「チャンピオン」ってどんな曲?
ギターの音色がカッコイイフォークソング
「チャンピオン」はギターの音色が際立つフォークソングです。
ストロークが力強く、テンポが速いことから勇ましさを感じます。
アリスといえば、フォークグループとして日本の音楽を牽引してきました。
そのアリスが今までに世に送り出してきた数々の楽曲の中で一番有名なのが「チャンピオン」でしょう。
「チャンピオン」は発売から40年ほど経っています。
しかし、紅白歌合戦など現代の音楽番組でもよく耳にする事が多いのは…
色あせないカッコよさが「チャンピオン」の楽曲にはあるからではないでしょうか。
元々は、ボサノバ調で作成する予定だったそうです。
しかし、カッコイイフォークソングにしたことで、より男らしさがあるのでしょう。
女性である筆者の胸も熱くしてくれるナンバーです。
モデルとなったカシアス内藤について
一世を風靡したプロボクサー
「チャンピオン」の歌詞ではこの後も紹介しますが「リング」や「グローブ」という言葉が出てきます。
この「チャンピオン」はボクシングについてかかれた楽曲であるのがわかります。
1970年代は漫画「あしたのジョー」が人気でありボクシング人気もとても高い時代でした。
その頃に話題になったボクサーといえば「輪島功一」がいます。
しかしその、輪島功一が人気になる前に一世を風靡したボクサーがいました。
それが「カシアス内藤」です。
カシアス内藤はアメリカ人の父親と日本人の母親を持つハーフです。
高校時代からボクシングに励んでいたそうです。
1970年に日本ミドル級チャンピオンに輝いて以降2年程、負けを知らないボクサーとして波に乗っていました…。
しかし、輪島功一に負けるなど不調が目立つようになり1974年リングから姿を消します。
1978年に突如復活すると、連勝を飾りました。
その姿にアリスの谷村新司が心を打たれ、カシアス内藤をモデルに楽曲を書き上げました。
それが「チャンピオン」です。
「チャンピオン」にはそんな1人の選手の背景があるのかと思うと、涙なくしては聴けない楽曲なのです。
ちなみに、カシアス内藤さんは現在もボクシングジムを経営するなどボクシングに携わっています。
息子さんもボクサーになられているそうです。
拳を固く握りしめてしまう熱い前半の歌詞を解説
もう勝てないとわかっていた?
つかみかけた 熱い腕を
ふりほどいて君は出てゆく
わずかに震える 白いガウンに
君の年老いた 悲しみを見た
出典: チャンピオン/作詞:谷村新司 作曲:谷村新司
もう勝てないとわかっていたのでしょうか。
無理をすることはないと周りは止めていたのかもしれません。
それでも彼はリングへ向かうのです。
負けてしまうかもしれない事への恐怖なのか、闘志をみなぎらせているのか…。
震えているのはどういった心境を表しているのでしょうか。
恐らく、もう勝つことはできないだろう。
またチャンピオンに輝くという夢は実現できないだろう。
抱いている夢はもう若くないと悟った姿が想像できます。
チャンピオンとして輝いていた頃とは違い、少し小さくなってしまった背中。
それを白いガウンからの年老いた悲しみで表現しているのではと感じました。
「行ってくるよ」言葉が無くても伝わる気持ち
リングに向かう 長い廊下で
何故だか急に 君は立止まり
ふりむきざまに 俺にこぶしを見せて
寂しそうに笑った
出典: チャンピオン/作詞:谷村新司 作曲:谷村新司
リングまでの廊下は彼にとってとてつもなく長いものに感じたに違いありません。
その間に色々な事を思い考えるでしょう。
当然恐怖に包み込まれる瞬間もあると思います。
でも自分はこれから戦いに行くんだという強い気持ち…
心配してくれている周りに対して「俺は大丈夫だ」という安心させたい気持ち…
言葉にこそしていませんが、寂しそうに笑ったという表現から色々な気持ちが伝わってきます。
この戦いは負けるかもしれない。
そうなれば自分はリングから去ることになるだろうという悟り。
必死にその感情を受け入れようとしてたのかもしれません。
また「寂しそうに笑った」という歌詞から、「ありがとう」という気持ちも感じます。
並々ならぬ決意と覚悟でリングへ向かっているの姿がイメージできました。
戦いの始まり
やがてリングと 拍手の渦が
ひとりの男を のみこんで行った
(You're king of kings)
立ち上がれ もう一度その足で
立ち上がれ 命の炎燃やせ
出典: チャンピオン/作詞:谷村新司 作曲:谷村新司
曲の中にも声援や歓声は一切ありませんが、この歌詞からその音がとても伝わってきます。
きっと盛り上がっていたに違いありません。
とてつもない声援や歓声が頭に鳴り響いています。
そんな観客の盛り上がりとは裏腹に、見送る人たちの重い心境が伺えます。
「You're King of Kings」
あなたは王者の中の王者だという、戦いに行く彼を称える気持ちがわかります。
一度はチャンピオンを経験し、一番高いところの景色を知っている彼。
またその足でその腕で勝利を掴んでほしい。
そんな気持ちが伝わってきます。
会場の中に彼の応援がどれほどあったかはわかりません。
恐らく相手選手の応援の方が強いのかもしれません。
そんな逆境の中でも、努力し立ち上がってきた彼を応援し信じる気持ちがとても強い歌詞だと思いました。