恋人であれば、「会いたい」の一言でいつでも好きな時に会えるのです。
心の距離があるふたりは、そんなたった4文字でさえ言えないほどになってしまいました。
この4文字が言えていたら、もしかしたら今もまだ隣には彼がいたかもしれません。
しかし、この4文字を言えないほど彼に気を遣うようになったのです。
それだけふたりの間には修復不可能な溝ができてしまいました。
愛の儚さを文豪・宮沢賢治さんの言葉を借りて表現しています。
彼女は、ふたりの愛は絶対に壊れることはない。
他の誰にも負けないくらい強い絆であると信じていたでしょう。
それなのに、愛というものはこんなにも脆く儚いものだったのです。
できてしまった心の溝でさえ修復できないほど、脆いのです。
その事実を知った彼女は、彼を失う以上にショックを受けたでしょう。
信じていただけに、裏切られたような気分のはずです。
人を愛する
Uh 愛することを教えてくれた分だけ
Uh 君を想うと痛むんだ
出典: この夜が明けるまで/作詞:eill 作曲:eill・Ryo'LEFTY'Miyata
この歌詞から考えると、おそらく彼女にとって彼は初めての恋人。
今まで、人を愛することをしてこなかった彼女に愛することを教えたのです。
恋人がいてくれる安心感、辛い時に寄り添ってくれる心強さ。
また、一緒に過ごす時間の中で確実に幸せな時間があったはずです。
彼女にとっては、それは今までの日常にはなかった瞬間でした。
それが彼と出会ったことによって新しい幸せな時間が生まれました。
きっとこのふたりも普通のカップルだったのでしょう。
普通にデートをし、たまには一緒に夜も過ごして…。
極々当たり前の毎日を過ごしてきたのに、今それが失われようとしています。
一体何が彼女たちの別れを引き起こしたのでしょう。
そう考えると、彼女の心もリスナーの心もズキズキと痛みます。
朝が来る前に
もう一度
この夜が明けるまで
君の手を握っていたいけど
この夜に光が差す前に
さよならしよう
出典: この夜が明けるまで/作詞:eill 作曲:eill・Ryo'LEFTY'Miyata
この最後の一晩が明けてしまう前にはさよならをしたい女性。
一体、なぜ朝を待てないというのでしょうか?
きっと、これには彼女の葛藤も隠されているのです。
朝が来るまで彼の横で一緒に眠っていたい。
しかし、朝を迎えてしまったらもう後には戻れなくなってしまいます。
朝、女性の横で目覚めていつも通りの朝を迎えてしまったら…。
別れを告げると決めているのに、気持ちが揺らいでしまうでしょう。
彼のことを好きだという気持ちを抱えたまま別れを告げるのはとても辛いのです。
だから、彼と会話することもないまま、別れを告げて彼の視界から消えてしまおう。
このような作戦を練っていたに違いありません。
ふたりの夢
消えた夢
いつだってふたり一緒だった
永遠と信じてた夢がどこにも行かないように
出典: この夜が明けるまで/作詞:eill 作曲:eill・Ryo'LEFTY'Miyata
ふたりの夢とは一体何だったのでしょうか。
彼女が信じて止まなかったふたりの夢。
それは、これからも一緒にいること。
そんなシンプルすぎる夢だったのではないでしょうか?
大きな家を建てたいとか、海外に行きたいとかそんな夢ではなく…。
ただ、彼と何年先も一緒にいたい。
たったそれだけだったのです。
それが、彼との間に少しズレができてしまったのかもしれません。
長年付き合った彼との、価値観との違いだったり将来へのギャップ。
そのことからふたりの関係は少しずつ崩れていったのかもしれません。
戻れない日常
もう一度
この夜が明けるまで
君の手を握っていたい
この夜に戻れるなら
君をもう離さない
出典: この夜が明けるまで/作詞:eill 作曲:eill・Ryo'LEFTY'Miyata
さて、いよいよ最後のフレーズとなりました。
やはり、彼女は彼との別れを少し後悔しているように思えます。
本当は別れたくはないのでしょう。
これからもどんな形だったとしても、彼と一緒にいられたら…。
そんな思いが窺えます。
もしも、あの最後の夜に戻ることができたら何をするか…?
それはもちろん、もう彼の手を握り続けることでしょう。
今度は、朝が来てもずっとこの手を離したりはしない。
もう、後悔しても遅い。
それは彼女もよくわかっているはずです。
それでももしも。
もしも、これから先時代の進化でタイムマシーンができたなら…。
その時はぜひ、この夜に戻ってもう一度愛を掴んで欲しいですね。