平沢進の世界
P-MODELの時代
多彩な活動で注目される平沢進さんですが、長い音楽のキャリアの中で大きくわけるとふたつの時代があります。
1970年代からのマンドレイクやP-MODELといったバンド活動の時代とソロ活動の時代にわけられますね。
活動を開始された時期はメロトロンというアナログシンセサイザーを使ったプログレなどの流行った時期でした。
日本でもいち早く取り入れられていたようです。
1980年代になるとコンピューターグラフィックスのプロモーションと共にテクノポップの実験的作品が続きます。
New waveといった言葉も流行りました。
テクノポップは日本でも流行しYMOなどがよく知られています。
平沢進ソロの時代
1990年頃からソロ活動も始められ活動のフィールドを広げられています。
一方で核P-MODERLの活動も始められました。
映画やアニメのサウンドトラックなども数多く手掛けられていて若い世代にもファンは多いです。
Twitterフォロワー数も多いことで有名ですね。
サカナクションのように影響を受けているアーティストも多いのではないでしょうか。
歌詞の独特な言葉選びや音楽性だけでなく、どこか飄々とした風貌も人気の秘密かもしれません。
不思議なネーミングのTESLAKITE(テスラカイト)は平沢進さんのオンラインショップです。
TESLAKITEのロゴマークの秘密も是非調べてみてください。
1995年にリリースされた楽曲「Lotus」はアルバム「SIM CITY」に収録されています。
タイ王国での経験がインスピレーションとなった平沢進名義の5枚目のアルバムです。
アジアを設定したコンセプトアルバムとなっています。
歌詞考察
闇の時間
かたくなに夜は来て はるか道の上
キミがまた歌う時 胸は急いでゆく
変わらないものをたずね 明日は生きる日と
あの日から見えていた キミに咲くロータスよ
出典: Lotus/作詞:平沢進 作曲:平沢進
目を瞑り暗闇の中で迎える夜は記憶だけの世界です。
諦め切れない気持ちがよけいに闇を固くします。
繰り返される夜に唯一の闇でないものもこの記憶だけです。
私が「キミ」に会えるのもこの時だけなのです。
早く会いたいと思っても時は同じように流れていきます。
この世のサイクルはただ平然と繰り返されるだけなのです。
朝が来ることは闇の時間を抜けた安堵の気持ちと別れの寂しさに満たされます。
朝が来て今日を生きることを誓ってもすべては変わることはありません。
いつか「キミ」がいなくなってしまうだろうこと。
こうなることはわかっていたのかもしれません。
「Lotus」はギリシャ神話では誘惑の花として捉えられていますが、私達には水蓮のイメージが強いですね。
水蓮は極楽浄土に咲く花ともいわれていますので「キミ」はもうこの世にはいないのかも知れません。
私がこれからも生きるために「Lotus」の花となった「キミ」を思うのでしょうか。
夢の中で待つ人
とめどなく夢に見る まだ見えぬ場所へ
夜をまたくぐる時 キミは生まれていた
人知れず道に降る 雨の水に似て
キミがまた眠るとき 夢に咲くロータスよ
出典: Lotus/作詞:平沢進 作曲:平沢進
平沢進さんはよくこの「キミ」という言葉を使われますがこのことにも意味があるようです。
「君」より広い意味で性別を超えた人を指しているようにも思えます。
また君主的な意味とも違うという細やかな気遣いかも知れません。
夜を越えていく中で繰り返し見る夢はとても辛いものではないでしょうか。
「キミ」のいる世界はまだ誰も見たことのない世界です。
無から生まれ無に戻って行った「キミ」を心に描きます。
無数の雨音の中で弾ける水滴にもひとつひとつに命があるように思えるのかもしれません。
水蓮には自浄の意味もありますし雨の降った後にもより美しく咲くのでしょう。
とても意味深い歌詞だと思います。
遠い眠り
キミまだ眠り深く 夢見て見晴らす
あの日から見えていた キミに咲くロータスよ
出典: Lotus/作詞:平沢進 作曲:平沢進
夜の闇が深ければ深いほど「キミ」の眠りは私からより遠くに離れていきます。
ですが消えていくという意味ではありません。
「キミ」の思い出は数珠つなぎのように増え、より鮮明になっていくのです。
思い出の途切れた朝は真っ青に晴れ上がる空さえ寂しく感じます。
そして「キミ」の運命を知っていたかのように「Lotus」は自分の力で咲くのです。