Official髭男dism「ブラザーズ」を解説

ブラックミュージック?それとも歌モノ楽曲?

ヒゲダンことOfficial髭男dismといえばポップな歌声とピアノがお好みという方も多いのではないでしょうか。

切ない恋がエモーショナルに描かれた、美しいメロディーのラブソング

これが彼らの王道かもしれません。

ところが今回ご紹介する「ブラザーズ」は少々毛色が異なりなます。

とくに歌詞に耳を傾けると「走っている」状況だけは読み取れますが、具体的なストーリーは曖昧でしょう。

言葉の意味よりも響き、語感のほうが重視されているようです。

なぜ「ブラザーズ」にはこうした他の曲との違いがあるのでしょうか。

この疑問は、彼らのルーツであるブラックミュージックに思いを馳せると解決するでしょう。

ひとくちにブラックミュージックといってもジャズ、R&B、ファンク、ヒップホップなど様々あります。

そのなかでもR&Bやファンクはとくにリズムを重視する傾向にあるといえるでしょう。

リズムが揺らぐことによって生まれるノリをグルーヴといいます。

多くの場合、このグルーヴ感を出すために大きな役割を果たすのがベースドラムのリズム隊です。

ただ、言葉にも音の響きがあります。

たとえば韻を踏むというヒップホップのラップに多くみられる手法。

これを取り入れると、言葉によってもリズムやグルーヴが生まれます。

ただこの曲にはラップはありません。

つまりヒップホップなどブラックミュージックの手法を取り入れた歌モノ楽曲というわけです。

カートを乗り回すMV

こちらの「ブラザーズ」のMVで、サウンド(音)に着目してみましょう。

重低音のリズムが強調されていてヒップホップなどブラックミュージックを強く意識していることがわかります。

ボーカルも同じ言葉やリズムの繰り返しが多くなっています。

それでもラップというほどの歌い方(フロウ)ではありません。

そして映像として気になるのは、ヒゲダンのメンバー4人が嬉々としてカートを乗り回していることでしょう。

彼らはいったいどこへ行こうとしているのでしょうか。

このMV何かを目指して走っている状態は歌詞の意味も補足してくれます。

併せてご覧になると、この曲の理解が深まることでしょう。

インディーズ曲という背景

Official髭男dism【ブラザーズ】歌詞の意味を徹底解説!ブラザーズは何を目指して走っている?の画像

ちなみに「ブラザーズ」はヒゲダン初のデジタルシングルとして2017年7月に発売されました。

Tell Me Baby」との両A面。

それから2017年10月にリリースされた1枚目のデジタルEP「LADY」にも収録されています。

さらに1枚目のアルバムエスカパレード」にも収録され、2018年4月に発売されました。

様々なかたちで「ブラザーズ」を聴けるわけですが、以上のリリースはいずれもインディーズ

実はこのインディーズ時代という状況も、この曲の理解には欠かせない背景のひとつです。

ヒゲダンというバンドは果たして何を目指しているのでしょうか。

こうした曲の概要を踏まえて「ブラザーズ」の歌詞を徹底解説します。

ヒゲダン流の道を行く

タイトルの意味

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タイトルの「ブラザーズ」をそのまま訳すと「兄弟たち」です。

ただ、血縁関係のある兄弟だけでなく「仲間たち、友だち」といった意味も含まれます。

  • 「Hey, bro」単数形:ブロ
  • 「Hey, bros.」複数形:ブロス

このように省略形で使われることもありますが、フォーマルな場面にはそぐわないスラングになるでしょう。

ごく親しい仲間うち、とくに音楽好き、ヒップホップ好きの仲間同士でよく使われるイメージかもしれません。

ヒップホップを連想しやすい言葉を選びつつ、省略形を用いないところがどこかヒゲダンらしい感じもします。

こうしてタイトルからも曲の世界観を想像しつつ、歌詞(リリック)に入っていきます。

甘くない?

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あっちもこっちもシュガーレス
ぬいぐるみの出来レース

出典: ブラザーズ/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

冒頭の部分は、ヒップホップ用語でバース(イントロのラップ)の役割を果たしているでしょう。

このフレーズは6回繰り返されます。

それほど「ブラザーズ」という曲にとって重要なポイントだとわかります。

早くも「~レス」と「レース」というライム(韻を踏むこと)が登場。

ヒップホップサウンドに乗せて、ほんの少しだけラップっぽい歌をお届けするという宣言かもしれません。

そして、この曲のテーマとなるメッセージが込められていると考えるのが妥当なようです。

しかし言葉選びがおしゃれすぎて、いったい何の話なのか、少々意味がわかりにくいのではないでしょうか。

実はこうしたハイセンス&難解というスタイルこそがこの曲で伝えたいメッセージのひとつなのかもしれません。

どこもかしこも甘くはない。

偽物による、結果の決まった勝負か。

野暮を承知で、せっかくのメタファー(暗喩)表現を具体的な言葉に置き換えてみました。

ヒップホップのラップでは、否定的な内容を歌詞で表現することを「ディスる」といいます。

その手法を取り入れたかのように何かを否定しているとも受け取れる内容。

ただし、言葉自体はかわいいですね。

つまり不定的な内容かもしれないけれども、かわいい言葉で婉曲に表現しているのでしょう。

ストレートに不満を述べているわけではないので、何らかの意図があると考えられます。

そのためこれ以上は具体的に解釈せずに放置しましょう。

ご想像におまかせ!ということです。

音楽的な様式美

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