世間的に認められない二人の関係。
好き好んで、そんな愛を選ぶことはありません。
それでも、魔が差すように、常識よりも自分の気持ちを優先してしまうことがあります。
心の底にある、わかって欲しい、わたしだけを見て欲しいという強い想い。
その想いに不意に触れられた時、人は盲目になってしまうことがあるのです。
愛していると言って欲しい。
わたしだけを見つめて欲しい。
わたしだけを見て欲しい
わたしだけを見つめて愛して欲しい。
それが叶ったと思えるしあわせな気持ちは、麻薬のように頭を麻痺させます。
そう、麻薬のように。
それさえあれば、後はもう何もいらないとさえ思ってしまうのです。
もう一度あのしあわせな気持ちを味わいたい。
そんな風にしか考えられなくなるのです。
自分の未来も、相手の未来も、周りの人間の未来も見えません。
あの幸福感がもう味わえないのなら、生きていても仕方がないとさえ思ってしまうのです。
明日が見えない程自分を見失う今
一人きりの出雲崎
明日(あす)を待つ傘もなく
濡れたこの髪が 芯まで冷えて
恨む言葉も
水面に消えてく
まるで 海雪
出典: 海雪/作詞:秋元康 作曲:宇崎竜童
雪の中で冷たい海をただ眺めているのです。
身体に降り注ぐ雪は溶けて、体温を奪い身体を冷やしていきます。
凍えるような寒さの中で、恨む気持ちも浮かんできます。
しかし、相手を責める気持ちにも勢いはありません。
いくら悔やんでも、相手を責めても、その道を選んでしまったのは自分です。
どこかで、愛を貫いてもそれはしあわせにつながらないことを知っています。
愛に溺れて自分を見失ってしまったけれど、心の底ではもう終わりを知っているのです。
サビの歌詞に隠れた心情は?
ねえ いっそ この私
身を投げましょうか?
出典: 海雪/作詞:秋元康 作曲:宇崎竜童
サビでは、自分の決意ではなく相手に投げかけています。
『そうした方がいいよね?ねえ、そうでしょう?』という感じです。
「海雪」のヒロインである女性は、詩の全体を見てみても依存体質だと思われます。
出来事や想いに対して、自分の意志でそうしてきたという意識が薄いです。
愛に溺れて自分の存在意義が感じられなくなってしまいました。
人に流され、自分で自分の未来をちゃんと見ることが出来ませんでした。
愛と恨みの感情を抱えながら彼を追いかけて来ましたが、会うことまでしていません。
雪が海に触れて消えるように、もう、この愛を海に溶かそうと思っているのでしょう。
芯から凍えながら、情熱を注いだ恋も凍らせてしまうのです。
燃え上がる情念から、自分を取り戻そうとしているのではないでしょうか?
死を覚悟する旅ではなく、愛を凍らせる旅
愛する人を追ってきたのに、一人で海を眺めています。
もう、終わりにしようとしているのです。
恨みつらみの気持ちもあります。
自分の弱さや、浅はかさも感じています。
しかし、この歌の詩からは、死を決意して愛を終わらせる勢いは感じません。
自分が運命だと信じようとした愛は、幻想だったと知っています。
翻弄された自分の愚かさに、当てつけに身を投げたいとも思います。
しかし、彼女はそんなドロドロした想いを海に溶かして帰るでしょう。
きっと、今度はもっと自分の人生を大切にする愛に向かっていけるはずです。
最後に
「海雪」の歌詞の世界はいかがでしたでしょうか?
ジェロは「引退」はしていません。
また、日本の演歌界に帰ってくるかもしれません。
日本人よりも、日本人の魂がこもる演歌が歌えるジェロ。
いつかまた、さらにスケールが大きくなったジェロの歌声が聞けたらと思います。
ジェロがカバーした演歌をピックアップ
この記事では、ジェロのオリジナル曲を紹介しました。
しかし、ジェロは「カバーズベスト」というカバーアルバムも出しています。
良く知られている歌を、34曲をカバーしています。
そこで、今回はこの「カバーズベスト」に収録されている歌の解説記事を三つご紹介します。
一つ目は、吉幾三の「雪国(公式表記は「雪國」)」です。
この歌の誕生のエピソードは、読むとちょっと笑ってしまいます。
歌が降りてきて作られる場合もあれば、偶然が重なって生まれる歌もあるのです。
【吉幾三/雪国】恋する女心を歌う歌詞の意味を解説!酔っ払って作られた曲だって本当?!悲しい失恋ソング - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
北の大地を舞台に恋する女心を描いた吉幾三の名曲『雪国』。今回は『雪国』を徹底解剖! この曲が歌謡曲の名曲中の名曲だと言われるのはなぜなのでしょうか?その理由を紐解いていきます。併せて『雪国』誕生秘話も掲載します。