人を怨むも恥しく
人をほめるも恥しく
なんのために憎むのか
なんの怨みで憎むのか
もう眠ろう、もう眠ってしまおう
臥待月の出るまでは
出典: 祭りのあと/作詞:岡本おさみ 作曲:吉田拓郎
「祭りのあと」の2番の歌詞です。
「過激派」の学生たちはヘルメットとゲバルト棒で武装し、同じように見える「新左翼」同士で内ゲバ。
党派間の覇権闘争が凄まじく、各学園で殺人事件や、運動に追い詰められて自殺する学生が相次ぎました。
1972年の連合赤軍による山岳ベース事件はその究極の姿です。
連合赤軍は違うセクトではなく、同じセクト内で「総括」と称するリンチ殺人事件を繰り返しました。
暴力の連鎖を断ち切りたい
なんのために憎むのか
なんの怨みで憎むのか
出典: 祭りのあと/作詞:岡本おさみ 作曲:吉田拓郎
岡本おさみの怒りや諦めをこのラインからふつふつと感じます。
人間ならば感じて当たり前の怒りとやるせなさです。
もう眠ろう、もう眠ってしまおう
臥待月の出るまでは
出典: 祭りのあと/作詞:岡本おさみ 作曲:吉田拓郎
「臥待月(ふしまちづき)」とは陰暦の19日の月、とくに8月19日の月のこと。
岡本おさみの文学的素養の高さをうかがわせる言葉が使われます。
リンチ、内ゲバなど暴力の連鎖はもうやめよう。
臥待月の出るまで眠っていよう。
人間としてもっと穏やかに生きていたいという当然の想いです。
悪い冗談であった”夢”
日本の悪霊
日々を慰安が吹き荒れて
帰ってゆける場所がない
日々を慰安が吹きぬけて
死んでしまうに早すぎる
もう笑おう、もう笑ってしまおう
昨日の夢は冗談だったんだと
出典: 祭りのあと/作詞:岡本おさみ 作曲:吉田拓郎
3番の歌詞です。
最後の“夢”というワードが気になります。
悪い冗談であった“夢”。
革命の幻想でしょうか。
確かにまだまだ若い身です。
この先の人生はまだまだ永いです。
身をすりつぶすように革命の幻想に取り憑かれていた。
悪霊の憑依。
それらの過去をすべて笑い飛ばしてあたらしい時代へ向かいたいという想いがひしひしと伝わります。
レクイエムとしての「祭りのあと」
犠牲になったひとびとへの慰め
祭りのあとの淋しさは
死んだ女にくれてやろ
祭りのあとの淋しさは
死んだ男にくれてやろ
もう怨むまい 、もう怨むのはよそう
今宵の酒に 酔いしれて
出典: 祭りのあと/作詞:岡本おさみ 作曲:吉田拓郎
4番の歌詞です。
“祭り”の犠牲者たちへの鎮魂歌のように響きます。
運動の高まりの中で本当に命を落とした人が多くいたのです。
彼、彼女たちにその人生が無駄であったなどとは誰にもいえません。
死んでいった者たちへ相応の敬意を示すために、いまは静かな時間をあげよう。
岡本おさみのやさしさです。