初出アルバム『みだれ髪』
有名な曲とカップリング
1987年12月10日、美空ひばりのシングルがコロムビアより発売されました。
B面には『塩屋崎』が収録されています。
また、1991年2月21日に発売された盤には『川の流れのように』、1991年7月21日に発売された盤には『悲しき口笛』、1994年盤では『悲しい酒』が、2003盤には『ひばりの佐渡情話』が収録されています。
カップリングされたどの曲をとってみても、美空ひばりのヒット曲ばかりです。
これらの曲のA面にもってきた『みだれ髪』には、美空ひばりの思い入れがあったに違いありません。
早速『みだれ髪』について、歌詞やその背景などに迫ってみたいと思います。
『みだれ髪』を聴いて
『みだれ髪』の歌詞と解説
何とも切ない女性の気持ちを歌った『みだれ髪』を美空ひばりはどのような想いを持って歌ったのでしょうか。
まずは1番の前半の歌詞をご覧ください。
髪のみだれに 手をやれば
赤い蹴出しが 風に舞う
憎や恋しや 塩屋の岬
出典: https://twitter.com/hibarisongs/status/919342744627113984
乱れている自分の髪をさわってみた時、赤い蹴出しが風になびきました。
「蹴出し」とは着物用の下着のことです。
ということは、この歌の主人公である女性は着物姿であり、風に舞うことから建物の外にいたことがわかります。
その場所というのが次に出てくる歌詞“憎や恋しや塩屋の岬”で福島県いわき市塩屋岬であることがはっきりとします。
この女性は福島県いわき市にある塩屋岬に辛い、でも懐かしい思い出があるのでしょう。それが“憎や恋しや塩屋の岬”でよくわかります。
そして後半の歌詞です。
投げて届かぬ 想いの糸が
胸にからんで 涙をしぼる
出典: https://twitter.com/hibarisongs/status/917530862064824321
想い出がたくさん詰まった塩屋岬で「あなたのことが好きです」という想いを糸に託して投げたけど、あなたには届かない。その糸が私の胸に絡まって、私は涙を流しました。
といったところでしょうか?
糸とは気持ちのことであって、目に見えるものではないのでしょう。
ただ、想い出の塩屋岬に一人来て涙を流す、か弱い女性の姿が目に浮かぶようです。
まだまだ辛い心の歌詞はこの後にも続きます。
2番の歌詞です。
すてたお方の しあわせを
祈る女の 性かなし
出典: https://twitter.com/hibarisongs/status/934381839334043653
辛や 重たや わが恋ながら
沖の瀬をゆく 底曳き網の
舟にのせたい この片情け
出典: https://twitter.com/hibarisongs/status/930757966390747142
ここでの歌詞の意味は、私を捨てたあの人の幸せを祈っている自分はなんて悲しいことでしょう。
沖に出て行く舟に、辛く重いこの私の気持ちと想いを乗せて行ってはくれないだろうか。と歌っているように思います。
そして、3番の歌詞では女性の本当の気持ちが語られています。
暗くてはてしない塩屋の岬。自分でも見えない私の心を明るく照らして見せてほしい。
ひとりぼっちは嫌なのです。と淋しい本心締めくくられています。
大変重くて辛い歌ですが、美空ひばりは“春は二重に巻いた帯、三重に巻いても余る秋”という部分の歌詞を大変気に入っていたそうです。
春は二重に 巻いた帯
三重に巻いても 余る秋
出典: https://twitter.com/kotonohashu/status/928315711688081408
着物を着る場合は、お腹の周りで帯を調節します。
春には二重に巻いた帯が、秋には三重に巻いてもまだ余っているということから、春にも痩せ秋には激やせしていることを意味します。
そして…
暗や 涯てなや 塩屋の岬
見えぬ心を 照らしておくれ
ひとりぼっちに しないでおくれ
出典: https://twitter.com/hibarisongs/status/897690089760989184

不死鳥「美空ひばり」のみだれ髪