いつかの彼女の明るい声が、記憶の奥底から蘇ります。
暖かな日差しと心地よい風を身体いっぱいに感じながら、洗濯に勤しむ彼女。
鼻歌混じりの彼女に言われるがまま、洗濯ばさみをいそいそと留めていく彼。
晴れた休日の朝の、2人のささやかな幸せの時間。
当時は何でもない日常の生活の一コマでしかありませんでした。
そんななんでもない瞬間が、どれほど幸福に満ち溢れた幸せな時間だったか。
時を重ねて、彼はきっと初めて気づくことができたのでしょう。
太陽の光を受けて、真っ白に輝くシャツ。
それはきっと、何気ない2人の幸せの象徴なのではないでしょうか。
真っ白なシャツと彼女の今は?
君がいるかな 広いベランダで
君の匂いが 恋しくなったら
出典: シャツを洗えば/作詞:岸田繋,佐藤征史,松任谷由実 作曲:岸田繋
瞼を閉じれば、今でもあの頃の光景が鮮やかに浮かんできます。
燦々と降り注ぐ太陽の光、大きな洗濯物かごを抱えた彼女。
ベランダにいる彼女の名前を呼ぶと、少し間延びした声で返事をし、笑顔でこちらへと振り向きます。
どれだけ時が経っても、いつもあの広いベランダには、あの頃の彼女がいるような気がするのです。
暖かい日差し、彼女の太陽のような笑顔、お日様と柔らかな柔軟剤の香り。
その香りは、眩しい彼女の姿と共に、彼の記憶の中にいつまでも眠っています。
太陽が目を開けた 眩しくて早く起きろって 洗濯だ
出典: シャツを洗えば/作詞:岸田繋,佐藤征史,松任谷由実 作曲:岸田繋
休日の朝、彼は洗濯機のゴトンゴトンという音で目を覚ましました。
目を擦りながらベッドから抜け出し、忙しなく走る足音を追いかける彼。
その視線の先には、何年経っても変わらない眩しい姿の彼女が。
今日も彼女は鼻歌を歌いながら、暖かな日差しを浴びてたくさんの洗濯物を干しています。
昔のように真っ白なシャツも陽の光を浴びて、心地良さそうに風に揺られながら。
今も変わらない彼女の大きな愛
時が経った今も彼女は変わらず眩しくて
ベランダには枯れた花
そばにおいでよ新しいシャツもあるけれど
出典: シャツを洗えば/作詞:岸田繋,佐藤征史,松任谷由実 作曲:岸田繋
昔大事に育てていたベランダの花は、いつの間にか枯れてしまっていました。
そういえば最近はなにかと忙しなくて、この広いベランダに来ることもなかったかもしれない。
洗濯に勤しむ彼女の姿を、彼は久々に眺めたような気もしています。
そんな彼に昔と同じように、手伝ってよ、と声をかける彼女。
昔から彼が気に入って着ている白いシャツを、慣れた手つきでパンパンと干していきます。
その横には、真新しい真っ白なシャツが綺麗に並べられていました。
この真新しいシャツは、一体誰のものなのでしょうか?
時が経っても変わらずそばにいる、彼女のものでしょうか。
あるいはもしかしたら、2人に加えて新しく増えた家族のものなのかもしれません。
ありふれた幸せと愛すべき人
I feel the sunshine of your love
風吹けば飛ばされそうになるシャツを
Wind blows into the veranda
洗濯バサミ留めておいてよ
I'm filled with the sunshine of your love
空っぽの洗濯機の中に
Wind blows into the veranda
私のシャツも入れておいてよ
出典: シャツを洗えば/作詞:岸田繋,佐藤征史,松任谷由実 作曲:岸田繋
私はあなたの太陽の光のような愛で満たされています。
愛する彼女が、時が経っても変わらず洗濯に勤しむ姿。
そんな彼女を眺めるのは、彼女を愛し続けている男性か。
あるいはもしかしたら、彼女の愛すべき子どもたちかもしれません。
自分が歳を取っても、成長しても、変わらず洗濯物を干し続ける妻・母の姿。
そんな彼女を見つめる彼の愛情のこもった眼差し。
そして何より、何年もの間変わらず彼の服を愛情を持って洗濯し続ける、彼女の大きな愛。
この曲はそんな双方の愛や、日常の中に潜む幸せな瞬間を愛を持って描いた楽曲です。
何気ない日常の中にある幸せ。
それがどれだけ時が経っても、変わらずそばにある。
特別なものではないけれど、そんななにより幸せな風景を描いた1曲となっています。
最後に
いかがでしたか?
今回はくるりとユーミン【シャツを洗えば】の歌詞を解説致しました。
何気ないありふれた日常の中にある、小さな幸せと大きな愛。
そんな幸せの尊さや暖かさを、手に取るように切り取った1曲でしたね。
皆さんの、ありふれた日常の中にある小さな幸せの風景。
それは一体どのようなものなのでしょう?
忙しない毎日の中でも、ぜひそんな一瞬の幸せな風景を見つけて、大事にして頂ければと思います。