「HOWL」と自由への希求
爽やかなロック・ミュージックの力
2010年12月1日発表、Mr.Childrenの通算16作目のオリジナル・アルバム「SENSE」収録曲「HOWL」。
かつての名曲「シーソーゲーム」を思い起こさせるようなロック・サウンドが眩しい1曲です。
桜井和寿のボーカルが変幻自在に感情を表現して「HOWL」しまくるのが痛快でしょう。
左チャンネルでギターが暴れて、右チャンネルではピアノやオルガンが跳ねます。
躍動感がたっぷりなサウンドで日々の倦怠感との格闘を歌い上げるのです。
カラオケなどで歌ったら気持ちよさそう。
「HOWL」の歌詞の主人公の叫びに耳を傾けて、自由で快活な社会を展望してみましょう。
それでは実際の歌詞を見ていきます。
自堕落な主人公
抑うつ状態に陥る日々
ブラインドを開けるのも面倒な位にここのところ無気力だ
おぼろげに目を開くと薄暗い未来が見えるよ
真昼間、冷蔵庫を開きアルコールを胃袋へ
痺れがきそうな孤独がやがて麻痺するまで
出典: HOWL/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
桜井和寿の巻き舌での歌唱が印象的です。
覚醒めたとしてもブラインドを上げて太陽光線を部屋に満たすことさえ億劫な主人公。
このような有り様では将来については薄暗い予感しか抱けないと歌うのです。
主人公のこころが風邪を引いているのかもしれません。
病院に通院するほどのことでもない漠然とした無気力感を背負って生きています。
抑うつ状態に悩まされているのです。
こうしたとき欧米では気軽にカウンセリングを受けるもの。
しかし日本社会はまだメンタル・ケアの概念があまり浸透していません。
またカウセリングだけでは抑うつ状態そのものを治すこともできないのです。
医師による投薬治療となると患者の心理的なハードルは高くなります。
日本社会で一度抑うつ状態に陥ると、中々改善の見込みが失くなるのが怖いです。
アルコール依存は危険
主人公はそんな抑うつ状態に陥りながら自分で気分を上げようとします。
昼間からのアルコール飲酒で乗り越えようとするのです。
孤独感が鈍麻するまでアルコールを摂取し続けるといいます。
これはアルコール依存症へと一直線で突き進むような危険な行為です。
かっこいいMr.Childrenの歌詞だからといって決して真似しないでください。
抑うつ状態でのアルコール摂取は禁忌です。
肝心のメンタル面がじわりと崩壊してゆきます。
アルコールは暗い気分のときではなく、楽しい気分のときに適量を楽しみたいものです。
とはいえロックの歌詞とアルコールは切っても切れない関係ともいえます。
この主人公は自堕落でだめな人間なのですが見捨てる訳にはいきません。
この先、抱え込んだ抑うつ状態を主人公はどう解決してゆくのでしょうか。
きちんと最後まで歌詞を見ていきましょう。
週末の解放感
働かないと生きていけない
週末は街に喧噪が
少しだけ解き放たれて
みんな束の間の自由をエンジョイしてるみたい
そうしたい
出典: HOWL/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
週末の街の賑わいの中で自分も仲間に入って解放感を味わいたいと主人公は願います。
平日は職場でのルーティン・ワークをこなしている私たち。
判で押したような毎日の繰り返し。
束縛から解放される週末くらいは楽しく過ごしていきたいと誰もが願っているのです。
主人公は昼間からアルコールに溺れるようなひと。
それも胸に巣食う抑うつ気分からの解放を願っています。
アルコールという対処療法がちょっと危険ですが、こうした願いまでは否定されるものではないです。
投資で儲けているような人でもない限り、誰もが皆、働かないと生活が維持できません。
何かしらの職業につき、体力や頭脳で社会貢献することで報酬を得ます。
しかしそうした暮らしが人間にとって当たり前になったのはわずか数千年のこと。
人間の長い歴史の中では「つい最近」始まった習慣なのです。
この「つい最近」始まった習慣は本当に人間にとって理想的なものなのでしょうか。
私たちは働けば働くほどに自分自身から疎外されてはいないかと感じるときがあります。
本当に自由であるってどういうことだろう。
この曲「HOWL」のテーマは自由であることに関しての考察です。