街に出れば男がさそい
ただ意味なく つきまとうけど
この私がゆきつくとこは
貴方の胸 ほかにないのよ
出典: サン・トワ・マミー/作詞:ADAMO SARVATORE 岩谷時子 作曲:ADAMO SALVATORE
宝塚歌劇団出身の美貌を誇った越路吹雪だからこそ歌えるラインです。
彼女の美貌を見初めて話しかけてくるような男性には目もくれない。
意中の人は彼女をフッた男、その人でしかないのだと一途な恋を歌います。
恋の哀しみ、喜びを伝えきるシャンソンの魅力が全開です。
愛しているのに叶わない恋
越路吹雪の「サン・トワ・マミー」の副題は「愛しているのに」。
虚しい恋愛には興味がない。
この愛にこそ賭けているのだと彼女は悔しさを交えて歌うのです。
彼女の朗々とした歌声が響きます。
声量も息遣いもすべて彼女自身の思い通りに操っていて気持ちよく聴けるのです。
恋を大空にさまよわせた詩人たち
ヨーロッパの大空
サン・トワ・マミー
風の様に 大空を さまよう恋
サン・トワ・マミー
淋しくて 目の前が暗くなる
サン・トワ・マミー
出典: サン・トワ・マミー/作詞:ADAMO SARVATORE 岩谷時子 作曲:ADAMO SALVATORE
現代よりも海外旅行へのハードルが格段に高かった時代です。
見果てぬヨーロッパの大空に投影される恋のありように聴くものは胸を焦がしました。
忌野清志郎が歌った「サン・トワ・マミー」
「サン・トワ・マミー」の越路吹雪ヴァージョンを、後年、RCサクセションがカヴァーしました。
このRCサクセションによるヴァージョンも非常に有名です。
忌野清志郎はところどころで歌詞を改変しています。
たとえばこのラインですと、越路吹雪ヴァージョンでは「風」であるところを「鳥」に置き換えています。
些細な違いですが、岩谷時子と忌野清志郎の詩的感性の違いが見えて面白い点です。
これぞシャンソンの醍醐味!
変幻自在な歌唱力
サン・トワ・マミー
淋しくて 目の前が暗くなる
サン・トワ・マミー
サン・トワ・マミー
サン・トワ・マミー
サン・トワ・マミー
出典: サン・トワ・マミー/作詞:ADAMO SARVATORE 岩谷時子 作曲:ADAMO SALVATORE
繰り返しになりますが、越路吹雪は「サン・トワ・マミー」の歌い方をラインごとに変えるのです。
囁きかけるような「サン・トワ・マミー」の連呼が美しい。
3分30秒の曲を軽々と歌いきったような、失恋、悲恋の歌なのにとても軽やかな印象が残ります。
シャンソンの人生を重くしないような歌い方に精通している越路吹雪らしい曲です。
キュートな失恋ソング
彼女が終生、この曲を歌い続け理由を考えます。
それはおそらく悲恋を歌っていても「恋の楽しさ」、身震いするような充足感をも歌っているからでしょう。
「サン・トワ・マミー」は失恋の歌でもどこかかわいい。
視界が閉ざされるような失恋なのに人生までをも捨て去るような深刻さがないのです。
こうした印象はひとえに越路吹雪の歌唱力によります。
またサウンド・プロダクションも華やかです。