主人公が「君」に抱いている想いは本当に恋と呼べるものなのか。
あまりにも強すぎる感情にそんな疑問を抱いてしまいそうになります。
恋に溺れた人の心というのは、他人には到底理解できないものなのでしょうね。
信仰心に近い愛情
君だけはわたしを狂わせ、困らせ、惑わせる
わたしがわたしでなくなって
いいや、そもそも最初から居ないも同然で
ああ、君といて初めて、存在として、
この世界にいることを認められる
だから君がわたしを創ったの つまり
君がわたしの神様
出典: 眠れぬ夜のせいで/作詞:Miliyah 作曲:Miliyah
自分の感情を自分でコントロールできない。
それは主人公にとって初めての経験だったようです。
「君」だけが主人公を狂わせ、さらには主人公の人格さえも変えていきます。
主人公はもはや、「君」なしでは自分は存在できないと考えている様子。
自分がこうして生きていられるのは、「君」という存在がいるから。
それはつまり「君」が主人公の創造主であり、主人公にとっての神ということになります。
好きになった相手を神様とまで思えるなんて、なんだか恋愛の域を超えているようにも感じますね。
崇拝の対象になるくらい「君」を愛している。
主人公が「君」に対して抱いている感情は、恋よりも信仰に近いのかもしれません。
見返りはいらない?
四六時中君のことを
無我夢中で君のことだけを
曖昧なままになんかしないよ
今宵眠れぬ夜のせいで
君が誰で わたしが誰でも
どうだっていいよ 狂ってるよ もう
ただ君のことを想うよ
今宵眠れぬ夜のせいで
出典: 眠れぬ夜のせいで/作詞:Miliyah 作曲:Miliyah
そもそも主人公と「君」は恋人同士なのでしょうか?
ここまでの歌詞で主人公の想いは綴られていても、「君」の想いは何も触れられていません。
もし主人公の完全な片想いなのだとしたら、切なさを通り越して痛々しささえ感じてしまいます。
しかし主人公の想いが信仰に近いものだと考えると、そこには見返りなど必要ないのかもしれません。
この世界に「君」がいて、「君」を想うことを許されている。
主人公の心はそれだけで満たされていると考えることもできそうです。
無償の愛といえば聞こえはいいですが、やはり主人公の想いからは異常なものを感じずにはいられませんね。
幸せになれなくても構わない
幸せよりも手に入れたいものができる。
それもまた、恋という感情が持つ1つの側面なのかもしれません。
この曲の主人公にとって「君」を想うことは、幸福を手放してもいいと思えるほどの価値があったのでしょうね。
遠い存在の「君」
こんな長い夜 君はなにをしてるの?
遠く離れていても
次に会えるのが 100年先でも
こんな夜に たったひとりで
君のことを想うだけで
わたしの心に血が通って
あたたかい
たえられない
出典: 眠れぬ夜のせいで/作詞:Miliyah 作曲:Miliyah
やはり主人公と「君」は恋人同士ではないのかもしれません。
その証拠に主人公は「君」に想いを馳せるばかりで、心を通わせることは考えていない様子。
それはきっと「君」が主人公にとってあまりに遠い存在だからでしょう。
主人公は「君」のことを神様とまで思っています。
恋人になるなんて、初めから叶わないと分かっている夢でしかないのでしょう。
だから今夜も、主人公はただ「君」のことについて考えるだけ。
それだけで主人公の体は熱を帯び、堪えられないほどの感情に心を支配されます。
主人公の感情はすべて「君」によって生み出されているといっても過言ではないのでしょうね。
朝がきても眠れない
I cry I cry I cry for you
朝がきても眠れないだろう
I will die I will die ただfor you
わたし君を愛したせいで
出典: 眠れぬ夜のせいで/作詞:Miliyah 作曲:Miliyah
「君」という存在があり続ける限り、主人公が心安らかに眠れる日はこないでしょう。
眠れないまま夜が過ぎ、新しい朝がきても主人公の胸の内は何も変わらないまま。
主人公の心はずっと「君」と出会った時から時間が止まっているのかもしれません。
「君」への愛は、今後も主人公を狂わせていくでしょう。
それを止めることなど、きっと「君」にもできないのでしょうね。