忘れないために捨てていく
ねぇ 青春なんていらないわ
このまま今に置き去りがいい
何千回も繰り返す この日を忘れないままでいたい
出典: 青春なんていらないわ/作詞:n-buna 作曲:n-buna
1曲目『三月がずっと続けばいい』とは対称的に「置き去り」という言葉が使われています。
青春と呼ばれる時期は人生の中ではあっという間。地球の歴史でいえば恐竜が生きた時代ほどの短さでしょう。
青春真っ只中にあっても常に頭のどこかで終わりを意識してしまいます。
終わらせないためには、終わりに向かわせなければいいのです。つまり「置き去り」です。
もちろんそんなことはできません。だからこそこの曲が切なく心に響きます。
6. ソーダアイス
ありふれたさよならを前にして
言いたかった言葉を飲み込んで
一つだけあったけどもう二度と
伝えられず胸に溶かすだけ 溶かすから
出典: ソーダアイス/作詞:buzzG 作曲:buzzG
恋が順調に進んでいれば、夏の暑さよりも何よりも先に想いの熱さでソーダアイスが溶けるのかもしれません。
しかし実際は、熱い想いは行き場を失って胸にとどまり、消えるのを待つだけなのでしょう。
溶けてしまえば戻らない、しかし溶かすこともできなかった後悔を感じます。
7. ビタースイート
終始マイナーコードで進行するのが7曲目『ビタースイート』です。
みあの甘い歌声の後ろで、鎖のように連鎖するピアノの旋律がずっとずっと続いています。
間奏ではジャズを思わせる軽やかさでピアノが歌い、それを引き継ぐようにみあの声にチェンジ。
まるでみあとピアノのデュエットのようにも感じられる曲ですね。
大人びた恋愛ソング!
もうこれで終わりにしなくちゃと
そう受け入れようとしても
通知のひとつだけでまた安心して
バカみたい
出典: ビタースイート/作詞:すこっぷ 作曲:すこっぷ
相手から「愛」らしいものは感じられず、恋の終わりはすぐそこまで来ている予感があります。
できれば嫌われる前に嫌いになりたい。しかし嫌いになれないのでしょう。
なぜなら、こうした辛くて苦い想いを相手の甘さが絶妙なタイミングで覆い隠すからなのです。
「青春」という若かりし時代であっても、恋愛の駆け引きは大人顔負けですね。
8. ラフスケッチ
翻弄される恋の後はこれぞ青春!と思わせる爽やかソング『ラフスケッチ』です。
ミディアムテンポで刻まれるギターのストロークが「今」を「明日」に連れて行ってくれるような期待を感じさせます。
さっきからさっきから
気づいていた 胸の中 静かに叩く音
もう一度誰かを
好きになってもいいかな?問いかけてみる
なつかしい風に吹かれ
歩き出した
出典: ラフスケッチ/作詞:40mP 作曲:40mP
新たに芽生えた恋心に気づいたものの、直視してもいいのか不安に感じています。
この曲は恋の始まりを描いています。だからといって心の底からハッピーな曲ではないのが三月のパンタシア流。
ひとつ前の恋で傷ついた彼女は次なる恋に対して臆病になっているのです。
しかし、彼女が手にしているキャンバスはもう真っ白なはず。
だから恐れずに、いつか感じた初恋と同じ空気を感じながら一歩を踏み出します。