作詞者中山の実体験を歌った曲
10枚目シングル 初バラード
プリンセスプリンセス10枚目のシングル【ジュリアン】は1990年にリリースされました。
それまでアップテンポでノリのいい曲をリリースしてきたプリプリ。
がらりと異なる曲調に、驚いたファンも多いことでしょう。
同時に、こんな世界観の曲も歌えるんだということを見せつけた1曲にもなりました。
作詞はギター担当の中山加奈子。
実は本曲は、中山の当時の恋を歌ったものでした。
ラブレターを読み上げているような歌詞
中山はこの曲を作詞した際、ラブレターを書くようなつもりで書き上げたと言っています。
ラブレターって、思いを相手に伝えるための1番の手段ではないでしょうか。
他人にはみせない分ストレートに、ときにはちょっと大胆な内容になることもあるでしょう。
本曲も、本人を目の前にして口にだすことができなかった言葉の数々がしたためられています。
薄れゆく記憶を書き留めるように綴られた歌詞を、順番に解説していきましょう。
ジュリアンとは
ジュリアンとは誰のことを指すのか
まず初めに曲のタイトルであり歌詞にも何度も登場する"ジュリアン"とは一体誰を指すのかを考えてみましょう。
まるでおとぎ話に出てくる王子様のようなネーミング。
作詞者の中山は自身のブログで、逃げたまま帰ってこない飼い猫の名前がジュリアンだったことを明かしています。
共同生活をしていた合宿所で、メンバー全員がその猫をかわいがっていたそうです。
そんなこともあり、詞に奥居香が曲付けする際、なんとなくジュリアンと口ずさんだ。
そうしたら、それがそのまま歌になったらしいのです。
つまりなんとなく鼻歌的に出てきたのがジュリアンで、具体的な人物名ではないということですね。
しかし、であるからこそジュリアンの部分には、聴く人、歌う人が自分の思う人物名を当て込むことができます。
そのことは、よりこの歌の世界に聴く人自身を投影し易くしているともいえるのではないでしょうか。
ジュリアンへの回想
ジュリアン あなたの笑顔は 日ごとにそっと
にじんでゆくのに あいたさは ただつのるばかりで
ジュリアン せめて夢の中 姿を見せて
あなたのことだけで 心があふれてしまいそう
出典: ジュリアン/作詞:中山加奈子 作曲:奥居香
想いを秘めたまま、もう随分の月日が経つようです。
想い人の笑顔すら、はっきりとは思い出せなくなっています。
それなのに会いたいという気持ちはちっとも薄れていません。
それどころか会えないということが、余計会いたさを増幅させているようです。
人間、だめといわれると余計そのことばかり考えてしまうのですね。
悪い習性です。でも仕方ありません、長年恋焦がれた人だから。
何をしていても、その人のことで頭が一杯になってしまい他のことは手につきません。
それどころか、現実の世界で会えないから、夢に出てきて欲しいとまで願っています。
切ないフレーズがてんこ盛り
何もできないもどかしさ
何もできないままで 時間だけが過ぎてゆく
出典: ジュリアン/作詞:中山加奈子 作曲:奥居香
この短い一文に注目してみましょう。
前のフレーズまででは、ふたりの関係はあまりはっきりしませんでした。
彼と別れてしまった彼女が、まだ未練たらたらに彼への思いを綴っている。
または、告白はしたものの見事に振られてしまった彼女の、諦めきれない心情を描いているとも考えられます。
でもこの一文で状況はハッキリしました。
彼女は彼に対して全く何も気持ちを伝えていない、できていないのです。
ただ遠くから見つめるだけ、それでどんどん時間だけが経ってしまったのでしょう。