みんなと一緒にいる時の
あなたは誰にでも優しくて
なんか急に寂しくなる時があるの
やっと二人きりになれたのに
そっけないフリをしてしまうのは
胸に芽生えた初めてのジェラシーのせい
出典: ポツリと/作詞:中島卓偉 作曲:中島卓偉
本心とは裏腹な態度をとってしまうのも、恋愛あるあるかもしれません。
「好き」という気持ちは変わらないのに、それ以外では心が揺れ動き、目まぐるしく変化します。
それを衣装チェンジによって表現するのはMVの常套手段。
しかし「ポツリと」のMVではそれがありません。しかも色調はモノトーンです。
切ない楽曲だから色味を抑えた、あるいは派手さを抑えたというのがひとつの理由でしょう。
伝えたいものを引き立てるため!
もうひとつの理由として、衣装以外に引き立てたいものがあったのだと考えられます。
それは、メンバーの表情です。
歌詞に合わせて切なげな顔やかすかな笑み、沈んだ様子など細かく表現されています。
見せたいものを引き立てるために、他の印象をぐっと抑え込んでいるのでしょう。
その代わりメイクは少し濃い目になされています。
もちろん色味は少ないのですがコントラストが強く、表情をはっきりと浮かび上がらせるのです。
実は「音」にもこだわりが
引き立てたいもののために他を抑える、という手法はこの曲の「音」にも採用されています。
A〜Bメロをじっくり聴いてみると、同じ音が連続していることに気付きませんか?
音の動きが最小限に抑えられ、逆に引き立てられるのが「歌詞」なのです。
言葉数が多いA〜Bの歌詞をしっかりリスナーに届けたいという思いを感じます。
整列して踊る意味
A〜Bメロではまるで映画のシーンのように個々がバラバラに動いています。
サビに入ると全員でダンスをする、という流れが繰り返されるこの楽曲。
もちろんラストの大サビも全員が踊るのですが、各サビの映像を見ていて何かに気付きませんか?
大サビだけが「整列」をしているのです。
強い訴えを表現
例えば2番のサビでは大きく2つのグループに別れ、それぞれ真逆を向くような形で踊っています。
そして個々の視線はバラバラ。ダンスは揃っているのですが、衣装の違いも手伝って統一感はありません。
それが大サビに入るとどうでしょうか。
サビフレーズの2巡目からメンバーは宮崎由加を中心としてV字に整列するのです。
歌詞はそれまでのサビから変化がありませんが、メンバーが整列するだけで歌詞の印象が変わります。
ポツリと ただ そばにいるのに
誰よりも 近くで
ポツリと ただ 見つめてるのに
「好き」って一言が 言えない
出典: ポツリと/作詞:中島卓偉 作曲:中島卓偉
メンバーが別々の方を向いて歌っていたときの印象は、本当に「ポツリ」でした。
気持ちを素直に口に出せたら良いけれど、うまくはいきません。
歯痒さを押し殺し、ひとりで苦しんでいる姿をメンバーが表現しているように感じます。
しかし整列したときの印象は心の叫び。「どうにかしたい!」と体全体で訴えているのです。
全員が同じ方を向いて同じ気持ちを訴えている光景。
リスナーに対する「私もあなたも同じ気持ちを抱えているんだよ」というメンバーの訴えが読み取れます。
V+1=不安定?
V字に並んだとき、バラバラだった衣装に意味があったことに気付きます。
宮崎由加を中心に衣装のデザインが左右対称になっているのです。
アシンメトリーなカットが施されている衣装が、より分かりやすいですね。
そして向かって左は3人、右は4人というアンバランスさ。
女性の心の不安定さを表しているのではないでしょうか。
不安定な中でも自分の思いをどうにかして強く押し出そうとしているのです。
矛盾を表現した世界観
「矛盾」を楽曲に取り入れる
甘いスイカに塩をかけたり、辛いカレーにハチミツを入れたり。
一見矛盾するエッセンスを加えることで味が深まるという現象を誰しも体験したことがあるでしょう。
- 寂しい恋心を歌っているのにアップテンポ
- 移ろう心を歌っているのにモノトーンの衣装