幼なじみへの想い。当時18歳の光村龍哉(Vo.Gt)が描いた、壮大な淡き恋心。
2008年に、メジャーデビューシングルとしてリリースされた「夜の果て」の、カップリング曲として収録された『April』は、インディーズ時代の楽曲には無かった、温かい印象の曲です。
当時のインタビュー記事でもあまり触れてはいない作品だったのでここからは憶測ですが、
ボーカルギターの光村龍哉は、学生時代からスピッツの大ファンで自身もよくカバーをしていたそうです。
その、スピッツの影響を強く受け、作られた曲ではないかと思います。NICO流の”春の歌”のような…。
この曲は、”4月のライブにしかやらないレアソング”と、ファンの間で噂となり、普段やらないからこそ聴きたい!と思う人が増えバンドの知らない間に拡がっていった曲と言って良いでしょう。
2011年に行われた、「PASSENGER」ツアーにおいて初めてセットリストに組み込まれたことがある種きっかけとなり
今となっては、リクエストを募るとダントツ1位になる程。長い年月に渡って、ファンに愛されている曲です。
そんな、『April』の優しい詞を紐解いていきましょう!
いつでも僕たちは”ふたりでひとつ”だった。
いつの間にか僕たちは大きくなった 坂道を転がったバイクのような
僕が前輪で 君が後輪の 日々をふと思う
桜なら去年より早めに咲いた 三月も終わる頃 花びら舞った
街を揺らす 春の風に 戸惑った君が
出典: April/作詞:光村龍哉 作曲:光村龍哉
曲の始まりは、聴いてるこっち側までもがタイムスリップしたような、どこか懐かしい情景を思い起させます。
そんな、幼少期に想いを馳せる言葉から始まります。春は別れと出会いの季節。
「桜なら去年より早めに咲いた 三月も終わる頃花びら舞った」
卒業と共に、それぞれの道へと歩き出し、恐らく女の子はこの街を出ていくんだと思います。
大好きなこの街を出て行く。そのタイミングに合わせてくれたかのように桜が咲いた。
嬉しさと共に、小さな頃の思い出が蘇る。
「小さな国のこんな小さな街で どう笑ったらいいの?
風がやさしいほどに 眩しいほどに 泣きそうになるの」
きっと泣いていい 君は泣いていい 僕が手を握るよ
君は泪の雨で やがて海を作って 二人で船を出そう
出典: April/作詞:光村龍哉 作曲:光村龍哉
1番のサビ部分で、女の子の想いが溢れだします。
最後くらい、笑顔で。そう思えば思う程、色褪せない日々が頭に浮かんできて、懐かしくなる。
優しい程に眩しい程に風が吹いて、こんな儚くも綺麗な桜を見せてくれた。
そんな女の子に対し「きっと君は泣いていい 君は泣いていい 僕の手を握れよ」という、男の子のかける言葉がキュンとさせます。
もしかしたら互いに思いを募っているのかも…。
平凡な生活がビデオになればデッキには
巻き戻しボタンなんてないんだよ きっと
答えなら また明日二人で探そう
三原色の点が無限に集まってドラマは続く
出典: April/作詞:光村龍哉 作曲:光村龍哉
2番のAメロの歌詞は、聴く世代によって伝わり方が全然違うと思います。
私は、これをギリギリ使っていた世代なのでグッときました。
たった3色の光の点で、日常に見ている風景や情景を見たままに写す事って今考えると凄い事ですよね。
プレイヤーではなく、デッキという表現だけで、不思議と温もりを感じさせます。
思い出は消えていくものではなく、書き足されるものなんだ。
そういう気持ちが、まさしく、「デッキには巻き戻しボタンなんて無いんだよきっと」という事なのでしょう。
でもホントはバカねって笑う君の笑顔が見たい
それじゃ歌おう 嘘っぱちだらけのロックンロールを
おとぎ話も今は信じてみてよ
そんな四月の午後
出典: April/作詞:光村龍哉 作曲:光村龍哉
1番のサビでは、実は強がった言葉だったのかもしれませんね。カッコつけて、君を少しでも落ち着かせてあげたくて。
でもやっぱり、君の笑顔が見たい。だから、作り話を一発ぶちかまそうではないか。何とか笑って欲しくて、試行錯誤している姿が目に浮かびます。
今でも”君と僕がすべて”。そう想っている。
桜の花びらを二枚拾って気づいたんだよ
"君と僕がすべて"
花びらが花になり 花が満ち木をつくって
集まれば街になり 世界をつくってきっと宇宙になる
すごいだろ
気が済むまで泣いていい 君は泣いていい 僕の手を握れよ
君は泪の雨でやがて海を作って 二人で船を出そう
太陽は光り そして若葉は緑 所詮移り変われり季節でも
君を想ってる ずっとずっと想ってる
そんな四月の午後
そう誓う四月の午後
出典: April/作詞:光村龍哉 作曲:光村龍哉
ラスサビになると、ロマンチックな展開に。
「花びらが花になり」「花が満ち木をつくって」「集まれば街になり 世界をつくってきっと宇宙になる」
”桜の花びら”からここまで壮大なドラマに展開されていく。
君と僕なら、世界を作る事だって世界を変える事だってできる。発想が可能性が満ち溢れている10代ならではの若さがあります。
それと同時に、自然の素晴らしさをもメッセージとして込められているような気がします。
「太陽は光り そして若葉は緑 所詮移り変われり季節でも」これから先、季節が変わっていっても、変わらずに君の事をずっと想っている。
という、美しい程に一途な想いが胸を締め付けます。
最後の最後のところで、”想う”が”誓う”という意思が強いものに変わっていくところに男の子の心の成長を感じます。
少年が男性に近づく瞬間。
ギターロックではあるけれど伴奏がメロディーラインを引き立てる控えめなサウンドがこのような優しく温かい歌詞を、よりドラマチックにさせていると思います。
こういう歌詞とサウンドは、きっと女の子なら誰でも好きになってしまうでしょう。