18歳の少女が歌う神話
「1/2の神話」は1983年2月に発売された、中森明菜さん4枚目のシングル。
リバイバルブームの80年代歌謡曲、中でも永遠のアイドル明菜ちゃんは1965年7月生まれです。
16歳の時にオーディション番組「スター誕生!」で合格し、「スローモーション」でデビュー。
そして「1/2の神話」の発売当時、明菜ちゃんは18歳だったことになります。
つまり20歳にはまだなっていない、10代の少女がこの曲を歌っていたということです。
年齢については歌詞の世界観に深く関わってきますので、最初にしっかり確認しておきましょう。
ヤンチャ路線
デビューシングルの「スローモーション」と3枚目の「セカンド・ラブ」は純情路線。
セカンドシングルの「少女A」に続くヤンチャ路線が4枚目の「1/2の神話」でした。
初期の明菜ちゃんは、交互に純情路線とヤンチャ路線を繰り返していたわけですね。
純情路線の2曲では、来生えつこさん&来生たかおさん姉弟が作詞・作曲を担当しています。
2曲ともふんわりとした優しい少女のイメージが展開されていました。
ところが「少女A」では一転して、ヤンチャな少女が主人公になっています。
この「少女A」の作詞を担当した売野雅勇さんが、「1/2の神話」でも続投。
歌詞の世界観としては、「少女A」の物語に続く内容と解釈することもできるでしょう。
今回は「1/2の神話」の歌詞について、たっぷり解説していきます。
大澤誉志幸が作曲
歌詞解説の前に、サウンド面についても触れておきましょう。
「少女A」を作曲したのは芹澤廣明さんでしたが、「1/2の神話」では大澤誉志幸さんが担当。
大澤誉志幸さんは1981年にデビューしていたものの、まだヒットには恵まれていませんでした。
「その気×××(mistake)」や「そして僕は途方に暮れる」がヒットしたのは1984年のこと。
1983年に発売された「1/2の神話」の作曲がかっこいい!という影響もあったのかもしれません。
1994年には大澤誉志幸さん自身のシングルとして「1/2の神話」をセルフカバーされました。
グループサウンズやブルーグラスがルーツで、リズム&ブルースに造詣が深い大澤誉志幸さん。
セルフカバーアルバム「Collage」にも収録されていて、ファンキーな仕上がりになっています。
いつもの秘密とは?
本当にクール?
秘密だと 念おされ
あなたにうなずけば
クールな私に戻る…いつも
出典: 1/2の神話/作詞:売野雅勇 作曲:大沢誉志幸
「1/2の神話」は「少女A」に続く、ヤンチャ路線の第2弾シングル。
そのため歌詞の主人公は当時の明菜ちゃんと等身大の18歳くらいの少女と考えられます。
そして歌詞の冒頭から「あなた」というもうひとりの人物が登場。
あなたは「これは秘密だよ」的なニュアンスで、私に念押しをしています。
う~ん、意味深ですね。しかも私は秘密の出来事で冷静ではなくなっているわけです。
冷静な状態に戻る……ということですから、逆に熱くなっていたことがわかるでしょう。
年上の彼氏?
ここからはまったくの想像ですが、あなたは年上の男性、しかも彼氏なのではないでしょうか。
いや、年齢は同じ、同級生かもしれません。いずれにしても男性のほうがリードしている感じ。
18歳くらいの少女というと、恋愛に関心が深くなる年頃かもしれません。
法律的には2022年4月以降、女性の結婚年齢は18歳以上になります(それ以前は16歳以上)。
つまり2022年4月以降でも、18歳になれば女性は結婚することができるわけです。
ただし、18歳の女性というのは結婚できるギリギリの年齢ということ。
2人の恋愛を秘密にしたほうがいい……と男性は考えているのかもしれません。
夢見る少女だった
態度は矛盾しがち
カラカラに乾いてる
態度とうらはらに
心じゃ まだ夢見てる…純ね
出典: 1/2の神話/作詞:売野雅勇 作曲:大沢誉志幸
ヤンチャな少女という設定になっていますので、態度は決していいわけではないようです。
80年代というと、たくさんのアイドルがヒットを飛ばしていました。
その中でも、松田聖子さんと明菜ちゃんがライバル!と考えるファンは多かったかもしれません。
聖子ちゃんが笑顔をふりまくタイプのかわいい系アイドルとすると、明菜ちゃんはかっこいい系。
山口百恵さんもそうだったかもしれませんが、必要以上には笑わないイメージもありました。
そうした態度が誤解されやすいとも考えられます。アイドルのイメージも反映された歌詞……。
ただし心の中まで笑っていないかというと、そうではなかったのでしょう。
歌詞の物語に戻ってみても、実際には夢見る少女だったのです。自分で純情だと言っています。