「オールナイトニッポン」から生まれたコラボ楽曲
HIP-HOPユニット「Creepy Nuts」と俳優「菅田将暉」。
「サントラ」はこの一見全くジャンルの違う両者によるコラボレーション楽曲です。
R-指定の研ぎ澄まされたリリックとラップ、菅田の情感溢れる魂の歌声。
その両者をDJ松永の疾走感溢れるフロウが繋ぐ、熱量の溢れるナンバーです。
一見意外な組み合わせに見える両者をつないだのはラジオ番組「オールナイトニッポン」でした。
きっかけは「菅田将暉のオールナイトニッポン」での菅田のちょっとしたミス。
それが「Creepy Nutsのオールナイトニッポン0」でのR-指定のミスと同じだった事から交流が始まりました。
互いの番組へのゲスト出演やプライベートの交流を通し、一年を経てついに完成した一曲。
それはコラボ楽曲の枠に留まらない、今を生き夢を追う全ての人へ送る熱いナンバーとなりました。
生身の人間が「物語」に追いつく理由と想いとは何か。
苦しみながらも想いを滾らせ表現し続ける在り方を、歌詞から紐解いていきます。
「ラッパー」と「俳優」という仕事
ラッパーと俳優という仕事のリアル
悩み事 隠し事 私事だらけを書く仕事
悩み事 隠し事 のみこんで笑顔でやる仕事
目の前の白紙ごと 塗りつぶす想いを吐く仕事
泣く仕事 笑う仕事 自分じゃない誰かになる仕事
出典: サントラ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永
静かに淡々と呟くようなR-指定のラップから歌は始まります。
描かれていくのは「ラッパー」と「俳優」という特殊な仕事の在り方。
自分の悩みやプライベートをリリックに叩きつけ、リアルな生き様を紡いでいくラッパー。
対して自分という人間の内面を飲み込み隠して、別の人間という役になりきる俳優。
そんなラッパーR-指定の生き様と、俳優菅田将暉の生き様が交互に描かれます。
傾奇者 お尋ね者 なれずに何故か もがく仕事
あらぬ事よからぬ事かきたてられ心底病む仕事
いくつもの言の葉を紡ぎやっと一つ伝わる仕事
言葉すら不要 目の動き一つ全て伝えてしまう仕事
出典: サントラ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永
HIP-HOPシーンでは時に「社会の規範を外れるヤツ」の方が憧れを呼びます。
派手に装って傾奇者になりきることもできない、非行歴などで警察に捕まったことがあるわけでもない。
そうしたごく普通な生き様から生まれるリアルを、リリックを追求する。
それがR-指定の「ラップを作ること」という仕事です。
それはいくつもの言葉の韻を踏み、意味を込めてやっとひとつの想いが伝えられる仕事なのです。
一方、役者というのは多くの人目に晒され続ける仕事。
マスコミや週刊誌、SNSでありもしないプライベートから批判や悪口まで書き立てられる。
同時に答えのない演技という仕事は、先の見えない不安を掻き立てる仕事でもあります。
そんな無責任な周囲の目、試行錯誤する自分の目。
そんなたくさんの目に耐えながら俳優は舞台へと立ち続けます。
それはひとつの言葉も使わずに、僅かな目の動きひとつで全ての想いを伝える仕事。
ここでも交互に「ラッパー」と「役者」の仕事のリアルが描かれています。
華々しさとは裏腹にいくつもの思いや苦悩を抱えて進む。
そんな生き方を選んだ者たちの内心が伝わってきます。
ただ一つ「感情」を生み出すために
自分を正当化する仕事 自分を過大評価する仕事
大勢の他人を蹴落してでも 自分を認めさせる仕事
泣かせる仕事 笑わせる仕事
見たお前が勝手に重ねる仕事
ヒトの感情以外は何一つ生み出さぬ仕事
出典: サントラ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永
一転、ここからは「ラッパー」にも「俳優」にも共通するリアルが描かれます。
それは「表現者」として仕事をする人すべてに当てはまる思いと苦しみ。
自分の作ってきたものは正しいと自分を正当化する。
来た仕事を過大評価した自信で「できます!」と主張する。
オーディションで、コンテストやランキングで他の人間を蹴落とし自分が選ばれることに必死になる。
本来、自分にそれほどの自信がある人は多くはないでしょう。
けれど不安を押し殺し虚勢を張っても、自分が一番だと言ってみせなくてはならない。
そうしないと誰も自分の表現に注目してくれないからです。
その仕事とは何か。
涙や笑いを呼び、時にはそれに感情移入して夢中になる。
地図にも残らず腹も膨れず、人の命も救うことができない。
けれど強烈に人間の心を揺さぶるために全てを尽くす。
それがラッパーであり俳優であり、表現者である人間の仕事なのです。
物語の外側に追いつくために
生身の人間と創作作品の間にある溝
映画みたいな生まれ育ちや
ドラマみたいな過去じゃ無くても
華々しく照らしてくれ ありふれた生き様を
出典: サントラ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永
ほとんどの人がそうであるように、表現者はただの人間です。
ヒーローでもラスボスでもなければ、天才でも謎めいた存在でもない。
多くはごくありふれて生まれ、ごくありふれた育ち方をして生きてきた生身の人間です。
毎日朝起きて食事をし、仕事をして帰って眠る。
笑うことも傷つくことも落ち込むことも当たり前のようにある存在です。
そんなありふれた生身の体で普通の人間として生きる。
華はなく、苦労ばかりかもしれない。
それでもそんな人生をライトで照らすように称賛する想いが伝わってきます。