松田聖子の決断が奇跡を起こす
東京の大人たちは松田聖子のデビュー時期を、地元の高校を卒業してからと考えていました。
しかし松田聖子本人の意気込みは、大人たちを越えていたのです。
彼女はすぐに上京して堀越高校に編入。
ちょうどいいタイミングで募集がかかったドラマ出演の選考に合格しました。
もし地元の高校に残っていたら、このチャンスは掴めなかったわけです。
CM出演を断られた理由
ドラマと同時期に開催されたのが「エクボ」のCMオーディションです。
当時は可愛いアイドルのトレードマークだったエクボですが、なんと松田聖子にはエクボができないのです!
エクボができるアイドルの起用を前提にしたCMですから、松田聖子は不合格となりました。
しかし歌声や歌唱力が認められ、CMソングのみを引き受けることに。
その際に「エクボの季節」というタイトルだったものが「裸足の季節」に変更されました。
タイトルを変更してでも彼女に歌ってほしかった、ということですね。
この頃は国民的アイドル・山口百恵が引退し、事務所ではプッシュ中のアイドルが不振。
抜けてしまった穴を埋める存在や、事務所の顔が欲しい時期に松田聖子が上京したのです。
上京のタイミングが少しでも先延ばしになっていたら状況は違っていたでしょう。
彼女の決断が多くの奇跡を引き寄せたといえます。
「裸足の季節」に隠されたエクボの秘密とは?
タイトルは「エクボの季節」から「裸足の季節」に変更されました。
しかし歌詞の中には「エクボ」という単語が残ったまま。
松田聖子が歌うと、まるで他人の恋愛を歌っているような気がしてしまいますね。
それでは「裸足の季節」の歌詞に描かれた物語を紐解いていきましょう。
白いヨットの影 渚をすべり
入江に近づくの 手を振るあなた
夢の中のこととわかっていても
思い切りこたえる私です
出典: 裸足の季節/作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎
なんだ、夢なのか!といきなり出鼻をくじく歌詞ですね。
私自身「これは夢なんだ」と認識しながら夢を見た経験は何度もあります。
大好きな彼がヨットで近づいてきて、こちらに気づいて手を振ってくれる。
ということはヨットの存在、彼の存在に先に気づいたのは彼女の方。
ですから、気づいた時点で彼の名を叫んで手を振って、アピールしてもよかったはずです。
でも彼女は彼が自分に気づいて手を振ってくれるのを待っていた、と読み取れます。
「これは夢」とどこか冷めているくせに、100%の力で手を振り返す彼女。
演技、ぶりっ子、そんな単語が頭をよぎってしまいました。
実際は、夢と分かっていても彼を見ると心がときめいてしまう、という意味合いなのでしょう。
エクボの秘密あげたいわ
もぎたての青い風
頬をそめて今走り出す私
二人ひとつのシルエット
出典: 裸足の季節/作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎
エクボができるということは、笑顔になっている証拠です。
彼に会うと嬉しくて楽しくて、思わず笑顔になるということでしょうか。
幸せだということは恥ずかしくて口に出せないけれど、このエクボが証拠なの!というイメージかと思います。
青い風は青春、始まったばかりの恋を連想させますね。
彼のもとに駆け寄り、2人の影が1つに重なった描写で締めくくります。
しかし、夢の中だということを忘れずに。
誘われた映画はまぶしすぎたの
背のびする季節と言われたけれど
ハラハラし通しのエピローグには
思わずうつむいた私です
出典: 裸足の季節/作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎
2人で観に行った映画は、彼がセレクトしたもの。
「背のびする季節」は大人に憧れている頃という意味にとらえました。
彼女が今まで見たことがないような、少し大人びた内容の映画だったのでしょう。
見ていられずに下を向いてしまいました。
「思わず」ということは反射的な行動。
つまり1番の「夢と知りつつ」のような確信犯的行動ではないということです。
背伸びはしたいけれど、まだまだ大人にはなれないことを自覚した瞬間ですね。
エクボの秘密あげたいわ
もぎたての青い空
愛をめがけ今走り出す私
二人ひとつのシルエット
出典: 裸足の季節/作詞:三浦徳子 作曲:小田裕一郎
1番では青い風、2番では青い空。
これもまた、青春真っ只中をイメージします。
誰かに恋をして、ドキドキして、表情に幸せが刻み込まれてしまう状況。
彼女は「愛」に向かって走り出しました。
恋よりも一歩前に、一層深い場所に踏み込まなくては見えない「愛」。
恋愛を経て、彼の中に愛を見出したのでしょうか。
しかし、これもまた夢の中。
今、彼との恋は始まったばかりで、裸足の状態だということかもしれません。
夢の中でも幸せが表情に出てしまうぐらい、2人の関係は良好。
少しずつ恋を愛に変えていき、大人に近づきたいという願望を歌っているのだと読み取りました。
「エクボ」を深読み
中国では「エクボ」に特別な意味があるそうです。
死んだ人間は生前の記憶を消されるのですが、中にはそれを拒む人もいます。
拒んだ人につけられるのが「エクボ」なんだそうです。
拒む理由は、どうしても忘れずに持っておきたい記憶があるから。
再びこの世に生まれたとき、前世で愛した人を探すために消去を拒むのです。
「裸足の季節」の彼女は、前世で愛した男性を探している?
「エクボの秘密」とは、前世での繋がりを指しているのかもしれません!