カシオペアが輝く恋人たちの街

北風は吹雪くのを止め カシオペア輝いて
恋人たちは寄り添って 静かに歌うのでした

出典: 銀河鉄道の夜/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸

北風とカシオペアのイメージから、冬の風景が描き出されます。

北風は風をモチーフに描かれた童話「風の又三郎」を。

冬の星座カシオペアは童話「よだかの星」に関連があるモチーフです。

宮沢賢治の世界を歌の中に描き出しながら、歌詞は恋人たちを描きます。

「恋人たち」は寄り添って大切な人と共にいるのです。

静かで穏やかな、満たされたイメージが伝わってきます。

死のイメージに満ちた世界で、恋人たちは寄り添って共に生きていることができているのです。

鉄道は東北を目指す

青白い夜へ

声 高円寺に消え やがて汽笛は響き
噛む カムチャッカのガム 蒼白く甘い夜

出典: 銀河鉄道の夜/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸

「こえ」、「かむ」の音を繰り返し韻を踏む一節。

高円寺が出てくることから、今「僕」がいる場所は東京であることがわかります。

そこからイメージは広がり、列車のベルに重なるかのように聞こえる汽笛。

カムチャッカはロシアのカムチャッカ半島を指しており、ここにも北のイメージが垣間見えます。

かつてはアイヌの人々が暮らしていたこともあるカムチャッカ半島。

そんな北の風景を思いながら噛むガムは甘く、「僕」は青白い夜を見つめます。

「青白い」は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にも見られる表現。

深い青と輝く星のイメージを伝えています。

「銀河鉄道の夜」には銀杏の並木も出てきており、青白く透明感に満ちた美しい風景です。

宮沢賢治の故郷「岩手」

シベリア鉄道 乗り換え 東北を目指します
ハロー 今 君に 素晴らしい世界が見えますか

出典: 銀河鉄道の夜/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸

カムチャッカ半島のイメージからシベリア鉄道へとイメージが繋がります。

シベリア鉄道はロシアを横断する世界一長い鉄道で、長い旅のイメージを伝えるものです。

そして向かうのは東北。

東北といえば宮沢賢治の故郷、岩手が思い起こされます。

宮沢賢治の作品で登場する「イーハトーブ」は、岩手を表現する言葉。

長い鉄道を乗り換え「僕」の空想は賢治の作品世界イーハトーブに向かうのです。

そして、「君」に呼びかける「僕」。

空想に思いを重ねながら、「僕」は何度も「君」に呼びかけます。

空の向こうへ歌う歌

今は亡きあなたに贈る

銀河鉄道の夜
僕はもう空の向こう 飛び立ってしまいたい あなたを
銀河鉄道の夜
僕はもう空の向こう 飛び立ってしまいたい
あなたを想いながら

出典: 銀河鉄道の夜/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸

サビの部分です。

ここで言葉として「銀河鉄道の夜」が歌われています。

空の向こうを思う「僕」。

空の向こうはここではない場所、離れた場所と解釈することもできます。

ですが「銀河鉄道の夜」というモチーフが描かれていることを意識してみましょう。

童話の内容を踏まえると、おそらくこの空の向こうとは死んでしまった人のいる場所

天国や死後の世界といった場所を思っていると解釈できます。

「僕」は「あなた」を想いながら、そこへ行きたいと願うのです。

おそらく「あなた」は「僕」を残して亡くなったのでしょう。

「僕」はそんな「あなた」を思い出し、会いたいと願うのです。

童話でカムパネルラがジョバンニを残して逝ってしまったように。

バースデーカード」で、母が紀子を残して逝ってしまったように…と。

もう会うことができない、亡くなってしまった大切な「あなた」。

「僕」はそんな人を想い、純情を叫ぶのです。

大切で恋い焦がれながら、もう会うことのできない誰か。

そんな人を思う純情が星空のイメージと共に、痛いほどに伝わってくるサビです。

星めぐりの口笛とひとり