こんなに涙を流すあたしを あなたは嘲笑ってしまうのかな?
あんなに信じきってた二人を あなたは嘲笑ってしまうのかな?
出典: 空中戦/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ
どんなに信じ合っていても、ほんの些細なことで崩れてしまうのが人間関係だったりします。
「あたし」はこの別れに涙を流しひどく悲しんでいる様子です。
こんな時、相手も同じように悲しんでいるかどうか気になります。
同じように信じ合っていたのだから、同じように悲しいはずだと。
それなのに、こんなに悲しいことなのに、あなたは平気なの?笑ってしまうの?
と悲痛な叫びが歌われます。
言葉を並べてもどうにもならない
忘れることなど痛くも痒くもなかった筈なの そうなの なのに
今さよならが死ぬ程に怖くてしがみつく身体 頼りないよね
言葉を並べてどうにかなったら 機械も魔法もなんにも要らん
戦うあたしが映った液晶 あなたの指先伝ってく
出典: 空中戦/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ
悲痛な叫びはまだまだ続き、別れの辛さがひしひしと伝わってきます。
しかしいくら言葉を並べたところで、一度壊れてしまったものはもう元には戻りません。
最後のフレーズの「液晶」と「指先」からはスマートフォンが連想されます。
女王蜂というバンドで歌う“アヴちゃん”の姿がスマホ越しで「あなた」に伝わっていく。
そんな風に解釈することができます。
これは今まで隣でギターを弾いていた“ギギちゃん”が遠く離れてしまうことを表していると考えられます。
それと同時にこの先自分の戦う姿を見ていてほしい、という想いも込められているのでしょう。
活動再開における覚悟のようなものをこのフレーズから感じ取ることができます。
縺れたネックレス
二人の間の縺れ
きみだけは変わらないでよ なんて言えずに縺れたネックレス
二人で解こう もう泣かないでね 愛してる
出典: 空中戦/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ
別れの原因は2人の人間関係の縺れにあるようです。
そのことを「ネックレスの縺れ」という比喩で表現しています。
別れてしまったけれど、その縺れは解きたいという想いがあるようです。
何故信じ合っていた2人の人間関係は縺れてしまったのでしょうか。
理由はわからない
あんなに涙を流すあなたを あたしが嘲笑ってしまったから
あんなに信じきってた二人を あたしが壊してしまったかな?
違うよ 君一人のせいじゃないんだ あのとき意気地がなかったのは
何故だか判りやしないけどとにかく 二人で壊してしまったんだ
出典: 空中戦/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ
2人の関係が縺れ、壊れてしまったのは自分のせいかもしれないと自分を責めてしまっています。
原因を突き詰めて考えすぎると、全て自分のせいに思えてしまうことはよくあることです。
現に“アヴちゃん”は自分のせいでバンドが崩壊した、と考えていたことをインタビューで語っています。
“ギギちゃん”の脱退も、“やしちゃん”の脱退表明も、バンドの活動休止も自分のせいだと。
しかし人間関係の縺れにおいて100%どちらかが悪い、なんてことはありえません。
誰のせいでもなく、理由もわからないまま縺れていってしまうこともあるものです。
バンドも恋愛関係も、そうしてよくわからないまま空中分解してしまうことは珍しいことではないでしょう。
自分を責める“アヴちゃん”を「君だけのせいじゃない」とメンバーが諭したこともインタビューで語られています。
「空中戦」が意味する状況
賽はとっくに投げられて生きるか死ぬかの空中戦
一寸先は地獄でしょ?きみがいなけりゃ地獄もないけど
出典: 空中戦/作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ
2人の別れの原因、縺れの原因は明確にはわからないようです。
つまり空中分解のようなものでした。
【空中戦】というタイトルはそうした原因不明のふわふわとした関係の縺れを表しているのかもしれません。
「空中戦」には落ちれば終わり、止まれない、というニュアンスも含まれているでしょう。
飛び上がったら最後、空中で止まることはできません。
飛び続けなければ落ちてしまう、飛び続けるしか生き残る術はない。
バンドを始めた当初、恋が始まった瞬間、賽は投げられたのです。
「きみ」 がいないのなら生きるも死ぬも天国も地獄もない、とこの曲は締め括られます。
しかし“アヴちゃん”はバンドを続けること、「きみ」がいなくても飛び続けることを選びました。
どうかこの「空中戦」の末に、安全な着陸があることを願いたいものです。