タイトルにもなっている「怪獣」というワードに込められた想いを見ていきます。

その言葉を聞いて想起するのは、大雑把力任せなイメージ。

更には、巨大であるがままに進み倒す、大きな声で周囲を怯ませるような感覚があります。

それを踏まえて解釈すれば、過去の自分が怪獣と形容される理由が見えてきます。

  • 何にも恐れることなく、ありのまま生きている姿
  • 体裁を気にせず、いいたいことを放って、やりたいことをやり倒す姿

そんな過去の自分を、大人になった今になっても想い返してしまうといっているのです。

当時はそうすることが当たり前であり、「自分らしい」とすら認識することはありません。

しかし、日々を生きていくと、どこかのタイミングで、当たり前がそうではなくなる時が来るのです。

怪獣のように生きていたあの日の自分が恋しくてたまらないのです。

ありのままが奇跡のようで

あなたの代わりに

思い出すのは
君がいた
ギター持ってる
君がいた
忘れられないんだよ
だから僕が歌うよ

出典: 怪獣の花唄/作詞:Vaundy 作曲:Vaundy

注目すべきは、最終行の歌詞に描かれている言葉です。

「だから」という接続詞が使われるほどに意思が明確であることが分かります。

過去の自分を諦めないために、裏切らないために、その想いを引き継いでいく姿。

あの時、思い描いていた未来の理想像を、自分の歌が誰かに届いている状況を現実の物とするのです。

それはVaundyのこれまでの人生における心情も投影されているのはないでしょうか。

過去も現実も未来も、全ての自分を悲しませないように、後悔させないように生きていく。

それが彼にとっては「」であったのです。

私たちも、自分が大切にしてきたものに置き換えて聴くことで、ノスタルジックな気分にさせられます。

まだ何もしらない君へ

落ちてく過去は鮮明で
見せたい未来は繊細で
すぎてく日々には鈍感な君へ

出典: 怪獣の花唄/作詞:Vaundy 作曲:Vaundy

今となって気づくのは「時の流れ」の速さ。

もう2度とは戻れない1秒を何にも思わずに生きているあの日の自分です。

未来を望んで、喜と楽で構成された過去に満たされていた日々。

どうか忘れないでいて欲しい」と過去の自分に語り掛けているのです。

あなたの笑顔がある1日がどれほど一瞬で魅力的であるかをまだあなたは知らない。

その裏腹には、大人になることの怖さ、虚しさが垣間見えてきます。

それが「大人になること」なのかもしれないと思えば思うほど、込み上げてくる儚さ。

私たちも、絶対にあの日々を忘れてはいけないのです。

お金でも買う事の出来ない、何にも形容できないほどの価値のある時間だといえます。

価値のある日々

ずっとこの先も

ねぇ、僕ら
眠れない夜に手を伸ばして
眠らない夜をまた伸ばして
眠くないまだね
そんな日々でいたいのにな

出典: 怪獣の花唄/作詞:Vaundy 作曲:Vaundy

ずっと幼いままで生きていたいと望んでいるフレーズだと解釈出来ます。

明日への期待と、若さ故に心に蔓延る不安焦燥感で、生を実感する日々。

生きることに必死になって、盲目になるようなときもあるのです。

しかし、そんな毎日こそが魅力的であり、価値が付くべきだといっているのではないでしょうか。

どこまでも生き生きとしていている自分。

ここの歌詞にもあるように、形容するならば「眠ることの無い毎日」なのです。

しかし、いつかはそうすることが出来なくなってしまいます。

時の流れ」というのは想像より何倍も速く、そして残酷

今の自分では気づくことの出来ない価値は、後になって「後悔」として実感するのです。

怪獣のような心で

懲りずに
眠れない夜に手を伸ばして
眠らない夜をまた伸ばして
眠くないまだね
そんな夜に歌う
怪獣の歌

出典: 怪獣の花唄/作詞:Vaundy 作曲:Vaundy

誰に何をいわれようとも、止まることなく進み続ける足。

まるで怪獣のように、貪欲大雑把に生き続けていきたいといっています。

あの日の自分が気づかなかった価値をこれから見出していく。

取り返すことは出来ずとも、その想いを引き継いで明日をより良くすることは出来ます。

MVでどこまでも自転車を走らせていく主人公のように、ひたすらに生き続ける。

そこにある「価値」は何よりも高く、計り知れないものなのです。

終わりに