放課後ティータイム「No, Thank You!」の歌詞を解釈！“今”を生きる熱い思いがかっこいい！

ヱヴァンゲリヲンのメガヒット以降その需要が非ヲタ層にも浸透した深夜アニメ。

「らき☆すた」「涼宮ハルヒの憂鬱」などの深夜アニメは後のサブカルチャーに多大な影響を与えています。

これらのカルト作を多く輩出している京都アニメーションが満を持して送り出したのが「けいおん!」です。

「けいおん!」はかきふらい原作の4コマ漫画をアニメに再構築した作品。

ティーンズバンドというモチーフを用いつつも青春・熱血系の描写は皆無。

ひたすら抑揚のない日常を描いた作風は空気系という新たな作風を一般層にまで定着させます。

2000年代のユースカルチャーとリンクした「けいおん!」は一大ブームを巻き起こすことに。

その代表例が関連楽曲のメガヒットです。

今回紹介する放課後ティータイムの「No,Thank You!」はオリコン初登場2位を記録。

1位のSMAPの楽曲と同日発売でなければ確実に1位を記録したであろう作品です。

特筆すべきは「No,Thank You!」の世界観の特異性にあります。

「けいおん!」の魅力は前述したように日常のふんわりとした描写にあります。

ドラマチックな展開や主人公の成長といったテーマはほぼ皆無。

登場人物は両親をはじめ大人の存在を極力排除しています。

唯一の例外は軽音楽部の顧問の山中さわ子先生のみですが彼女については後述しましょう。

ところがエンディングテーマとして使用された「No,Thank You!」は趣が違います。

クールなビジュアル表現。

大人になった主人公たち。

これらの本編のテーマと異なる構成が「No,Thank You!」の人気の秘密でもあるのです。

初登場2位を記録した「No,Thank You!」は「けいおん!!」第2期のエンディングテーマです。

少しマニアックな情報になってしまいますが...。

「けいおん!」は全14話の第1期と全27話の第2期で表記が変更されます。

正確には第2期を表す時は「けいおん!!」と”!”が2つになるのです。

本記事では原作を含む作品全体を表す際は「けいおん!」、第2期は「けいおん!!」と表記しています。

いや、そんな細かい説明はいらないよ、とツッコミが聞こえそうですが...。

本題に戻りましょう。

アニメのテーマ曲はオープニングに話題が集中するのが通例。

しかし同日発売の第2期のオープニング曲「Utauyo!!MIRACLE」は僅差で初登場3位でした。

オープニング曲の人気をしのぐ「No,Thank You!」の魅力とはどのようなものなのでしょう？

その秘密は「けいおん!」の時間軸設定構造にあると見ています。

「けいおん!」は起伏のない日常を淡々と描いているように見えます。

しかし主人公たちは3年間という限られた高校生活を全41話で終了することに。

原作の「カレッジ編」などは議論があるようですのでひとまず置いておきましょう。

物語の通り3年生の4人が同じ大学に進学しても1人取り残される下級生の存在。

何気ない日常には必ず終わりが来ることも劇中では描かれているのです。

「けいおん!」のエンディングテーマ及び映像ではその後にありえる１つの可能性を提示しています。

それが卒業後も関係性を維持しつつプロデビューという選択を望んだ未来です。

アニメのエンディング映像はプロデビューした放課後ティータイムのMVという設定で描かれます。

私が記憶する限り全話でこの構造は徹底されていたはずです。

「No,Thank You!」の歌詞を紐解くとその構造の輪郭が一層ハッキリと浮かび上がります。

「No,Thank You!」のイントロが始まります。

「secret base」を彷彿とさせるメランコリックなビブラフォンの音色。

感傷に満ちた憂いのあるイントロをかき消すようにかき鳴らされるディストーションギター。

「けいおん!」はオープニング・エンディングで作家陣を分けることで明確にイメージを分離しています。

Tom-H@ckの作る楽天的なオープニング。

それに対しエンディングは前澤寛之が全曲を担当してます。

本作を歌う澪役の声優日笠陽子のソロ作でもタッグを組む作曲家です。

エンディング曲で描かれる未来の放課後ティータイムはメインボーカルを澪が務めます。

引っ込み思案で裏方に徹するキャラの澪をあえて中心に据えることで主人公たちの成長を表現したのでしょう。