思い出す君
初めて呼んだ君の名前 振り向いたあの顔
それだけでなんか嬉しくて 急いで閉じ込めた
あのね本当はね あの時言えなかったことを
あとがきに書いても 意味不明な2人の話
出典: 栞/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
つき合いだしたばかりの頃に主人公は思いを馳せています。
相手を名字ではなく初めて名前で呼ぶときのときめきや緊張は忘れられないですよね。
振り向いた彼女の顔はちょっと驚きつつ、テレくさそうだったりして。
2人が「ふふっ」と笑い合った姿が想像できます。
「閉じ込めた」は心の中に刻みつけたのか、実際腕の中に閉じ込めた(ハグした)のか……。
どちらにも考えられます。
主人公は始まったときから2人の未来を考えていて、そのことを何か言いたかったのかもしれません。
例えば「ずっとそばにいるから」というような……。
でもまだ気が早いな、と思い直して言うのをやめてしまったのでしょう。
別れることになった今となってはもう「一生伝えられない言葉」になってしまった無念さが見えます。
今さら気づくこと
ありがちで退屈などこにでもある続きが
開いたら落ちてひらひらと風に舞う
迷っても 止まっても いつも今を教えてくれた栞
ありがちで退屈などこにでもある続きが
終わってからわかっても遅いのにな
うつむいてるくらいがちょうどいい
地面に泣いてる
出典: 栞/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
当たり前のように2人でいる日常。変わり映えしなくて退屈に感じた時期もあったのでしょう。
そんな驕(おご)りが積み重なり、花びらが散るように離れていった彼女の心……。
主人公が悩んでいるときに支えてくれたのは彼女だったと、今さら思い出しています。
彼女から告げられた「別れ」。言われて初めて主人公は思い知っています。
彼女がいつもいる日常の大切さとかけがえなさ。
悔しくて自分が情けなくて、顔を上げることができません。
時間がきて、彼女はその場から立ち去ります。
主人公は堪えていた涙が溢れ出します。地面の桜の上にいくつもの涙が落ちているのでしょう。
今はまだ悲しくても
この気持ちもいつか 手軽に持ち運べる文庫になって
懐かしくなるから それまでは待って地面に水をやる
出典: 栞/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
悲しくて苦しくて、やるせない。後悔ばかりが押し寄せてきます。
でも主人公は必死に思います。彼女の選択を祝ってあげたい。
そのためには、2人のことを早くいい思い出にしなくちゃいけない。
この心の重さは時間が経てばきっと、文庫本くらい軽くなるさと精一杯強がっています。
そんな風にいつか「懐かしいな……」と振り返ることができる日を願いつつ。
だけど今すぐには無理だから、今日だけは泣かせて。
恋人を笑顔と冗談交じりに送り出した主人公の思いやりが切ないですね。
小説家・尾崎世界観
マルチな才能を見せる尾崎さんは小説家としての一面も持っています。
2017年に出版された小説「祐介」は、度々メディアで話題にのぼっていました。
売れないバンドマンの焦燥を描いた内容は「尾崎世界観の自伝的小説」と言われています。
ただ、尾崎さんの独特な感性から、賛否両論のようです。
「芥川賞に選ばれても不思議ではない傑作!」
「勧められて読んだけど全然進まない……」
普段から読書をする方には刺激となりますが、本を読みなれない方には難しく感じるようです。
でも夢があるけど上手くいかない……という方なら共感できる部分があると思います。
FM802×TSUTAYA ACCESS!
冒頭にも書きましたが、この曲は「FM802×TSUTAYA ACCESS!」のキャンペーンソングです。
大阪のラジオ局FM802とTSUTAYAがコラボして新生活を始める人へ贈られる曲です。
ラジオというメディアはパーソナリティとリスナーの距離がとても近く感じられますよね。
FM802は「ラジオだからこそ人との繋がりが感じられる」と考えています。
そして「新しい音楽との出会い」もラジオの大切な役割だと。
キャンペーンのサイトでは6人バージョンの「栞」が公開されました。
もうひとつの「栞」
【参加アーティスト・50音順】
あいみょん
尾崎 世界観(クリープハイプ)
片岡 健太(sumika)
GEN(04 Limited Sazabys)、
斎藤 宏介(UNISON SQUARE GARDEN)
スガ シカオ
出典: https://www.tsutaya-ltd.co.jp/news/2018/0423_fm802tsutaya-access-428tsutayacd.html