野菜を切る時に映し出された包丁の動き。
それとともに一瞬、過去の記憶が蘇ります。
まず映し出されるのは「食卓」の風景。
中央に大皿があり、取り皿が4つ置かれています。
テーブル1つに対して椅子は3つありますね。
ここまでの映像で少女は一人で食事をしている様子でした。
でも過去には、一緒に過ごしていた「誰か」がいたことがうかがえます。
そして映し出される「開いたドア」。
ドアの横に薄っすら人の足のようなものが見えます。
体操座りをしてうなだれているよう。
これは幼い少女の姿なのかもしれません。
一緒に生活していた誰かが去ってしまった…という悲しい経験が推測できます。
時計が回り出す
辛い経験を回想した後、コンピュータールームはショートしてしまったようです。
そして急速に回り出す時計の針。
最初の方で描写されていた「淡々と過ぎる日々」に変化が訪れたことがうかがえます。
少女は過去の辛い経験を受けた時から、自分の中の時間が止まっていたのではないでしょうか。
ところが過去を直視し、受け入れることができたから、ようやく時間は回り出した。
急速に回る時計は、今まで止まっていた時間が一気に動き出したからグルグルと回転しているのです。
歌詞もチェック
生きている実感
工場の煙で止まりますのボタン
知らない所に降りたった途端
ミルクとコンクリートで出来た猫が
私の毒をみて鳴いてくれた
買い物袋から はみ出たネギに
ポイ捨てされた銀色のトレーナーに
スカスカでとろい脳みそを
不安で満たしても腹減るよ
出典: 眩しいDNAだけ/作詞:ACAね 作曲:ACAね
何気ない日常の一場面が、独特な描写で「混沌とした雰囲気」に色づけられています。
自分の中に湧き上がる「毒」に猫が気が付く。
そして脳内に満ちた「不安」。
これらの表現からは胸の内に秘めた「闇」の存在が伝わってきます。
普段通りの段取り 熟して小慣れて
繰り返して演じるほど
遠ざかるみたい 茹で上がってない
肌に泡を汚すみたい
色が吸えない 味も読めない
孤独が眩しすぎてるほどのDNA
誰も立てないほどの生き映え
出典: 眩しいDNAだけ/作詞:ACAね 作曲:ACAね
少女は毎日何かを「演じて」生きているようです。
生きてはいるけど、生きている実感は湧かないような…。
「充実感」や「幸福感」に欠けた毎日であることがうかがえます。
何かを変えたい
まだ迷ってしまうけど 街灯がない道だけど
届かない呼吸だけ 有り余る
このまま反射しても
何も変わりゃしないことも
過ぎって蔓延るよ
今は傷つくことも願ってる
見たことない光を望むなら
出典: 眩しいDNAだけ/作詞:ACAね 作曲:ACAね
淡々と過ごす毎日の中で、少女は「光」を求めています。
このまま同じように生きていたって何も変わらない。
それに気が付き、傷ついてもいいから何か行動を起こしたいと願っているのです。
過去のショック
犠牲にしたって本心だけ
誰もわからず乏しい罠
分類したって自尊心は もう
薄暗い朝に委ねるだけ
時々たまに従うまま
シナリオ通りに暮らしてゆくなら
悩み方も何も知り得ずに頷くだけ
ビリビリに破り始めるだけ 今なら
今ならなだけ
出典: 眩しいDNAだけ/作詞:ACAね 作曲:ACAね
失われた自尊心により、自分の意思が希薄になっている様子が読み取れます。
考えることを放棄して生きている毎日。
どうしてこれほどまでに心が麻痺してしまったのか…。
それは、MVの解釈で見た「痛烈な過去」によるショックが原因なのかもしれません。
あまりに強い「悲しみ」や「怒り」を経験したとき、人は自分の感情を抑制してしまいます。
そうして「低い自尊心」や「希薄な感情」ができあがってしまうのです。
でも少女は「今」何かを変えたいと願っていますね。