椎名林檎と宮本浩次「獣ゆく細道」の歌詞の意味を解釈!我々の本性は獣か…細道の意味が分かると心が震えるの画像

気遣つてゐるやうで気遣わせてゐるんぢやあ 厭だ
自己犠牲の振りして
御為倒しか、とんだかまとゝ
謙遜する前の単に率直な態度を誇つてゐたいと思ふ
さう正体は獣

出典: 獣ゆく細道/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

ここでは人の二面性が歌われています。

御為倒しは「おためごかし」と読みます。

表面は相手を思いやっているけど、実は自分の利益を一番に考えている、という意味です。

かまととは、知っているのに知らない振りをして、無邪気さを演出することです。

人はそうやって相手を気遣う振りをしたり、無邪気さを装って、自分を守ります。

しかし、それでは「鎖」から解き放たれない。

もっと、率直に生きなければ。

謙遜する前に、自分の本性をさらけ出さなければ、才能は発揮できない。

仮面を外して、正体である「獣」を現さなければならないのです

孤独=自由

椎名林檎と宮本浩次「獣ゆく細道」の歌詞の意味を解釈!我々の本性は獣か…細道の意味が分かると心が震えるの画像

悴むだ命でこそ成遂げた結果が全て
孤独とは言ひ換へりやあ自由
黙つて遠くへ行かう

出典: 獣ゆく細道/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

「悴む」は「かじかむ」と読みます。寒さに凍える様を指す言葉です。

「獣」となって服を脱げば、厳しい寒さに直面する。

でも、そんな厳しさを通してこそ、結果がついてくる。

生ぬるい「安心」に浸っているうちには、本当の結果なんて得られないのです。

そして同時にここでは「孤独」は「自由」である、と歌われます。

「みんなと同じ」という「安心」はある意味「不自由」です。

他者の目から解放されてこそ、自由が実現できる。

そこには恐怖も厳しい寒さも伴う。

でも、「獣」になるためには、そこを突破しなければなりません。

「細道」を行くことの意義

価値観からの解放

本物か贋物かなんて無意味 能書きはまう結構です
幸か不幸かさへも勝敗さへも当人だけに意味が有る

出典: 獣ゆく細道/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

「獣」になることができれば、あらゆる価値観から解放されます。

同時に、他者と比べることもなくなる。

本当に自分が信じるものに向かって突き進むことができる。

それこそが「自由」の意義なのです。

誰も通れない「細道」へ

椎名林檎と宮本浩次「獣ゆく細道」の歌詞の意味を解釈!我々の本性は獣か…細道の意味が分かると心が震えるの画像

無けなしの命がひとつ だうせなら使ひ果たさうぜ
かなしみが覆ひ被さらうと抱きかゝへて行くまでさ
借りものゝ命がひとつ 厚かましく使ひ込むで返せ
さあ貪れ笑ひ飛ばすのさ誰も通れぬ程狭き道をゆけ

出典: 獣ゆく細道/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

人は、ちっぽけな命を一つしか持ち合わせていない。

その命を全て使い果たすくらいに、全力で生きなければならない。

厳しい寒さ、孤独の中を駆け抜けるためには悲しみが伴うかもしれません。

でも、悲しみすらも自分のものとして、生きなければならない。

人生の全てを貪り尽くし、そして悲しみを抱えながら高らかに笑う。

そうして、誰も通れないほどに細く、険しく、苦しい道を駆け抜けていく。

「獣」としてその中を走っていくことで、初めて自分の本当の才能に巡り会えるのです。

「細道」を行く二人

「獣」の正体

椎名林檎と宮本浩次「獣ゆく細道」の歌詞の意味を解釈!我々の本性は獣か…細道の意味が分かると心が震えるの画像

誰も通れないような道を駆け抜けていく「獣」の姿がこの歌では情熱的に描かれています。

その「獣」は、まさに椎名林檎と宮本浩次の姿と重なるように思えるのです。

二人とも、人とは違う才能を持っている。

しかし、その才能を発揮して、その才能を武器にして生きていくことには必ず苦しみが伴うはず。

そんな苦しみや悲しみを抱えて駆け抜けるからこそ「獣ゆく細道」のような名曲を生み出せる。

常に変わりゆく「無常」の世界の中で、いつまでも変わらない何かを創ることは困難を極めます。

それは誰しもがたどり着ける境地ではないかもしれない。

でも、誰も知らない、誰もたどり着いたことのない境地に行くためには「獣」になるしかない。

悲しみを背負い、理性を捨て、自分をさらけ出す。

「細道」の先にある世界にたどり着くためには、そうしなければならないのです。

おわりに