リアルな若者の姿を描く
羊文学【ハイウェイ】
2012年より本格的に活動を開始したバンド、羊文学。
今回は2ndEP『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』に収録された【ハイウェイ】をご紹介します。
「道路」を意味する言葉がタイトルの本楽曲は、何を伝えたかったのでしょうか。
この楽曲が生み出されたとき、羊文学のメンバーは20歳前後でした。
ボーカルの塩塚モエカさんが綴った歌詞からは、等身大の若者の姿が感じられます。
人はなぜ走っているのか。自身の恐怖心を隠そうとしたのはなぜか。そしてどこへ向かってゆくのか。
若者が必死に走り抜けていく様子が思い浮かぶ、そんな楽曲【ハイウェイ】を徹底解釈していきましょう。
中村佳代監督のMVにも注目!
進む道の途中で
時に迷子になるけれど
随分と長く僕ら走っていたけど
それでどこへ来たんだろう
出典: ハイウェイ/作詞:塩塚モエカ 作曲:塩塚モエカ
主人公は「僕」。ただし、ここでは「僕ら」と複数形で綴られていますね。
羊文学と同世代の若者たちだと考えられますが、きっと若者に限らず同じ想いを抱える人全てを指すのでしょう。
自分の目標、目的に向かって進んでいくことを「走る」と表現しています。
走ってみたはいいものの、その目的地はまだ明かされていません。走っている「僕ら」もわかっていないのです。
コンビニさえ輝く
コンビニの明かりがやけに眩しく映る
知らない町の夜
出典: ハイウェイ/作詞:塩塚モエカ 作曲:塩塚モエカ
都心部にいれば、夜になってもあまり暗さを感じることはないかもしれません。
ビルの明かり、ネオン、街灯…人々や道を照らす光に溢れているからです。
自分自身の目標や目的がわかっており、どう進むべきか理解できている状況がまさにこれですね。
しかし街の中心部を外れると、突然暗闇に包まれる。
抜け出せない闇の中に迷い込んでしまったような感覚を覚えるでしょう。
時に自身の迷いだったり、時に周囲からの誘惑だったり、目標までの道から外れてしまった状態を表現しています。
もし迷っても、それが1度でも訪れたことのある場所ならすぐ元の道に戻れるでしょう。
ただこれが、もし右も左もわからない土地だとしたら?元の道に戻れないほど脇道に逸れていたとしたら?
夜の闇は人々の恐怖を煽るのです。
そんな中で唯一見つけたコンビニは、まさに人々の目標や目的を思い出させる希望。
明るい場所にいたときには、コンビニの明かりに感謝することなどないでしょう。
それは人々にとって当たり前に存在しているからです。
目標に向かう時も同じ。きっと叶えるための希望や支えは、いつでも自分の周りに溢れています。
しかし道が見えているときには気がつくことができません。暗くなってからはじめて、その存在に気がつくのです。
恐怖に支配された心を溶かし、また前向きさを取り戻させてくれる。
コンビニはそんな希望の象徴でした。
進んでいる道を逸れることは
簡単なこと
逃げんのはそう簡単で
傷つかないだろう
出典: ハイウェイ/作詞:塩塚モエカ 作曲:塩塚モエカ