世渡りばかり学んでしまった

こんな風に日々は続いてくのでしょう
処方された薬にすがりつく「I」
「誰も悪くないの」とか言い出すんでしょ!?
自分を責めるふりして許しを請え Ah

出典: I/作詞:Kazutoshi Sakurai 作曲:Kazutoshi Sakurai

長い歴史の中で、人間関係にも「定石」と呼べるものがあります。

パターンAという問題に遭遇したら、解決法Xを用いる…といった、いわゆる「処方箋」

相手を責めると、恨みや怒りをかってしまうことは自明です。

そうなれば、いっそのこと自らを悲劇の主人公に仕立て上げればいい

相手の同情心や哀れみの心を逆手にとり、こちらの利益に変える…。

言葉にすると下劣なことですが、これも社会のあらゆる場所で起きていることなのでしょう。

「特殊性」は注目を浴びる

イメージは
ドロップアウトした世界
さぁ どうでしょう!?
誰も見ない ワンマンショー

泣いて傷ついたふりして
気を引いてみようかなぁ Ah

出典: I/作詞:Kazutoshi Sakurai 作曲:Kazutoshi Sakurai

気になる人や恋人の注目を得たいとき。

SNSで人気になりたいときでも同じようなことが言えるかもしれません。

どこか自虐的になることで相手の気を引くことが容易にできることも。

思わずドキッとしてしまうリスナーもいらっしゃるのではないでしょうか?

何と皮肉な「一発芸」

そんな風に自分を甘やかすのでしょう
支持してくれるスポンサーに媚を売る「I」
挙句には「死にたい」とか言い出すんでしょう!?
思いどおりいかないときの一発芸 どう?

出典: I/作詞:Kazutoshi Sakurai 作曲:Kazutoshi Sakurai

先程も述べましたように、社会では他者との相互協力というものが必ず現れます。

自分の思い通りにすべていくなんてことは、ふつうありえません

相手と円滑に成り行きが進むように「ごますり」をする自分。

他の人々も同じことをするので、次第に自身の存在価値が薄くなっていきます

さて、相手の気を引くためのインパクトのある手段は何だろう?

思わずかまってしまうような、強烈な一言、それこそ「死」

もちろん「死」に対する願望などがあるわけでもなく、むしろこの言葉を武器として使っています。

こんな薄っぺらい武器を振りかざす自分、さらには振り回される他人達…。

これほどに滑稽な世界はありません。

もはや「芸」の域ともいえるでしょう。

桜井はこれを「一発芸」という巧みな表現で切り捨てました。

あまりにも斬新で、かつ爽快です!

しかし、どこか自分にも当てはまりそうな内容なので心から笑えないところも…。

偽り、路頭に迷う

散々 周りを振り回して
結局 何をしたいんだか自分にもさっぱり分からないんだ

出典: I/作詞:Kazutoshi Sakurai 作曲:Kazutoshi Sakurai

危機は切り抜けることができました。

しかしこれは本当にやりたいこと、なりたい姿ではありません。

いわゆる「妥協策」でしかないのです。

このようなことを繰り返しているうちに、次第に本質が見えなくなってきます

夢や目標って何だったんだろう?

そもそも自分って何なんだ?

だましだましの世渡り上手なままでいると、大切なものを見失ってしまう可能性があります。

トドメの一撃と、アフターケア

こんな風に日々は続いてくのでしょう
奪いも捨てもせず 命を燃やそうか
自分が一番可愛い? ほら当たってるでしょう!?
でもそれを責めたり 誰ができるの?

出典: I/作詞:Kazutoshi Sakurai 作曲:Kazutoshi Sakurai

この歌詞の3行目こそ、桜井が最も突きつけたかった現実でしょう。

ありきたりな言葉ですが、「結局は自分が一番可愛いんでしょ?」と。

皆の平穏と幸せを願いつつも、すべての根本には自身の安全と幸福が第一優先事項

最後の最後、歌の締めくくりでトドメを刺されたような気分になりますね。

しかし、その気持ちはきっと人間みな同じこと。

だからダメなんて言えないし、言われる義理なんてない

人間のもつ「エゴ」に対するある種の「愛」によって、桜井の攻撃は幕を閉じます。