを基に作られた太陰暦を用いていて、日がそのまま月齢を示していました。

どの月でも15日は満月、よって十五夜と言われていたんですね。

ですから「14番目の月」というのは、その「満月1日前の月」ということになります。

告白前のドキドキ感

あなたの気持が読み切れないもどかしさ
だから ときめくの
愛の告白をしたら最後 そのとたん
終わりが 見える

出典: https://www.uta-net.com/song/2515/

お互いに好きなのに...

恋の始まりは一体どこからなのでしょうか。

恋の始まりはたぶん「自分がだれかを好きと自覚した時」なのかもしれません。

ただし、そこから相思相愛となるまでには、ちょっと長い道のりがありそうです。

もちろん、それは時と場合で違うでしょう。

あっという間に2人で恋に落ちてしまうこともあるでしょうし、お互い思いあっているのに、なかなか気持ちが伝わらないということだってあります。

「あなたの気持ちが読み切れない」、それがもどかしいという言い方で、そのシチュエーションが伝わってきます。

これは「彼は私にたぶん好意を持ってもらっているとは思うけれど、でも本当に好きだと思ってくれているんだろうか、それがよくわからない」という状態なのでしょう。

ここが一番ドキドキする瞬間で、だからときめくとユーミンは歌います。

いわば告白する、もしくは告白される寸前の状態。

こういう微妙な心理状態を鋭く切りとるの才能はさすがだと思います。

ハッピーの少し手前がいい

インドの故事から

1976年に公開された木下恵介監督作品の「スリランカの愛と別れ」という映画があります。

その中で「インドでは、(満月より)14番目の月が好まれる」というセリフが出てくるのですが、そのセリフを映画雑誌で見たユーミンがインスパイアされ、出来たのがこの曲だとも言われています。

「次の日から欠けてしまう満月より、14番目の月の方がいい。」

これはもっと明日は素敵になれるというポジティブな歌と取りたいですね。

満月はもうそれ以上満ちることはありません。あとは欠けていくしかないんですね。

ならば、そのひとつ前の14番目の月の状態が一番いい。

まだ決してゴールではないけれど、ゴールに向かっているところが一番いい。

これは恋に限らず、人生の真理なのかもしれないですね。