新しい友と新しい街で
新しいただいまを今は言ってるよ
寂しさ、嬉しさと ほんの少しの
後ろめたさと 一緒に生きてるよ
帰りたいかと聞かれても
すぐ答えられない 僕がいるよ
帰りたいのは あの場所よりか
あの人とあの時に 帰りたいだけ
出典: 空窓/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
元の生活には戻れないけど、今は普通に暮らしています。故郷じゃないどこかの街で。自分だけが幸せになっていいのかと、失った人々を思いながら。
荒れ果てた故郷に戻りたいわけじゃなくて、あの平穏な日常に帰れたら…切実な想いが綴られます。
強さと弱さ
さよならをちゃんと 言える別れは
幸せなのかも なんて思ったよ
僕はどうやら 強くなった
強さが何かは よく知らないけど
あの時 どうやら 涙は流し切った
時が僕らを 大きくするけど
時は僕らを あの場所から遠ざける
出典: 空窓/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
あの日より辛いことは無いのです。別れは確かに辛いですが、さよならを言えない辛さははるかに勝ります。
震災の被害に比べたらどんなことでも耐えられる、それが強さなのか僕にはわかりません。
僕はどうやら 強くなった
弱さが何かは 知らないけど
心の蓋仕方を知っただけかも
でもそうでもしないと やってこれなかった
だけど今日だけはこの蓋を
開けてあなたに 会いに行く
出典: 空窓/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
もしかしたら強さだと思っているものは、忘れる力なのかもしれません。誰もがあの日を忘れようとして、今日を生きています。
忘れる力は強さであり弱さなのです。
そしてこの歌のラストで「僕」は忘れることをやめ、辛い過去と向き合う「強さ」を手にするのです。
「空窓」というタイトル
2つの読み方
野田洋次郎は「そらまど」と呼んでいるそうですが、「両方読めるように」つけたとのこと。
両方を音読みすれば「くうそう」となりますよね。
「そらまど」
MVに映されているのは2018年3月11日の空。あの日からちょうど7年後の空です。
霧が光を反射して幻想的な虹を作り出した朝の空は、時間の経過ともに晴れ渡っていきます。
空は人の気持ちを映す窓のような存在です。曇りの日はあるかもしれないけれど、いつかは必ず晴れる。
そして空の向こうには「あなた」がいます。
失ったあの日から心の底に蓋をして、忘れようとしてきたあなたが。
亡くした人と向き合う勇気が、空窓を開けさせるのでしょう。
「くうそう」
「くうそう」とは「空想」、現実ではあり得ないことに想いを巡らせるという意味です。
この曲にはたくさんの「もしも」が含まれています。
もしも兄や友達が生きていたら、ごめんやありがとうを伝えられるのに。
もしもあの頃に戻れたら、みんなと会えるのに。
もしもあなたが…
そういったことを誰もが考える日、それが3月11日という日なのです。
3月11日に曲を発表してきた洋次郎
野田洋次郎は震災の翌年である2012年から2016年まで、毎年3月11日に曲を発表してきました。
僕らの洋次郎は今年も曲を書いていました。祈りの気持ちを込めて。
2012年3月11日公開「白日」
2013年3月11日公開「ブリキ」
2014年3月11日公開「カイコ」
2015年3月11日公開「あいとわ」
2016年3月11日公開「春灯」
2018年4月8日公開「空窓」
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/RADWIMPS
発表曲のリストです。「空窓」に至る流れを、これまでの曲から振り返りましょう。