You are not my boyfriend
静かなお話
汚ない欲望に
触れること無き世界
小さな呪縛が いつか手を滑り
苦しめないように
But I just want to say love you.
出典: you&i/作詞:理姫 作曲:奥脇達也
冒頭では「あなたは私の恋人ではない」と歌っています。
一方、最後には「ただ好きだと言いたいだけ」と歌います。
好きだと言いたい、という望みはまるで淡い初恋のような純粋さがあり、誰かを蹴落としたり陥れたりするものではありません。
その望みは今のところ叶わずにいますが、つん、と指で突いたら望みは膨れ上がってしまうかもしれません。
そうならないように、主人公は望みを刺激せず、恋心なんて持たないお姉さんのように振る舞っているのです。
「好き」という言葉を口に出してしまえば、二人の関係は壊れます。
主人公はもちろん、相手もきっと動揺して今までどおり接することができなくなるでしょう。
それは十分理解しているのです。それでも主人公は「好き」だと言いたいのだと歌います。
恋心を伝えたことで関係性が崩れないのであれば、主人公はきっと「好き」だと伝えたはずです。
相手が恋心に応えてくれなくてもいいから伝えたい。そんな真っ直ぐな気持ちを感じます。
本当の自分を見て!
月明かりは影として海に浮かぶ
真上では 冷たいのか温かいのか
知らないまま
出典: you&i/作詞:理姫 作曲:奥脇達也
主人公は、二つの側面を持っています。
- 世話焼きお姉さん
- 相手に恋心を抱く女性
相手の前では、どちらの側面も見せているはずです。
しかし相手はその違いが分からず、常に世話焼きお姉さんとして主人公を見ているのでしょう。
水面が風に揺られれば、あるいは波が立てば、海に映る月の姿はぼやけてしまいます。
主人公は、夜空の月そのもの、本当の自分を見て欲しいのではないでしょうか。
「好き」こそが別れの理由
I can't live stay with you
悲しいお話
その日が来るまで
あんまり離れないで
But you are not my boyfriend
出典: you&i/作詞:理姫 作曲:奥脇達也
今、相手のためだけを思って献身的に行動できる幸せを噛み締めています。
同時に、今の幸せは長く続かないことが分かっていますし、結末も知っています。
ずっと一緒に生きていくことはできないからこそ、一緒にいられる時間を大切にしたいのでしょう。
しかし、二人は恋人同士ではありません。多くを望んではいけない関係なのです。
Cuz I just want to say
I will love you & good bye to you.
出典: you&i/作詞:理姫 作曲:奥脇達也
「Cuz」は「Because」をスラング化した言葉です。
一般的には「Why〜?」(なぜ〜なの?)と理由をたずねるのに対して「Because〜」(なぜならば〜)という形を取ります。
ではこのセクションで「なぜならば、ただ言いたいだけだから」という理由につながる歌詞はどこにあるのでしょうか。
正しい理由なんか無い ただそう感じるだけ でも
出典: you&i/作詞:理姫 作曲:奥脇達也
一番のサビ前Bメロに出てきたこの部分と呼応しているのかもしれません。
二人の関係には必ず終わりが訪れると思っていても、根拠は示せない主人公。
しかし、主人公が相手に伝えたいと思っている言葉こそが理由なのでしょう。
「これからもあなたを愛します、だからさようなら」
好きだと言ってしまえば同時に別れを告げなければなりません。
終わりが訪れると確信できる理由は、相手が好きだから。好きだと告げれば関係は壊れるから。
「好き」が別れにつながるなんておかしい、という印象はあれど、何が正しいかなんて二人にしか分からないのです。
曖昧を許容してくれる『you&i』
『you&i』の軽快なメロディからは想像がつかないほどの苦しさが残る歌詞でした。
何か行動を起こすとき、あるいは誰かを想うとき、確固たる理由がないことの方が多いのかもしれませんね。
理由を求めて自分の行為を正当化するより、曖昧なままで自分の行動を許容してあげることが大切なのです。
しかし理由や正解が明確になったときは、見て見ぬふりをせずしっかり向き合うこと。
『you&i』の主人公は、苦しさの中で自分なりの正解の輪郭を掴んだといえるでしょう。