馬鹿な 生き方しか
どうせできないけれど
お前らしくていいさと
今夜も 酒が笑う

出典: 暖簾/作詞:永井龍雲 作曲:永井龍雲

愛惜を酒の肴に飲む主人公。

自責の念が垣間見え、なかば投げやりになっている様相です。

これまでの自分の人生を、「馬鹿」だったといっています。

後には戻れぬ、取り返しのつかないことをしてきたのでしょう。

今夜の酒は、喜怒哀楽を表すようです。

酒だけが心の拠りどころの主人公。

杯の酒にうつる自分の顔に自問自答を繰り返しています。

鏡のようにうつる顔は、今の惨めなお前には独りで飲むのがお似合いだといっているのでしょう。

感傷に浸る主人公は肩を震わせ、泣いているのかもしれません。

心の拠りどころのはずの酒が揺らぎ、嘲笑っているのです。

主人公は一体誰とそんなに逢いたいのでしょうか?

未練がましい男の心情

それほど惚れ抜いていたなら...なぜ?

死ぬほど本気で
惚れて 惚れて 惚れて 惚れ貫いた
あの女に逢いたい こんな夜には
気取った夢など いらない

出典: 暖簾/作詞:永井龍雲 作曲:永井龍雲

男の未練が、情感たっぷりと詰まった言葉が飛びこんできます。

何度も呪文を唱えるかのように嘆き、胸が張り裂ける思いなのです。

あなたのためなら、命をかけてもよいと誓ったはずなのに…。

なぜこうなってしまったのか、ただただ悔いだけが残る主人公です。

幾度も逢瀬をかさねた居酒屋へは、将来をともにするはずだった女性と過去に訪れていたのでしょう。

一緒に酒を酌み交わし、愛を語り合っていたのかもしれません。

酔いがまわり、その頃の記憶が呼び起こされます。

抑えきれず言葉にならない心の叫びが、今夜は止め処なく溢れてくるのです。

自分に対し情けないのでしょうか。

悔やんでも、悔やみきれない心情が入り交じっているのでしょう。

男性の悪いクセ

ここで印象に残るのが、「あの女」という言葉です。

酔っているのもあるでしょうが、少し乱暴にも聞こえてしまいます。

男性の悪いところで、1度深い関係になった女性はいつまでも自分を想っていると勘違いするのです。

主人公の驕りとも感じとれますが、それほど心酔しきっているともいえるでしょう。

今やり直せるのなら、どんなことでも我慢し如何なる障害も乗り越えられるのです。

男女の関係で「馬鹿な生き方」と連想させるのは、浮気や様々なすれ違いです。

特に男性がこれほど後悔しているということは、やはり浮気で間違いありません。

別れても好きな人...

女性を省みず、魔が差した主人公。

別れてから初めて気づかされる、事の重大さに苛まれるのです。

男はすぐに夢を語る生き物といえます。

主人公は上昇志向が強かったのかもしれません。

女性のためにも良かれと思い、仕事に没頭しプライベートを軽んじていたのでしょう。

別れた原因をつくった自分を戒めるのです。

あなたさえ側に居てくれれば、余計なものはなにも要らない。

しょっぱい酒?

酔って 男が涙
流せば見苦しいね
すべて胸にしまえと
今夜も 酒が叱る

出典: 暖簾/作詞:永井龍雲 作曲:永井龍雲

さらに酔いがまわり、主人公は泣いているようです。

男が泣くのは恥だと、頭では理解しています。

格好悪いと分かっていても、心が勝手にそうさせるのでしょう。

酒に酔い涙するのですから、未練たらしく往生際が悪いとしか思えない有り様です。

女性との想い出を酒と涙で流し、忘れようとしています。

忘れなくともいつでも想い出させてやるよ、心に留めておけと今夜の酒はいっているのです。

杯にうつる、歪んだ自分の顔が話しかけているように思えてなりません。

今夜の酒はしょっぱい味がしたことでしょう。

酒はやっぱり美味い方がいい

馬鹿な 生き方しか
どうせできないけれど
お前らしくていいさと
今夜も 酒が笑う

出典: 暖簾/作詞:永井龍雲 作曲:永井龍雲