中国版BLの複雑な人間模様をAimerが魔性の声で歌い上げる

2021年4月にAimerは、自身の6枚目となるアルバム【Walpurgis】を発表しました。

そのアルバムの中に収録されている新曲【季路】が今、脚光を浴びているのを知っていますか。

この楽曲は、中国発のBL系小説「魔道祖師」のTVアニメ版のエンディングテーマなのです。

「魔道祖師」は、元は中国の小説投稿サイトから生まれた作品でした。

中国国内で人気に火が点き、今やアジアの広範囲を覆い尽くすほどといわれています。

日本に上陸したのは、2020年のことです。

ラジオドラマ、実写ドラマ、TVアニメとなり、ファンを着実に増やしています。

TVアニメ版のエンディングテーマを担うこの曲は、世界観を強く感じられると話題です。

随所に散りばめられた意味深なフレーズを、物語を軸に深読みしていきましょう。

「魔道祖師」との絶妙なリンク

Aimer【季路】歌詞の意味を考察!なぜ春を待つのか?蕾が涙でぬれている理由と螺旋の示すものを深読みの画像

「魔道祖師」は古代中国の世界観を下敷きにした、歴史ファンタジーでもあります。

この作品をまったく知らないという人のために、少しだけレクチャーをしておきましょう。

岐山温氏による暴虐で世は大きく乱れていた。雲夢江氏、姑蘇藍氏、蘭陵金氏、清河聶氏は温氏討伐のため結託。射日の征戦と呼ばれる戦いが始まる。江家の仙師、魏無羨は鬼道の力によって大いに貢献し夷陵老祖としてその名を広めた。しかし、その強大かつ邪悪な力は次第に周囲に災厄をもたらすこととなる。仙門百家は魏無羨の討伐を決行し戦いの果て魏無羨は息絶えた。

魏無羨の死から13年後、禁術によって魏無羨は現世に蘇る。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/魔道祖師

このような経緯があり、甦った魏無羨と藍忘機が再会して物語は先に進んで行きます。

二人の男たちが紡いだ時間

灰色 曇り空 溶けない白さは 愛した二月の色
重ねる時間は 解けない魔法で 失くした季節を知った

出典: 季路/作詞:aimerrhythm 作曲:飛内将大

二人の主人公たちは、かつては互いを信頼し合える強い絆で結ばれた仲でした。

そんな背景を踏まえて冒頭のフレーズを見ると、感じるものがありませんか。

この楽曲の中では、「春」が一つのキーワードとなっています。

二月は一年の中で最も寒く、春とは対照的なシーズンです。

陰鬱な真冬すら、分かり合える相手となら楽しく感じられるということではないでしょうか。

そうやって時間を紡いできたのに、ある季節が欠けてしまったことを知ることになります。

そしてそれが、おそらくは「春」ということなのです。

魏無羨と藍忘機の間にある隔たり

Aimer【季路】歌詞の意味を考察!なぜ春を待つのか?蕾が涙でぬれている理由と螺旋の示すものを深読みの画像

溜息も白く染めて 木陰の歌 失くしたままで
暮れる空を君は見たか?

出典: 季路/作詞:aimerrhythm 作曲:飛内将大

春は、恋人たちとの季節ともいいます。

色とりどりの花が咲いて温かく明るい季節は、誰かを思う気持ちにぴったりですね。

「魔道祖師」の主人公二人が過ごした時間も、まさに「春」だったのでしょう。

藍忘機らが魏無羨を討ったことで、二人の春のような時間は失われました。

今は、溜息も凍るような冬のさ中にいるような気分なのでしょう。

そこには、柔らかな光による木漏れ日もありません。

かつては共に見た夕暮れも、今は相手に尋ねることしかできないのです。

やがて訪れる「春」を辛抱強く待つ

Aimer【季路】歌詞の意味を考察!なぜ春を待つのか?蕾が涙でぬれている理由と螺旋の示すものを深読みの画像

「魔道祖師」のあらすじに少し触れましたが、二人が再会した後には続きがあります。

かつては共に学び、高め合った二人でしたが、魏無羨の復活後は微妙な雰囲気になってしまいます。

藍忘機にしてみたら、自分もかつて彼を葬った一員です。

すぐには昔のように戻れず、わだかまりを抱えてしまいます。

彼らはまた、かつてのように思いを寄せ合うことができるのでしょうか。

儚い幸せに沈み込む

時計の針が心を打つ 過ぎ行く時が辿る路も
何度も同じ景色を携え 淡い夢を見よう

出典: 季路/作詞:aimerrhythm 作曲:飛内将大